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『 雪 』@夏休み期間毎日投稿
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成瀬りん
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たーくん
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エイバス近くの森の中。
俺とテオは、いつもの練習エリアを陣取っていた。
目標は、『小鬼の洞穴』再戦までに【光魔術】の威力を上げること。
そのヒントとするため、魔術について改めてテオに教えてもらうことにした。
俺だってかつては高難度の魔術を使いこなしまくっていた。
だがそれは架空世界の中での話。
現実世界では勝手が違う。
ある程度は魔術に慣れた今だからこそ、その違いを詳しく知りたくなったのだ。
「まずは基本から始めるよー」
笑顔で説明を始めるテオ。
俺はボードに挟んだ紙にメモを取りつつ、真剣に耳を傾ける。
「そもそも『魔術』ってのは、『精霊』の力を借りて魔力を自由に扱う技のこと。だから上手くイメージさえ伝えられれば、やり方次第で色んな術式を使えるんだ」
「なら、魔術以外のスキルは?」
「直接そのまま魔力を扱う技だね。精霊のサポートがないから、1つ1つのスキルの効果は限られるけど、そのぶん安定した効果を発揮しやすいよ」
そういや、ゲームでもそういう設定だった。
あまり意識したことは無かったけど。
スキルは魔術でもそれ以外でも、ボタン1つで発動できたから。
だが現実だと、魔術はイメージを固めないと発動できない。
他のスキルは念じるだけで発動できる。
この原理の違いは、そのうち時間を作って分析したほうがいいかもしれない。
「……で、次は系統の話。魔術の術式は『生活魔術』『回復魔術』『戦闘魔術』の3つに分けられるんだ。でもこの分類ってさ、ちょっと曖昧なんだよね~」
これもゲームの設定にあったやつだな。
例えば火球は、火の魔力を球形に具現化する術式だ。
明かりとして使えば『生活魔術』。
敵にぶつけて攻撃に使えば『戦闘魔術』。
同じ術式でも、使い方で分類が変わるのである。
「回復魔術はさっき話したから……お次は『生活魔術』について説明するぞっ」
生活魔術とは日常生活やアイテム生産で使う魔術のことだ。
例えば、以下のような傾向がある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【火魔術】:料理や照明など。
【水魔術】:生活用水の確保など。
【風魔術】:空調設備など。
【土魔術】:建設など。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
長年平和だったこの世界では最も研究され、そして普及している魔術。
だから魔導具も、生活魔術関連についてはかなり発達している。
テオの『ニルルクの究極天幕』は、その技術の集大成の1つだろう。
俺が見たところ、魔導具はゲーム同様、幅広く庶民まで普及していた。
地球でいう“生活家電――照明・洗濯機・冷蔵庫等――”的な物も充実している。
その動力源は魔力なので、エネルギー問題なんて関係ない。
直感的に使える物も多いし、ある意味で地球よりも便利なのかもしれない。
だが、電話のように『通信機能』を持つ魔導具は全く知られていないようだ。
「そうか……あの属性が広まってないからだな……」
俺はボソッとつぶやいた。
ブレリバでは現状、7つの属性魔術スキルが確認されている。
まずは【光魔術】【闇魔術】。
これはそれぞれ勇者、魔王のみが持っている魔術スキルだ。
そして【火魔術】【水魔術】【風魔術】【土魔術】の4つは使い手も多い。
この世界の住民たちの生活にも浸透している。
だけど残りの1つは――
――マニア向けの隠し属性みたいなもんだよな。
思い出した俺は、ニヤリと笑う。
ある時1人のプレイヤーが偶然『7つ目の属性』を発見。
それはまさに革命だった。
新たな属性は、他の6属性とは全く性質が違っていたのだ。
プレイヤーたちは新属性の魔石を使った魔導具を競うように研究。
夢のような魔導具を数々作り上げた。
電話機能を持つ通信系の魔導具が発明されたときは、同時にそれを使って発生するイベントも多数発見されて、話題になったんだよな。
中でも大きいのは『自由転移扉』の発明だろう。
あの“どこ○もドア”を元にしていて、1度行った場所なら一瞬で行ける。
もしも本当に、あれを現実で手に入れることができたなら……。
「……タクト?」
急に聞こえたテオの声で、俺は現実に引き戻された。
「ど~した~? マヌケな顔になってたぞ?」
「すまん、ちょっと考え事してた! せ、生活魔術って便利だよな!」
慌ててそう答えると、テオは「そーだな」と笑って返し、そして話を続ける。
「んじゃ、最後は『戦闘魔術』について話すぜっ」
戦闘魔術は、戦闘時に使う魔術のことだ。
それぞれの属性魔力を具現化し、攻撃や防御などに使用する。
攻撃に使う場合は、具現化した物質を、直接敵にぶつけるのが主となる。
スキルLVが高いほど扱える魔力量も増え、攻撃威力も上がるのだ。
どんな形に具現化するかでも威力が変化する。
例えば同じスキルLVの場合、球形にして具現化する『球系』よりも、鋭い矢の形に圧縮して具現化する『矢系』のほうが威力は遥かに高い。
他には【魔術付与】スキルで、武器や拳に魔術を纏わせる方法もある。
防御に使う場合は、盾や鎧のように具現化するのが主である。
これまたスキルLVが高いほど、防御力も上がる。
盾のように使うパターンの基本は、『壁系』だろう。
火壁、水壁など、地面に直角な真四角の壁を出現させる。
半球形の壁を発生させる『障壁系』などの派生形も多数ある。
「……戦闘魔術で最も重要なのは、属性同士の相性だっ!」
特に強調するように言ったテオは、属性の相関図を地面に描きながら説明する。
「火は、風に強く、水に弱い。火・土と相殺」
「水は、火に強く、土に弱い。水・風と相殺」
「風は、土に強く、火に弱い。風・水と相殺」
「土は、水に強く、風に弱い。土・火と相殺」
「……ここまではOK?」
「ああ」
属性の相性はゲームと全く同じ理論。
俺にとって“おなじみ”のやつだ。
「じゃあここで問題! 小鬼の洞穴のボス・ゴブリンリーダーは『土の魔物』、つまり肉体が土属性の魔力でできています。どの属性で攻撃するのが、最もダメージを与えられるでしょーかっ?」
「風属性だな」
「あったりーっ! これでひととおり説明したと思うけど、何か質問あるか?」
一瞬考えてから答える。
「……今のところ大丈夫。詳しくありがとな。色々参考になったよ」
「またいつでも説明するぜっ」
「助かるよ。じゃ、本題いくか!」
ここまではあくまで下準備。
ボス攻略のための具体的な戦力アップは、ここからが本番だ。
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