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「麗らかな春の日差し、鶯の鳴き声。こんな素敵な日に私たちは……」
あれ、もしかしてこれも長い系かな。
入学式といえば校長、PTA、在校生代表、その他諸々のスピーチが長すぎる最悪なイベントで有名だが、そんな苦痛に耐えに耐え、ようやくプログラムの最後である新入生代表の言葉まで辿り着いたというのに、睡魔とのバトルはもう1ラウンドかまさないといけないのか。
入試で上位の成績に入った人物の中から選ばれる代表者は、この進学校に入れてよっぽど嬉しいのか、かなり長い尺のスピーチで攻めようとしている。
こんなことになるなら俺が新入生代表スピーチしたのにな。
打診のメールが来た時は入試後の脱力で、気持ちの余裕がむしろなくなっていたのでお断りしてしまったが、こんなにも眠気と戦うことになるなら本当に了承しておけば良かった。
「麗らかな春の日に僕らは入学します。みなさんオナシャス。」で終わらせたのに。
重りでも付けているのかと錯覚するほどに、開けるのが難しいこの瞼を持ち上げてくれる妖精さんとかいないかな。
受験期の不安から入試へ臨む時の心情まで事細かに話してくれる代表者くんの声はかなり心地よく、スピーチの冒頭で言っていたように麗らかな春の日差しが差し込む体育館は、まるで布団の中のように暖かくて余計に頭を麻痺させる。
あと何秒で終わるかな、30秒?15秒?いや3秒で終わって________
「以上新入生代表、葦 時雨(あし しぐれ)でした。」
願いが届いたのかちょうど終わった。
瞬間眠気も晴れる。そうか、終わったのか。素晴らしいスピーチだったよ葦くん。聞いてないけど。
「長ったらしい話をもう聞かなくていい」という事実が嬉しくて、先ほどまで罵倒していた彼に盛大な拍手を送ってしまう。
さっきまでコックリコックリしていたやつが狂ったように笑顔で拍手するもんだから、左隣の人はすごくびっくりしていた。
あれ?そういえば俺の右隣にも誰かいたはずだ。
雨村という名字は、名前順の列で一番先頭になることも多い。そのため列の2番目になるとか、そういうのは結構嬉しかったりする。
入場の時は誰かいたはずなのだが……そうそうあんな背格好の。
俺が狂ったように拍手を送っていた新入生代表の葦くんは、俺の隣に座った。
「ありがと。めっちゃ拍手してくれたね。」
き、気まず〜〜〜!!!
もちろんその後教室に移動して担任の話だったり、自己紹介だったりしてる間、葦くんの背中を見るのもちょっと気まずかった。
というか恥ずかしい。寝起きの変なテンションのまま、シンバルを持った猿のおもちゃみたいに手を叩く俺を想像すると本当に恥ずかしくてずっと俯き気味になってしまう。
明日には彼の脳内からバカな俺は忘れていてほしい。チチンプイプイ〜。
「雨村くんっていうんだ?よろしくね。」
いきなり振り向いてきた彼の表情はまさに太陽そのもののようで、やっぱり忘れてほしくないかもなとちょっと思った。
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気分転換にモロ学園モノ書こうと思います。
これからは気分で更新していくかも。