母、ロワナと離れ離れになった子カンガルーマーラ。ミガルーたちから必死で逃げている間にはぐれてしまったのだ。もちろんマーラは一気に心細くなった。まだ母親無しでこの自然を生きていく強さを持っていません。周りを見ても草原。さらさらと風が流れ、ゆらゆらと草が揺れるだけでした。
マーラはとりあえず、歩くことにしました。覚えている限りで、匂いが残す限りで自分が走った跡をたどって行きました。母を求めて。しかし、匂いは途中で霧のように薄れ、空中に掻き消えてしまいました。途中までだどっても、母、そして仲間たちの姿はかけらもなくいなかったのです。マーラの小さい声が思いのほか響きました。しかし、その声に答えるのは、おしゃべりセキレイ、ウィリーの甲高い声だけでした。そして、マーラがロワナと離れて一つの季節、冬が中盤に差しかかる時、マーヤは寒い空気の中、群れを見ました。懐かしの匂いが鼻をくすぐります。そして何より、マーラの絆というものが胸を騒がせ、本能を急かしていました。いつもは怖がり、母親の後ろに隠れますが、今回だけは、自分から向かっていきました。
確かに、マーラが思った通り、それはカンガルーの群れでした。ロワナがいるかも知れない。そういう期待を持ってゆっくり、ゆっくり近づきました。カンガルーたちはマーラの姿を認めても特に気にしないようでした。しかし、一匹。一匹だけ、マーラの姿を見て、かけてきたカンガルーがいました。マーラも気づき、すぐに鉄砲玉のようにかけていきました。
ロワナです。マーラとロワナは毛づくろいをしあいました。抱き合っているその姿はまるで人のようでした。マーラは久しぶりにロワナのポケットに入ろうとしました。しかし、ポケットが小さく、入れません。いえ、マーラが大きくなったのです。大きくなったカンガルーの子供はもう、母親のポケットに入れません。一人前に、一歩踏み出すのです。
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