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ち び
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あぁ、完全に僕のせいだ……。
はやちゃんは、せっかく僕を気遣ってここまで迎えに来てくれただけなのに。
ふたりの間に流れる、一瞬にして凍りついたような空気感に、僕はどうしていいか分からなくなってしまう。
「じゅう……だれ、?」
しゅんの声のトーンが、聞いたこともないくらいに低く沈んでいた。
「あ、しゅん……。昨日お風呂でも話してた、はやちゃん……」
『あー、はじめまして! 佐野勇斗です! 舜太くんですよね? 柔太朗がお世話になりました!』
さすがは営業部のエースというべきか、はやちゃんは持ち前の高いコミュニケーション能力で、真っ直ぐなしゅんの視線を受け止めながら、僕の手元からさりげなく荷物を持ち始めた。
けれど、勇斗の明るい挨拶に対して、舜太からの返答は一切なかった。
不思議に思って僕が彼の方に視線を向けると、彼の表情は見たこともないほどに暗く、酷く曇ってしまっている。
「、、、、、」
『あれー……? 、、ん? 俺、やった……?』
完全に無反応を貫く舜太の異様な威圧感を前にして、はやちゃんは困惑したように僕に助けを求める視線を送ってきた。
あー、どうしよう……。
「はやちゃん、ごめん! ちょっと一旦こっち来て!!」
僕は咄嗟に勇斗の腕を掴んで、しゅんの視線から引き離すようにその場を去った。
『おいっ! 柔太朗! 引っ張んなって!』
「いいから、早く!!」
少し離れた柱の陰まで移動し、僕は大慌てで勇斗の方に向き合った。
「はやちゃん、まずは……わざわざお迎えに来てくれて本当にありがとう」
『おう。……なぁ、あれか? 俺、なんかまずいことしたか……?』
荷物を持たないほうの彼の手が、不安そうにそっと口元へとやられる。
勇斗は僕の様子を伺うように、眉をひそめていた。
「あー、いや、はやちゃんがまずいわけじゃないんだけど……。俺さ、お迎えって今日の夜の事だと思ってて……」
『んぇ? まじで!? そういうこと!? やっば! 俺、完全に勘違いしてたわ!!』
「うん……。だから舜太は、はやちゃんがここに来ること全然知らなくて、びっくりしちゃったみたい。全部俺の連絡不足のせい。ごめん」
『あー、いや、俺の方こそごめん。なんか当たり前みたいに空港に来ちまったわ!』
「ううん、ほんとごめん。わざわざ来てくれたのに……」
『えっと、、じゃあとりあえず、俺は帰った方が……いいよな?』
「本当に申し訳ないんだけど……。今日は、そうしてもらえると助かる、かも」
『いや全然! 気にすんな! じゃあ、予定通り19時頃にお前ん家行くけど、大丈夫そう?』
「うん、大丈夫。本当にごめんね」
『いや……そんなことより、柔太朗、大丈夫か? ……わりとまじで心配してたんだけど』
勇斗は僕の肩にポンと大きな手を置いて、俯く僕の顔を覗き込んできた。
その瞳には、あの遠藤の地獄から僕を救い出してくれた時と同じ、真っ直ぐで温かい心配の念が宿っている。
「うん……。色々とあったけど、一旦大丈夫、かな。心配かけてごめんね」
『……そっか。それなら良かった』
安心したように息を吐くと、彼は僕の頭を、いつものようにわしゃわしゃと力任せに撫で回した。
「はやちゃん、ありがとね」
『おう! でも、無理はすんなよ?』
「うん、ありがと……」
『あ、柔太朗の荷物、俺がこのまま車まで持っていこうか?』
「いや大丈夫! 自分で持って帰るよ!」
『おけ! じゃあ舜太くんにちゃんと挨拶してから帰るわ!』
「うん! ほんとごめんね」
『気にすんなって! ほら、舜太くん待ってるぞ』
「、、うん!」
僕たちは向き直り、荷物を持ち直して、ポツンと一人で待っているしゅんの元へと戻っていった。
『舜太くん、ごめんね! 俺が話を完全に勘違いしちゃってて!』
「あ、いや、全然……。あの、曽野舜太です。ご挨拶が遅れてしまい、すみませんでした」
しゅんはハッと現実に戻ったように頭を下げた。
『舜太くんの話は、よく柔太朗から聞いてるよー! 高校の同級生で、今は同じ会社の別部署なんだって?』
「あ、はい……」
『まぁ、今度ぜひ三人でご飯でも行こうよ! じゃあ今日の帰り、柔太朗のこと頼むよー』
そう言って、はやちゃんは自分の手に持っていた僕の荷物を、しゅんの方へと差し出した。
いや、俺が自分で持つのに……。
しゅんはその荷物を受け取りながら、引き攣ったような、何とも言えない強張った笑顔を浮かべる。
「あぁ……はい。お任せください」
『ごめんな、柔太朗! じゃあ俺は行くわ!』
「うん! はやちゃん、本当にありがとね! また夜にね!」
勇斗はしゅんに向かって軽く大人の会釈をし、僕には親しげに小さく手を振って、スマートに到着ロビーの雑踏へと去っていった。
to be continued……