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「あら? ナッキ! 貴方の額に光っている物、それって一体何なのかしら?」


 ナッキは何の事か、皆目見当がつかないままでホルモンの影響でやや可笑しくなっているらしいオーリに答える。


「額ぃ? 何、なんかあるの? ねえヒットぉ! 僕何か付けてんのぉ?」


「どれどれ? 緑だな? ふむふむ…… っ! ナ、ナッキぃっ! こ、これはぁっ!」


「何? 何なのぉ? ひ、ヒットぉ!」


 オーリが見つけたナッキの額にキラリと光った物の正体、それを知ろうとナッキの眉間に近付いたヒットは不安に苛(さいな)まれているナッキに言う。


「あれだ、ほれナッキ、お前のお気に入りだった緑のマクラ、あの小さい石が額にめり込んでいるみたいだよ…… ちょっと、取れそうも無いなぁ、しっかりとホールドしてやがるぞ…… どうする、ナッキ?」


「あの、オキニの枕が僕の額に……?」


 ナッキは思った。


――――そっか、そうだったんだ! あの嵐の中、僕の額に打ち付けて、僕の意識を失わせた衝撃は大好きな枕が当たって、んと、僕の額にめり込んだせいだったのかぁ…… んでも、このマクラが一緒に居てくれたお蔭で、僕は安心して眠りに着いてこれたって事だよね? だったらマクラさん、ありがとうだよぉぉぅ! 付いて来てくれて、サンクス……


と。


 ボウッーとしているナッキが気持ち悪かったのか、はたまた何か言わなければ怖くて仕方が無かったのか定かではないが、ヒットの嫁、オーリが、話を変える感じで言ったのである。


「そ、そう言えば私達を迎えに来てくれたティガさんが言っていたのだけれど、ナッキ! 貴方って今、『メダカの王様』なんでしょう? 昔話したわよねぇ? メダカって小さいお魚が居る、そうお父さんやお母さんが言っていたって話ぃ? 覚えてるぅ? 私も見てみたいのよぉ? 小さいお魚、メダカさん達にね! 会わせてくれない? ねえ、紹介してよぉ、ナッキィ!」


「えっ? 何? メダカぁ? ああ、会いたいのオーリ、んじゃあ取り敢えず『美しヶ池』まで戻ろうか? メダカ以外にもカエルやモロコの仲間達も居るからねっ! みんなに紹介するよっ! 付いて来てね! さあ行こうっ!」

 

 そう言って来た方向にクルリと振り返り、ギンブナたちを先導して適度に手加減を加えて泳ぎながらナッキは思った。


――――昔かぁ、まだそんなに経っていない気がしてたけど、いつの間にか婚礼期を迎える程には成長しちゃってたんだなぁ…… にしても、オーリってば結構辛辣(しんらつ)だったよなぁ、見た目は昔と同じかそれ以上に綺麗なままなのに、何て言うか…… 遠慮が無いって言うか、デリカシーに欠けるって言うのか…… こりゃヒットは苦労するかもしれないなぁ~、んまあ、成長と共に必要に迫られて性格も変化したって事なんだろうなぁ~、そうしなければ生まれてくる子供たちを守る事が出来ないからとか? はぁ~世知辛いねぇ~


 仲間達所か、魚類と言う大きな括(くく)りからも外れてしまっているかもしれない化け物になっても尚、ナッキは自分の変化を棚に上げて、オーリのごくごく僅(わず)かな口調の変化に頓着していたのである。


 そうしていると、恐ろしくはないのかヒットがナッキの横に並んで泳ぎながら話し掛けてくる。


「なぁナッキ、メダカってやっぱり噂通り小さいんだよな?」


「えっ、うん小さいよ、聞いていた通りだったよ、僕は大怪我して迷い込んだ池、今は『美しヶ池』って名付けたんだけどね、そこに住んでいたメダカ達に命を救われたんだよ、んで、恩返しする為に『メダカの王様』になって池の為に働いていたって訳」


「へー、そうだったのかー、それで小さい以外はどんな感じの魚なんだ? 特徴とか有るのか?」


 ナッキは少しだけ頭を捻りながら答える。


「そうだなぁ~、普通の魚だけどなぁ~、体が透明で中の臓物や骨が透けて見えていて、数は大体六百匹位で、あっ! そうそう、全員がピタリと声を合わせて話したりするんだよ、それ位かなぁ?」


「ぜ、全然普通には聞こえないぞナッキ」


「そう?」


「ああ」


『ナッキ様、仲間に会えた、良かったですね』


「っ!」


「ああ、皆、迎えに出て来てくれたの? その通りだよ、彼らが僕の仲間のギンブナさ、どうだい? 前に僕が言った通り、皆大きくて立派で美しいだろう?」


『大きい?』


 迎えに出てきた数十匹のメダカはナッキの言葉に首を傾げている。


 それもそうだろう、ギンブナの中でナッキを除けば一際大きいヒットは兎も角、オーリや他の若鮒達の体はメダカと大差ない大きさだったのである。

 サニーなんかは明らかに小さかった。

堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

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