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朝から私は、洋服選びに時間を要する。
「あ〜どっちが良い?」
「う〜ん、白かな」と匠が言うので、白いワンピースにした。
「え? 本当にコレで大丈夫?」と、バタバタと私は準備をしている。
だいたい、前日に準備していない私が悪いのだ。
だって、昨夜、急遽決まったことだし……
と言うか、昨夜は、あんなことやこんなことで、忙しかったのだ。
なのに、匠は、バッチリ用意して、ソファーに座って私のことを微笑みながら見ている。
着替えて、匠に見せる。
「どう? 清楚に見える?」
「バッチリ!」と言う。
「あ〜もう、匠は、何でもバッチリって言うから当てにならない!」
「いや、本当に良いって!」
「そう?」
「うん」
お化粧をして、髪を整えて……
「良し! コレで良いかな」と言うと、
匠は、そっと私を抱きしめて、
「綾、とっても綺麗」と言ってくれる。
そう言う匠こそ、いつもにも増して、黒のスーツをバッチリ着こなして、とてもカッコイイのだ。
「匠!」
「ん?」
「カッコイイ」と言うと、やっぱりチュッとキスをした。
「あ! 付いちゃうよ」と、匠の唇を指で拭く。
落ちにくいリップだが、ティッシュオフする前だったし、わざわざキスをすると付いてしまう。
「匠オフしちゃった!」と言うと、
「ん?」と首を傾げている。
ついでに、もう一度キスしてあげた。
喜んでいる。
「ふふ」
そして、いよいよ出発だ!
匠の車で、父と母を迎えに行った。
お婆ちゃんも誘ったのだが、『私は良いわ』と、お留守番をするお婆ちゃん。
「じゃあ、お婆ちゃん、行って来ます!」
「はい、行ってらっしゃい、気をつけてね」と見送ってくれた。
そして、ハイテンションな母と、少し緊張気味な父を乗せて走り出した。
「ご両親にお会いするのは、何年ぶりかしら?」と母が言うので、
「20年ぶりじゃない?」と言うと、
「そうよね〜綾が4歳だったわ」
「はい、僕は6歳でした」と匠。
「そうね〜ホント匠くん大きくなって、小さい頃からイケメンだったけど、更にカッコ良くなったわね」と微笑んでいる。
「ありがとうございます。嬉しいです」
──素直に受け入れるんだ!
と、黙って顔を見る。
お父さんは、なぜか今日は、おとなしい。
ご両親に会うのが久しぶり過ぎて、緊張しているのだろうか。
「みなとみらいのホテルよね? お母さん久しぶりだから、とっても楽しみだわ」と嬉しそうな母
「はい、良かったです」と匠が笑顔で答える。
「お父さん? 大丈夫?」と私が聞くと、
「おお、大丈夫だ! 久しぶりだからなあ」と、言ったが、みなとみらいが久しぶりなのか?
匠のご両親にお会いするのが久しぶりだと言っているのか? よく分からなかったが、スルーした。
匠と目配せをして、微笑む。
そして、ホテルに到着。
広いロビーで待ち合わせ。
「あ、あそこ!」と匠が言うので、そちらの方を見た。
ビシッとスーツを着こなす紳士と、とても綺麗な装いの女性が居らした。
「さすが、パイロット! カッコイイ〜」と言うと、
匠は、
「そうか?」と言う。
「うん、それにお母様もとってもお綺麗な方」と言うと、
「元CA」
「やっぱり? だよね〜美しいと思ったのよ。パイロットとCAって憧れのカップルよね〜」と、若い頃のご両親を想像していた。
しかし、CAと言う言葉に、
──なんだか急に緊張してきた
父と母もすぐに気づいたようで、ご両親の元へと一緒に向かう。
そばまで行くと……
母が、
「まあ〜綾瀬さん? 中谷です! ご無沙汰しております〜」と、口火を切った。
すると、お母様も「まあ〜こちらこそ、大変ご無沙汰致しておりました」と、2人で手を握り合って再会を喜んでいる。
父も、お父様と握手したと思ったらハグをした。
「ご無沙汰です! お元気そうで何より!」と、ご挨拶している。
「本当にご無沙汰しておりました。まさかこのような形でお会い出来るとは思いませんで、大変嬉しく思っております」とおっしゃってくださった。
──あれ? 父の方が歳上だっけ?
後に、父も母も同じ歳同士だと知った。
そして、ようやく匠と私の方を見てくださり、
匠が、「綾だよ!」と言ってくれた。
「うんうん、まあ〜とってもお綺麗なお嬢様になられて」とお母様。
「うん、ホントに、とってもお綺麗です」とお父様
「ご無沙汰致しておりました。本日は、大変お忙しい中、貴重なお時間を頂戴致しまして、本当にありがとうございます」と、この上なく丁寧にご挨拶した。
──良し! やれば出来る!
「いえいえ、こちらこそ、綾さんにも、ご両親にもお会い出来て本当に嬉しいです」と、お父様がおっしゃってくださった。
お母様も隣りで、ニコニコしてくださっている。
「では、レストランの個室をとっていますので、行きましょうか?」と匠。
「匠くん、ありがとうね」と母。
「匠くんが全部やってくださったのよ、ホントに頼もしい!」とお母様に話している。
父も「仕事は、相変わらずお忙しそうですね」と、
お父様と会話している。
「そろそろ、飛行機は降りようと思ってるんですよ」と話されているようだ。
──そうなんだ
それぞれが話しているのを聞きながら、ほっこりした。
エレベーターに乗り、4階フロアーへ
有名店とあって、とても落ち着いた雰囲気で、接客の方も丁寧かつスマートに案内していただいた。
「綺麗〜!」と思わず声に出してしまったが、
「まあ、とっても素敵ね」と、母も同じく窓からの景色を見て喜んでいる。
「ええ、ホントに綺麗ですこと」とお上品なお母様。
皆んなが席に着くと、匠が
「本日は、お忙しい中、本当にありがとうございます」と言ったので、一緒に立ってお辞儀した。
「本来なら父がご挨拶して、両家のご紹介をして……という段取りとなるのだと思うのですが、何分私たちよりもお互いのことをご存知のようですので、割愛させていただきます」と言うと皆んな笑っている。
そして、
「私と綾さんは、会社で出会いました。つい先日までお互いが幼馴染であることを知らなかったのです」
「まあ、そうなの?」とお母様。
「そうか……」とお父様。
「はい」と私が返事をした。
そこからは、お互いの思い出話をして、幼馴染だということが発覚し、『たっくん』『あーちゃん』だということを知ったと続ける。
そして、匠の方からプロポーズして、現在同棲している旨を伝えると、お母様からお父様にも伝えられていたようで、驚かずニコニコされていた。
そもそもは、うちの母がお母様と連絡を取ったことから聞いてくださっていたそうだが……
──なるほど……ご存知だったんだ
そして、
「それでは、お料理を楽しみながら、ご歓談ください」と言うと拍手が起こった。
「「ふふ」」微笑み合う。
ビールが運ばれて来て、
「では、乾杯しましょう! 綾瀬さん、乾杯の挨拶お願いします!」と、うちの父が言うと、
「えっ! あ〜はい、それでは|僭越《せんえつ》ながら」
とお父様。
「よっ!」と
──やめてよ、もう〜
「本日は、このような席を設けていただきありがとうございます」と、匠と私の方を見るお父様。
「本来ならば、私が仕切って段取りすべきところですが、全てお任せして本当に申し訳ない」と。
『ううん』と横に首を振る匠
「綾さんにも、ご両親にもお会い出来て本当に光栄です。そして、このように嬉しい報告はありません。綾さん、匠のことをよろしくお願いします」とおっしゃってくださったので、お辞儀した。
「では、これからの中谷家と綾瀬家、そして、2人の前途を祝し、乾杯〜!」と、とても良い声で言ってくださった。
「「「「「乾杯〜!」」」」」
パチパチパチパチと、又拍手が起こった。
お料理が運ばれて来て、ビールも進む。