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「じゃあ、オレそろそろ帰るわ」
へ?
すると、またこの甘い雰囲気を自らぶっ壊すこの人。
私の身体からあっさりと離れ立ち上がる。
「え? あ・・うん・・」
さすがにそこそこ私も気持ち盛り上がってきた感じだったのに、意外な言葉に拍子抜け。
「このままここにいると、気持ちもそれ以上ももっと欲しくなりそうだから」
そして立ち上がって座ったまま拍子抜けしてる私を見下ろしながら、ちょっと意地悪そうに笑って今度はそんな言葉を言う。
あっさりと引き離されて寂しく感じたのに、だけどすぐに逆にこの人はこうやって胸を高鳴らせる。
だけどその意地悪そうに笑う顔もいつも以上にカッコよく見えて。
・・・私ってば単純。
少し気持ちや見方を変えるだけでこんなに自分の感情も変わってしまうんだ。
「じゃあ、今日はごちそうさま。また明日10時に会議室で」
そして今度は爽やかな笑顔に変え、そのまま玄関へ行き部屋を後にした。
彼がいなくなって、改めて今の現状を振り返る。
こんな展開になるとは。
まさかキスしちゃうとはな・・・。
いや~あそこまで流されるつもりなかったんだけどな。
でもあの魅力を目の当たりにしてしまうと、結局流されて受け入れてしまう自分がいる。
今もまだ自分に自信もないし恋愛をどんな風にしていけば正解なのかがわからなくなって、ずっと進めないでいた。
だけど、別に好きって言われてるワケでもないし、私は私のペースで少し恋愛を前向きに始めてみてもいいのかもしれない。
っていうか、これ結局まだ付き合ってるワケじゃないよね?
ドキドキさせ合う関係から始まって、次は本気にさせ合う関係。
それって関係性発展したってこと?
本気にさせ合うお試しの関係?
お互い本気になれなかったら、この関係は成り立たなくなるワケだし。
逆に・・・そこで気持ちも関係も終わっちゃうかもしれないんだ・・。
結局は、まだ微妙な関係・・ってことなのかな。
そして・・・
彼の中には別に想っている誰か他の人が今はまだ存在している。
それをわかってて始めるこの関係。
彼を本気にさせることが出来るのかもわからないし、彼がホントにその人を忘れてくれるのかもわからない。
だけど、彼も私も前向きな気持ちになろうとしている。
彼はホントに私を好きになろうとしてくれるのだろうか。
そして私もそんな彼をホントに好きになれるのだろうか。
結局微妙で曖昧で、いつ壊れてもおかしくない関係には違いないけど。
でもそんな関係でも、ただ今は、素直に彼を好きになりたいと思った。
もっと彼を知りたいと思った。
私だけに見せる特別な彼を。
これから見たいって思った。