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逢魔時霧人

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逢魔時霧人

2 - 坂の上の雲からのびる・・

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2022年09月30日

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また空振りか


霧人はふうっと細く息を吐いた。

この辻で9箇所目。

魔界への扉の気配は全くない。

あるのは四ツ辻の一角にある店の前で

ジロジロ遠慮なく眺め回してくる男と

その厨房の中から早くいなくなれと

全身で俺を拒否している女だけ。

露乃の匂いもしない。


「行くか」

陽も山の窪みに落ちようとしている。

ただ何かに引っかかっているかの様に

最後の閃光を夕空一面、

紫色に染めながら放っている。


まるで夕陽の断末魔だな


霧人は脇差をもう一度体に馴染ませると

一歩踏み出した。

四ツ辻の向こう、

少し上り坂になっている道の先は

暗い林が続いていてよく見えない。

この林を通らなければ次の村に行けない。

ただ進めば、確実に魔物と変わらないくらい

面倒な輩が潜んでいるのは間違いなかった。

それでも霧人はその林に向かって歩き始める。

雲は細く千切れ、

空と同じ様に紫色に染まりながら

霧人の行方を霞ませるかのように流れていく。

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