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「……」
ぼんじゅうるは、今、ベッドの中で快適に過ごしている。
頭の下に氷枕があり、サイドテーブルにはポカリと冷えピタ、それに体温計が置いてある。
「………」
天井を見ながら考える。
「……おれ、何も出来ないと思われてんの?」
「…ちがいます、無茶するからですよ。」
「?!」
いつの間にか入口付近の椅子に、おんりーが座っていた。
そして、話し出す。
「ぼんさんは、自分にきつくし過ぎなんですよ。自分に甘いように見せて実は1番厳しい。甘えれるとこを甘えないし無茶する。自分が我慢すればと直ぐに我慢する。それが大人だから仕方ない、年上だからと言うならば、こちらは同じ仲間として、そして貴方を想う1人の男として言いますよ……頼ってくれないとこっちはへこむし存在意義を見失う。」
おんりーは眼鏡を指で持ち上げるとはぁーと長いため息をつく。
「………なんか、その、ごめんなさい、そんな想われてるとは……思わなかったです」
おんりーらしからぬ事を真剣に言われ、ぼんじゅうるは丁寧に答えてしまった。
「……分かればよろしい。」
席を立ったおんりーは部屋を出ようとして振り返る。
「ちなみに貴方は”少し”熱があると言ったけど、38.4℃ありましたからね、熱にも鈍感ってどーなってんすかその体は……」
「うげぇ、さっき言ったじゃんか!体温知るとそっから一気にキツくなるから知りたくないって!」
「しるか!しっかり寝なさい!」
バン!とドアを閉めてみんなが集まるリビングへと降りていく
『誰か1人のものにならないなら、皆で仲良くするのがいいと思う。その方が俺たちって感じじゃない?』
おんりーはドズルの言葉を思い出す。
確かにぼんじゅうるは選べないと言った、分からないと、なら待ちますと言うと少し苦しそうな顔をしたのも覚えている。
心の優しいぼんじゅうるの事だ、誰かを選んで誰かが傷付くのが許せないのだろう。自分の気持ちより他人の気持ちを優先しているのだ。
だからこそ、他のメンバーはぼんじゅうるをシェアする事に決めた。
「月曜日はドズル」
「水曜日はおらふくん」
「金曜日はMEN」
「土曜日はおんりー 」
「火曜日、木曜日、日曜日はぼんじゅうるの好きなように過ごす日」
そうぼんじゅうるにも話すと、なぜだかホッとした表情をした。
あー、また、自分を犠牲にして丸く収まるならいいか、とか思ってんのかな。
と他のメンバーは少し心を痛めた。
あの後、各自買い出しをしドズルハウスへと急いだ。
1番に着いたドズルは、玄関を開けてリビングへ行く。
そして、頬を染め額から汗を流すぼんじゅうると鉢合わせる。
「やっぱり来た…、もー、大丈夫だって言ったのにさ」
「……いやいやいや、明らかにやばそうなんだけど!」
ドズルは直ぐに駆け寄りぼんじゅうるの額に触れる。
「あつ!」
「えー?」
「えー?じゃない!寝る!」
「喉乾いたから水飲みに来たのよー」
「飲み物持ってきたから!早く寝る!」
えーだの、なんでーだの、唸るぼんじゅうるを引きずり寝室へと急ぐ。
ベッドに横にし体温計で測るとギョッとした。
「え、高っ!」
「あーー!言わないでよ!きつくなるから!」
なんのジンクスなのかぼんじゅうるは、耳を抑え温度を聞くのを拒否した。
あんたねぇーと言いかけた時、おんりーとMENがお邪魔しまーすと、入ってきた。
「どうスか?」
「MEN……本当に大丈夫なのよ、慣れてるし熱出るの、」
「ぼんさん、……色々ツッコミたいところがありますが、今ドズルさんが持ってる体温計が測った後のなら相当熱ありますよ?」
「あーーー、聞こえない聞こえない」
声からしてキツそうなのに元気だと言い切るぼんじゅうるに、MENはおんりーを見た。
「……はぁー、ぼんさん、とりあえず休みましょう、それと、この前のお話で俺たちなりに提案があります。」
「??」
「誰かひとりを選べないなら、皆でぼんさんを愛そうと思います、いいですか?」
「……」
少し恥ずかしいが、ぼんじゅうるはホッとしたようにゆっくりと頷く。
「みんなが、それでいいなら、いいよ俺は」
「………本当に、あんたって人は…」
ドズルは、ぼんさんらしいねと少し微笑む。
「なら、月曜日はーー……」
そして、指折り説明し始めたのであった。
説明の後、しばらくぼんじゅうるを休める為にメンバーでリビングへ移る。
そのタイミングで「お邪魔します!」とおらふくんが息も絶え絶えで入ってきた。
「ぼ、ぼんさん大丈夫ですか?!」
「うん、今は落ち着いて休んでもらってるよ」
「熱は?」
「38.4℃」
「うげぇー!めちゃ高じゃないですか!」
なんで我慢するかなー!と効果音があったらプンプンと怒りながら冷蔵庫に買ってきた食べ物や飲み物を詰める。
そんなおらふくんにMENとドズルが先程の出来事を説明し始めた、少し長くなりそうだなと思ったおんりーは、そのあいだに「ぼんさんの様子でも見るか」と席をたった。
ーーーそして、冒頭へと戻る。
みんながリビングにいる。
そんな気配を遠くに感じながらぼんじゅうるは船を漕いでいた。
夢と現実の堺でフラフラと。
「あーー、キッツ……」
38℃超えてるのかー、と考え、またドッときつくなる。
そりゃ、使った事ないとこ使ってさ!何時間も動かされたらオーバーヒート起こすよ!
と謎に心の中で叫び意識を落とした。
あの後、間隔を置いてぼんじゅうるの様子を見に行くメンバー達、キツそうに唸りながら寝入る姿に、
いつも熱を出すと言っていたが、これをいつもひとりで我慢してやり過ごしてたのか?と悲しくなった。
「ぼんさん、僕たちの事本気で怒っても…殴ってもいいはずなのに、しないって……どんだけ優しいんですかね?」
「……そーだね、もしかしたらソレをする事で関係が終わるとでも思ってるのかもね。」
「……」
俺たちはこんなに愛していても、ぼんじゅうるの気持ちは分からない、
情けなのか、同情なのか、それで我慢しているのであれば再度話し合いがいる。
ドズルは寂しそうにするおらふくんの頭をポンポンと叩いた。
「ま、とりあえずは元気になることだね。」
「…そ、そうですね!ぼんさんも僕たちも元気でいなきゃですね!」
よし!頑張るぞ!と意気込み1階に降りていくおらふくんを見送り、再度ぼんじゅうるを見つめる。
「…欲を言うなら、ぼんさんにも同じ気持ちでいて欲しいなぁ」
俺の目を見て、俺の手の中で、その可愛らしい口とハスキーボイスで愛を囁いて欲しいものだ。
ドズルは己の欲深さにため息をこぼす。
「……何やってんのかね俺は、」
いつもこうだ、ぼんじゅうるが絡むと途端にポンコツになる思考。
惚れた弱み、恋は盲目、痘痕も靨………
まさか、こうもなってしまうとは、自分が怖い。
「ぁあーー、もう全部あげるから俺のもんになってよ、」
ドズルは頭を掻きむしりながら苦しそうに囁いた。
「完全復活!!!!」
やったー!治った!!
とベッドの上で仁王立ちになるぼんじゅうる。
今回の風邪は少し手強かった!4日もかかった!
途中、本当にしんどすぎてメンバーの看病に心から感謝した。
そんな渾身的な看病により完全復活を遂げたぼんじゅうるはぴょんとベッドから降りると、ガチガチに固まった身体をぐにぐにと動かし勢いよく伸びをする。
昨日はMENがいたから今日はおんりーかな?
とリビングに軽くなった体でルンルンと向かう。
階段を勢いよく降りるとその音に心配したおんりーが顔を出す。
「なにしてんすか!病み上がり!」
「もう治ったよ!ほら、完全復活!!」
おんりーの目の前でぴょんぴょんと跳ね、どうよ?!
とドヤ顔で見る。
「……本当に?」
「本当本当!まじありがとうね!!お陰様で元気になりました!」
昨日までは頭痛が残っていたものの、今日はすっかりそれもなくとても気分がいい。
おんりーはホッと肩をおろし「良かった」とにこりと微笑む。
その顔に少し胸が高鳴る。
「……そ、その、本当に色々ごめんね…ありがとう」
「……いいんですよ、俺たちが好きでしてるんです。」
おんりーは、「お腹すきました?今からなにか作りますよ」とキッチンへ向かう。
「一応今日までゆっくりしましょう。様子見です。」
「はーい」
お腹すいたなー、焼肉食べに行きたいなと話すと「あほ、まだ早い」と笑われた。
日曜日、ぼんじゅうるは久々に外に出ていた。
早朝の澄み渡る空気と空、鳥のさえずり、おはようございますと頭を下げる商店街の店員さん
朝の静かで忙しいこの光景が好きだ。
あー、気持ちがいいなとルンルンで散歩をする。
今日はおひとり様の日。
好きな事をのんびりできる日。
お仕事は夕方からこの前できなかった再収録がある。
それまではゆっくりできる。
朝早くから空いてるカフェでテイクアウトのコーヒーを買って近くの公園へ。
朝のランニングをする若者がちらほら。
少し離れたベンチで「あったけぇー」とコーヒーを飲む。
ふーっと吐く息は白く消えていく。
「………俺、こんな贅沢してていいのか?本当に、皆が居なくなったらどうなるんだろ」
ボソリと口から出たそれに、自分が求められている事に対して満更でもない事に気づく。
「……ふ、ふーーん?へぇー、そ、うなんだねぇー?」
少し照れたようにドキドキと跳ねる心臓に語りかけてしまった。
何をしてるんだ俺は、と残りのコーヒーを流し込み近くのゴミ箱へと放り込む。
「……明日は、ドズルさんか」
明日から健康体で会う日が始まる。
また、あの快楽地獄が待ってるのかと考えると下腹部がズくりと熱を持つ。
(いやいや、ここ、最近寝込んでたし、そりゃ、俺も男だから溜まるもん溜まるし……別に期待してる訳では無い、断じて違う!)
そう言い聞かせ、そういえば新しくできた雑貨屋があったなーと次の目的地へ、
(オープンまで少し時間があるからゆっくり行こう。)
「ふんふーん♪ふふん♪」
ぼんじゅうるは上機嫌で歩く。
なにか皆にお礼をしなくちゃな、と。
カラン……
「いらっしゃいませ、ごゆっくりご覧下さい」
雑貨屋の扉をくぐると心地いい音楽とラベンダーの香りがした。
不快にならないけど、興味を唆る、宝探しみたいに積まれた商品の数々に心が踊る。
店員さんもカウンターから軽く会釈をして、その後は干渉なし。
いい所だ。とぼんじゅうるはゆっくりと商品を見て回る。
「……ぷっくくくっ」
1つのキーホルダーに目が行く。
半透明な紫色の玉、そのまわりにまとわりつくように赤、黄色、水色、ピンク……まるで今の自分の状況みたいなキーホルダーだ。
俺の笑い声にチラリとこちらを見た店員は、あー、それいいですよね。と微笑みながら近づいてきた。
「それ、二重構造になってるんですよ。紫のガラス玉の上に更に様々な色を混ぜたガラス玉で多い被せてるんです。綺麗ですよね。」
と商品の値札横に制作秘話が書いてあるミニパンフレットを指さす。
その後、「では、ごゆっくりどうぞ」とカウンターへ戻って行った。
興味が出たぼんじゅうるは、パンフレットを掴み開く。
【こちらの商品……
紫は、魔除けと浄化
赤は、情熱と愛
黄色は、幸運と陽気
水色は、強さと誠実
ピンクは、ロマンスと素直さ
それらを束ねるキーホルダー部分の糸は運命の赤い糸です。
全ての運を、全ての欲を逃がさないように固く繋がるよう最高の商品を作り上げました。どうぞお手に取って頂けると幸いです】
製作者の一言を読んだ ぼんじゅうるは、再度ふふふっと笑ってそれを5つ握りしめた。
あの後、様々な場所へ寄り、 たくさんの物を見た。
路上で弾き語る老人、コンビニから疲れた顔をして出てくるサラリーマン、道端に落ちてる広告入りのティシュ、喧嘩をして鳴く猫、
そろそろ世間も活動的になる時間、ぼんじゅうるは満足し帰路に着く。
「良いもの買ったなー、早く渡したい……」
ニヤリと緩む頬をペチペチと叩き玄関のドアを開けた。
「…………ん?」
誰かの靴がある。
見覚えがある。
「ドズルさん?いるの?」
部屋の奥に声をかけると「いるよー」と馴染みの声がした。
今日は夕方から収録があるけど、自宅にいなくていいのか?と首をかしげリビングへと向かう。
「どしたの?」
「やー、近くまで来たからついでに寄ってみたのさ……どこ行ってたの?もう本調子かい?」
「うん、昨日から完全復活してる。ごめんね色々と、本当に助かったよ。」
「うん、元気なら良かったわ」
「……あのさ、お礼と言っちゃなんですが、面白いものあげるよ」
ぼんじゅうるはニコニコと小袋を1つドズルへ渡す。
「見ていいの?」
「どうぞどうぞ」
がさりと中から出てきた綺麗なガラス細工にドズルは目を開く
そして色を見てバッとぼんじゅうるを見る。
「中にミニパンフレット入ってるからそれも読むとさらに面白いよ」
くくくっといたずらが成功した子供のように笑うぼんじゅうる。
その手には似た袋が数個、
「みんなにも?」
「……そ、お揃い、気に入った?」
「……これはぼんさんの気持ちなの?」
「…………ん」
少し間を置いて、ゆっくりと頷く。
ドズルは勢いよくぼんじゅうるを抱きしめる。
(ぼんさんが!俺たちの気持ちにしっかり向き合って答えてくれている!!!同情でも情けでもない!!しっかりと想ってくれていた!!)
ドズルは泣きそうになる、今日寄ったのも本当は体調が気になる事ともう一度ぼんじゅうるの気持ちを聞こうと思っていたからだ。
「いてて、ドズルさん、つよいつよい」
「ご、ごめん!嬉しくてつい」
ドズルは泣きながらごめんね、と更に強く抱き締めた。
「あのねぇ、何を悩んでたのかは大体予想は付くけど、俺そこまで優しくないよ?本当に嫌なら全力で殴るし、逃げたと思う。それが出来なかったのってどっかでやっぱり考えてたからだと思うのよ、、ちゃんと皆の事考えてるからさ。」
そろそろ離してくれなきゃ内蔵出る!とぼんじゅうるがドズルをグイッと押しやる。
それすらも嬉しくて、笑いながら泣いていた。
「ぼんさん、、本当に、いつもありがとう。いま、すっげぇ嬉しい!」
「はいはい、それならこちらも嬉しい限りですよ」
とりあえずなんか飲む?とお湯を沸かしにキッチンへ行くと
背後からまた抱き締められた。
「……」
「…………ドズさん?」
「んー?」
「腰、なんか当たってんだけど?」
「男の子だからね、生理現象」
「いま、そういう流れだった?」
「わりかし?」
「てか、今日、俺1人の日では?」
「うん、だから我慢する。大丈夫何もしない。」
「え?何もしないの?」
「え?」
「あ、」
ぼんじゅうるはしまったと口を抑えた。
ドズルはパァと、表情を明るくし
「今なんて言ったの?ねぇ?ねぇー?」
「なんでもない!あっちに行ってなさい!」
もっかい言って!もー1回!とまとわりつくドズルに恥ずかしさが振り切ったぼんじゅうるは「出てけ!」と外に追い出したのであった。
『お疲れ様でした。本日の収録は、これで終わりです。』
「……お疲れ様でした」
あの後、トボトボ帰って行ったドズルは夕方からの収録にケロリと参加していた。何事もないように、なぜだがぼんじゅうるはそれがムカムカしてしまう。
(こっちはすっげぇ意識させられてるってのに!)
ヘッドホンから聞こえてくるメンバーのお疲れ様ですの声、その後は残って作業するものや、ボイスチャットを抜けて自身の配信へ行くものと、最後に残ったのはおんりーと自分のみだった。
『ぼんさんまだ居る?』
「いない、寝た」
『いや、いるじゃん、』
「もう、抜けるつもりだから居ない」
『なーにカリカリしてんのさ』
「してない」
『ドズルさんとなんかあったでしょ』
「……何も無い」
『どーせ、ドズルさんがあんなに上機嫌でぼんさんが不機嫌なら気持ちでも伝えたんスか?』
「……」
『……ドズルさんが好きなの?』
「…………」
『…………はぁ、俺たちは負けたんスね〜』
「違う、おんりー、君は間違ってる」
『ん?』
「確かに気持ちは、伝えたけど、違う」
『……でも黙ったって事は肯定でしょ?』
「……おんりーにも怒ってしまったから黙ったのさ、」
『ん?』
「ドズルさんには皆の想いをしっかり考えてる、しっかり向き合っているって伝えたの。どうせ、皆、俺が優しいから同情で付き合ってるとでも思ってるんでしよ?違うから、それにね俺、めちゃくちゃ欲張りなのよ、1人とか絞れない程、皆それぞれちゃんと想っちゃってんのよ?」
『…………………………』
しばらく沈黙が続く
ぼんじゅうるが、大丈夫?と逆に心配をする。
『……っはーーー、くそ、なんで明日俺じゃねぇーんだよ』
「お、おんりーちゃん?」
『クソ抱き潰してぇ……おやすみ』
「え?え?? 」
一方的にえらい攻撃力のパンチをして抜けていったおんりー、ぼんじゅうるは1人残ったチャットをぼーっと暫く見つめていた。
「ん???」
何を言われたのか思い出そうとしてもなかなか出てこない。
ま、大丈夫かな?と仕事部屋を後にした。
この時、ぼんじゅうるは火に油を注ぎまくっていた事に気づかず、おんりーの日に腰が立たないほど責め立てられるのであった。
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