「”咲かない花もあるものだよ”」
これが師匠の口癖でした。
「咲かない花?」
「そう、咲かない花」
「”咲けない” じゃなくて、”咲かない”なの?」
「そうさ。”咲かないんだ”」
「…咲かない花なんてないよ。
花は芽が出て、蕾が実り、開花する。」
「これが一般常識だよ」
「…あぁ、そうかもしれないな。」
「?…なら、
なんで咲かない花があるって言うの?」
「…………」
私がそう問いかけると、
あなたはいつも口を噤む。
「……大人になったら分かるかもね」
やっと口を開けた、と思ったら
いつもの決まり文句のような言葉を
優しく言い放ち、私の頭をそっと撫で、
愛情をたっぷり与える様な微笑みをかけた。
月日は流れ、
いつも優しく微笑みかけてくれた師匠は、
深い深い眠りについた。
………………
今なら、師匠が言っていた、
あの言葉の意味が
分かる気がする
「…もっと、、早く気づいていれば、っ」
どれだけ後悔をしても、
どれだけ昔の私を悔やんでも、
もう遅いことは知っている。
「”早く切り替えて、別の事に頭を使え”」
貴方はきっとそう言い放ち、
私の頭を優しく撫でるのでしょう?
…あーぁ、
「咲かない花って、本当にあるんだなぁ、 」
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