第一章:落ちる音は、誰にも聞こえない
「三谷(みたに)ってさ、なんであんな奴とつるんでんの?」
教室の隅。俺の名前が囁かれてるのを、聞こえないふりをしていた。
“あんな奴”――それは、校内で有名な不良、**宇野 海翔(うの かいと)**のことだ。
遅刻常習犯、喧嘩上等、教師にすらタメ口。
でも俺だけには、少しだけ牙を見せない。
俺、**三谷 悠真(みたに ゆうま)**は学年主席で、先生ウケも良くて、真面目の塊みたいな人間。
そんな俺が、宇野に絡まれてる――そう見られてる。
でも、違う。
俺が、宇野を“囲ってる”んだ。
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