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日が暮れ、大きな部屋を借りたピアーニャ達は、関係者を集め全員で食事兼会議……っぽい世間話をしていた。


「あはははははは!! なにそれピアーニャとお姉様とお兄様が平謝りって!」

「ええいわらうな!」

「戻って早々に部屋を変えられたし。壁なんか壊すからだし」

「うぅ……すみません……」

「アリエッタ嬢の水着はさぞ眩しかろう。明日は僕も大人しく浜辺で過ごそうではないか」

「……とりあえずディランには見張りをつけておきますからね」


王族達とピアーニャが和気あいあいと話している。人数が多いからと、テーブルを複数使い、一旦話しやすいグループに分かれて食事をしている。


「はいアリエッタ、切ったのよ」

「ありがとなのっ」

「ジュースもあるからねー」

「2人とも、アリエッタの機嫌を取ろうと必死だし~」

『だってぇ……』

「王妃様達と同じ部屋で食事だなんて、緊張してお腹が……」

「しっかりしてくださいよ~。お昼も一緒だったじゃないですか」


一応気を使って、王族だけでまとまって何をしていたかの話をしている。ピアーニャはアリエッタと同じテーブルにいるが、話が聞こえて叫ばざるを得ないのだった。

ミューゼとパフィは必死になってアリエッタの世話をし、同じく一緒のテーブルについているフラウリージェのノエラとルイルイが慣れない面子での食事に戸惑っている。


「あの人達、仲良いですねぇ」

「ほんとに……あの子は守ってあげたくなりますね」

「私とパルミラでアリエッタちゃん達を護衛するので、ディラン様の見張りを頼みましたよ。フレア様からの命令です」

「まぁどうせ明日から一緒に行動だろうからな。問題ねぇよ」

「お陰で私は、安心してネフテリア様の護衛任務につく事ができますね」


王族に仕える者達もまた、2つのテーブルを囲って打ち合わせを含めた話をしている。フレアが連れてきた護衛も含め、10人まで増えていた。

一応王族を護る為に一緒にいるが、個室だからという事と、そもそも放っておいても自己防衛出来る王族なので、そこまで気を張る様な仕事ではない。むしろ逃げたり馬鹿な事をしないかという、見張りの意味の方が強かったりする。

テーブルの上の料理が半分以上無くなり、ある程度会話が進んだ後は、各自自由に動き始め、喋りたいと思った人の元へと向かったりしていた。主に動き回るのは、王城の堅苦しい雰囲気から解放された王族ばかりだったが。


「ロンデルよ。ピアーニャを篭絡するにはどうしたらいいと思う?」

「わちのきこえるトコロで、なにをはなしてるのだ!?」

「ふむ……やはり困っている所を助けるというのは……」

「ロンデルおまえもか!」


雰囲気はもう、まるっきり庶民の宴会である。


「明日の前祝という事で、かんぱーい」

「かんぱーい……あの、本当によろしいのでしょうか……」

「もう、今更何を言っているのかしら。娘の後ろ盾を得ているのだから、もっと自信を持っていいんですよ?」

「はいっ!!」

「店長、もう諦めて受け入れましょうよ」


フレアがノエラをいじり始めた。本来別の宿で宿泊している筈のノエラとルイルイだったが、明日の打ち合わせでネフテリアを同行させるという話にまで発展している為、急遽一緒の宿に部屋を取られてしまったのだ。確かにその作戦も最終手段として考えてはいたが、まさか提案もせずに当たり前のように実現してしまうとは思わなかった。王族に決められてしまっては断る事など出来ず、他の店員には自由にしていいと言い残し、大人しく宿を移動して今に至る。

ノエラはいまだに自らの権力にビビっているが、アリエッタとミューゼを通じて王女ネフテリアに目をつけられたのが運の尽きである。


「……えっと、どうしたのかな?」

(よく見たら赤くて透けてる……しすと同じでファンタジーな感じの人だなぁ)

「アリエッタったら、パルミラさんの事が珍しいみたいですね」


アリエッタはパルミラの事が気になって仕方がない様子。オスルェンシスやルイルイの時も不思議そうに見ていたので、自分と違う外見の人を珍しく思っているという事はみんな分かっている。

恥ずかしがっている様子もないので、ミューゼはその背を軽くポンと叩いた。


「ほら、アリエッタ」

「あ、お、おはよっ!」

「おはよ?」


挨拶は違うが、アリエッタが今覚えているのはこれしかないと説明し、それがきっかけで会話が弾んでいった。ミューゼとパルミラはお互いの年齢が近い事もあって、すぐに打ち解けたようだ。

しかしアリエッタには気になる事があった。


「みゅーぜ……いし?」

「ああ、これはパルミラのゴハンよ。クリエルテス人は石を食べるんだって」

「ぱるみら、ごはん?」

「アリエッタちゃんも食べる? この岩ステーキは岩塩が混ざってて美味しいよ」

「いや無理だから……」

(おわぁ……石食べちゃった……異世界だもんなぁ、こういう人もいるよなぁ)


口をあんぐり開けているアリエッタを見て、ミューゼとパルミラは笑いあった。

パフィ、クリム、ツーファンは、同じラスィーテ出身であるということで、すっかり意気投合している。オスルェンシスや数少ない男性陣に何が食べたいかを聞いたり、料理のアレンジを話し合ったりしている。男性陣も、若く胸の豊かな女性達の料理を食べれるかもと、デレデレしながら話に混ざっていた。

その後、すっかり満足したアリエッタは、丁度抱っこされていたパルミラの膝の上で、うつらうつらと船をこぎ始めた。


「おや、アリエッタちゃんお疲れですか?」

「今日は遊んで寝ての連続だったからね。でもお風呂どうしよう……」

「ふふふ、可愛いですねー。折角なのでみんなで動かないアリエッタちゃんを洗いませんか?」

『それだっ!』

「うにゅ……?」


この後、広い風呂場に運ばれたアリエッタは、羞恥と恐怖で目覚めたにも関わらず、ギラギラした目の女性陣全員に囲まれ、ミューゼの生膝の上で四肢を抑えられながら全身をくまなく優しい手つきで洗われるという恐怖を体験し、ぐったりしたまま新しい部屋のベッドまで運ばれる事となった。

ちなみにアリエッタだけでなく、ピアーニャとパフィもぐったりしている。


「テリアの小さい頃も凄くよかったけど、アリエッタちゃんはそれを遥かに上回るわねぇ」

「もはや嫉妬すら感じない……」(これが女神の肌、勝てるわけ無いわ)

「日焼け跡が凶悪な魅力になってるし」

「あ、それわかるー」

「……明日もみんなで洗うのよ?」

『もちろん』

「おまえらな……」


アリエッタへの集団手洗いおさわりの途中から、テリアがピアーニャに目を付けたのだ。それで手の空いていた者達がピアーニャに殺到。哀れにもアリエッタの隣で複数の大人に寄ってたかって洗われてしまったのだ。

その後、これまでアリエッタをぷにぷに洗っていた事で理性を保っていたフレアが、「これが若き日のサンディちゃん……」と呟きながらパフィに襲い掛かったダイブしたところで、犠牲者が3人になったのだった。

なお、同じく風呂上りのロンデル達男性陣が女性陣を見た時、丹念に洗われていた筈の3人よりも洗った側の肌のツヤがとても潤っていると感じたのだが、風呂場で何があったのかを知らない為、感心はしたものの不思議に思う事は無かった。

こうして騒々しかったヨークスフィルンの2日目の夜は更けていった。




とある別の建物。

筋肉隆々の女装男達が集まり、宴会を開いていた。


「今日はなにも出来ませんでしたね、ケイン」

「ああ、まぁこんなトラブルがあったんだ。仕方ねぇ」


そう言って、ケインは女性用ビキニにマントという姿のまま、手に持った料理に食らいついた。


「非常に迷惑な魚でした。お陰で明日への活力を得ましたが」

「これでまた明日も戦えるってもんよ」


この変態達にはとある役目がある。


「あのお嬢様達にはシーカーがついているとはいえ、美女ぞろいなのはトラブルが起きやすいからな。実際こいつにも襲われたし」

「想定とは違う事態でしたが、守れたので良しとしましょう」

「その後の水のかけ合いは少し焦ったがな」


解放的な海水浴では、少なからず何かが起こりやすい。その為には全体を見張る存在は必要不可欠なのである。つまり……


「っしゃあ! 力つけて明日も平和な海を守るぞテメェら!」

『おうっ!!』


彼らは海岸の警備隊なのだ。しかも悲しい事に(?)他リージョンの兵士やシーカーと比べても、個々がかなりの実力者集団だったりする。しかしその恰好とテンションのせいで、人を雇う側の権力者は近づく気にはなれず、スカウトされる事なく放置されてしまっているのだ。

強く逞しく、ある意味自由が過ぎる生き様で、見た目にも恐ろしいヨークスフィルンの警備隊は、海のヒーローの一面も持っていたのだった。

ちなみに入隊希望者は常に受付中である。

からふるシーカーズ

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