それでもぐりっと地面に爪を立てると、じゃりっと音を立てて鷹夜様の膝が私の視界に入った。
顔を上げる前に、膝を折った鷹夜様にぎゅっと強く抱きしめられてしまった。
「土蜘蛛に狙われているのを、そんなにも気にしていたのか? 俺が守ると誓っただろう!」
私の背中に回った鷹夜様の手にぐっと力が篭るのがわかる。
「──! そうじゃ、そうじゃないんです……!」
「俺は環を愛している。絶対に守るから、俺を信じて欲しい」
強く抱きしめられて、魂まで抱きしめられていると思った。
そして微かに鷹夜様が震えているのに気がついてしまった。私は好きな人を傷つけてしまったと思った。心がバラバラに、なりそうなほどに痛んだ。
こんな張り裂けるような胸の痛みは知らない。
このまま黙っていては、心が砕け散りそうだった。
私は血と泥に塗れた指先で鷹夜様の背中に手を回した。
鷹夜様の肩越しに見る夕日はいつの間にか、燃えるような赤に染まっていた。まるで消えゆく前の蝋燭の火のよう。もうすぐ真っ暗な夜が訪れる。
赤い太陽の日差しに目を瞑り、。涙ながらに、私の真実を告げる。
「今まで、私はずっと誰にも言えない秘密を抱えて生きてきました。どうか、それを聞いてくれますか」
鷹夜様は私の首筋に、顔を埋めるように顔を縦に振った。
「私は自分の前世が何者か知ってしまったんです。それが十年前。炎を使ったあの日……」
ごくっと喉を鳴らして、深呼吸してからゆっくりと告げた。
「私の前世は──白面金毛九尾の狐」
「!」
びくりと鷹夜様の体が震えた。
鷹夜様は私の顔を真剣な表情で見つめた。
私は今度こそ鷹夜様の瞳を逸らさずに、太陽よりも強い眼差しを受け止める。
「九尾の狐だから、炎を使えるんです」
「環の前世が九尾の狐……妖の女王……」
信じられないといった鷹夜様の表情。それもそうだろう。いきなりこんな話をされて、信じられるわけがない。与太話だと思われて当然だ。
「信じてくれなくてもいい。でも本当なのです。私が九尾の狐だから土蜘蛛に狙われているんです。炎が使えるのです。九尾の狐だからっ、これ以上、私は──愛する鷹夜様のそばにはいられないっ!!」
涙を振り撒きながら、最初で最後の告白をする。
「正体を鷹夜様に知られて、嫌われるのが怖かった。出ていけと言われるかもしれない。今まで、ずっと騙していたのかと、この嘘つき女って、言われるのが怖かった。もう雪華家みたいに、蔵に戻されるのが、、皆に嫌われるの嫌だった。だから、ごめんなさい。ずっと言えなかった。でも、今から、ちゃんと出て行きます。だから、許してください……っ」
思っていることを全て吐き出した。
あとは嗚咽しか出てこない。
はぁはぁと息を切らして。
いつの間にか震えていた私の手を、鷹夜様の背から離すべきだ。もうこの人に触れる資格なんてない。そう思ってゆっくりと、鷹夜様から体を離そうとすると。
鷹夜様に──それを許さないと言わんばかりの、深い口付けをされた。






