新しい一日が始まった。
制服に袖を通し、鏡に映る自分へ小さく「頑張ろう」と声をかける。
昨日は律に「まあ、悪くない」と言われただけなのに、胸が熱くなって眠れなかった。
あの一言が、まだ耳に残っている。
(……私、どうしてこんなに律さんのことばかり考えてるんだろう)
自分でも理由は分からない。ただ、心はもう動き始めていた。
ホテルの自動ドアをくぐると、ロビーに立つ律の姿が目に入る。
いつも通りの無表情――それなのに、目が合っただけで心臓が跳ね上がった。
「桜坂さん、今日もよろしくお願いします」
律の低い声に、華は慌てて頭を下げた。
「は、はいっ! よろしくお願いします!」
その声は、少し上ずっていた。