夕雲が夜に溶け込む刹那。
この世とあの世の狭間に現れるのは
何もモノノ怪ばかりではない。
男、女、年寄り、こども。
数多の人々が醸す思念が渦巻き
生きているのか死んでいるのか解らないうちに
浮かび上がり消えていく。
そんな四ツ辻に立つ1人の少年。
赤い髪と赤い瞳は一見、少女と見紛うばかり、
石一つ動かせないのではと思うほど線が細く
美しい。
「また居るな」
四ツ辻の一角に店を持つ初老の男が
厨房の中の妻に声をかけた。
「放っておきなよ。面倒事はごめんだよ。」
「面倒事が起こるかどうかなんて
分からないだろ?」
妻はチラリと少年を見ると、ふいと視線を外す。
「あれはいやな感じがするよ。」
「いやな感じ?そうか?」
男は少年から視線を外さず、続ける。
「綺麗じゃねぇか。男でも構わねぇくらいに。」
男がそう下卑た笑いを浮かべると、
妻は心底嫌そうな顔をして言った。
「あれは半分喰われてる。
半分魔に喰われてるから、
人外の様に美しいんだよ。」
その言葉の通り、
その少年-霧人(キリト)は
自身の半身を探していた。
魔に攫われた双子の妹、
露乃(ツユノ)を取り戻すため、
逢魔時に現れる魔界への扉を探す旅を
しているのだ。
コメント
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コンテストふぁいとです!!🫶🏻🔥