テラーノベル
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それからの数日間、柊吾の胸のモヤモヤは消えるどころか、雨の湿気とともに日増しに強くなっていった。
連日のように激しい大雨が続き、外の景色は白く霞んでいる。当然、ベランダに出て顔を合わせることなどできず、瑞樹とのやり取りはLINEだけが頼りだった。
『今日のお昼、お母様のお食事は召し上がれましたか?』
『はい、今日はちゃんと残さずに食べてくれました』
『良かったです。雨で足元が悪いですが、柊吾さんも無理なさらないでくださいね』
画面に浮かぶ、なんてことのない丁寧な文字。
それなのに、スマートフォンがピコンと小さく震えるたびに跳ね起き、画面に『黒瀬瑞樹』の名前を見つけると、胸の奥がじんわりと熱くなる。
返信の文面を何度も打っては消し、どう送れば自然か悩んでいる時間すら、今の柊吾にとってはかけがえのないものだった。画面を見つめながら、気づけば頬が緩んでニヤついている自分にハッとする。
「……柊吾ぉ? なにニヤニヤしてるの?」
「っ!? な、なんでもないよ母さん!!」
ソファでテレビを見ていた真理子が顔を覗かせ、ニヤニヤと生温かい視線を送ってくる。
「ふーん? なんだか最近楽しそうねぇ。もしかして、可愛い彼女でも出来たの?」
「ち、ちがうってば! 友達! ……友達とも言えないか、ただの隣の人……っ」
顔を真っ赤にして否定しながら、柊吾は胸元に抱えたスマホを強く握りしめた。
(彼女なんているわけないだろ……! 相手は男だし、そもそも……)
暗い部屋の中で、液晶の明かりを見つめる。
『ご近所さんのことまで、こうして親身になってケアしてあげて』
近藤の何気ない言葉が、頭の中で何度もリフレインする。
近藤さんは何ひとつ悪いことなんて言っていない。ただ瑞樹の人柄を褒めていただけだ。分かっているのに、柊吾の心には冷たい棘のように刺さっていた。
(……親切な、ご近所さん……)
自分だけに向けられていると思っていたあの温もりも、手書きの資料も、夜中の優しいLINEも――瑞樹にとっては、根が優しく面倒見が良いからこその「親切な隣人への気遣い」に過ぎないのかもしれない。
あの人はきっと今頃も『おひさま』の職場で、近藤さんや他の同僚たちと親しげに笑い合い、誰にでも平等に親切に接しているのだ。
(……なんで俺、あの人の言動にいちいち振り回されてるんだ)
激しい雨音が窓を叩く音を聞きながら、柊吾は湧き上がる苛立ちと困惑に胸を焦がした。
ただの親切な隣人。自分を助けてくれた恩人。それ以上でもそれ以下でもないはずなのに。
瑞樹の言葉ひとつで天にも昇る気持ちになり、他の誰かに向けられる笑顔を思い出しては胸を痛め、返信ひとつに一喜一憂している。
どうしてこんな感情になるのかわからない。ただ、自分の届かない場所にいる男への説明のつかない苛立ちだけが、重く、苦しく、柊吾の胸を締め付けていた。
そあふぃー
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コメント
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タイトル「3−⑧」、読んだよ〜!! 柊吾くんの瑞樹さんに対するモヤモヤが雨の湿気とともに増してて、めっちゃ切なくて胸がギュッとなった😭💦 「ただの親切なご近所さん」って自分に言い聞かせながら、返信の文面に一喜一憂してる姿、恋に気づいてない感が爆発しててときめく…! 母さんにニヤけ顔バレして慌てるところも可愛すぎるよね! この感情がどう育っていくのか、続きが気になって仕方ないです…!🌸