テラーノベル
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謎の気持ちの正体が判明すると更に意識してしまい仕事中も買い物中も家にいる時も、暇さえあればぐち逸に想いを馳せるようになってしまった。
「はいこれで治ります…暫くは安静にしてください。」
「ありがとうだけど現場来るなってば!」
「私が来て良かったですね、救急隊を待ってたら命が危なかったかもしれない。」
「ぐち逸〜人の話聞け!」
「まだ怪我人が出てるので行きます、では。」
「はぁ〜ぐち逸……今日こそ絶対、うん!絶対の絶対!」
一瞬でもぐち逸と会えた日はその後ずっとニヤニヤドキドキしてしまう。今日こそ告白するぞ!と意気込んでは勇気が出ず意気消沈する毎日に遂に終止符を打つ事に決めた。早めに退勤して電話をかける。
「…よし、やるぞ!うん大丈夫!……」
「はい空架です。」
「あ、ぐち逸今平気?えっとー…ちょっと話したい事あってさ。」
「大丈夫ですよ、どうぞ。」
「あー、えっと違くて…その、会って話したくて…」
「会ってですか、どこに行けば?」
「南署の近くのちっちゃい公園分かる?噴水がある公園。」
「えーと…ここか、向かいます。」
緊張して落ち着かず噴水の周りをぐるぐる回っているとぐち逸も到着した。とりあえず、と促してベンチに並んで座る。
「話ってなんですか?」
「あ、えっとー…最近どう?元気してる?」
「?はぁ、まあ別に変わらずですが。」
「やっぱり個人医って大変だね。ちょっと前に葛城さんにも聞いたけどさ…」
現場介入について説教でもされるのか、あるいはクスリ関連の事かと警戒して来たぐち逸だったが、蓋を開けてみればなんて事ないただの雑談だった。嬉しくてつい話し込んでしまうもこの後はDEPで召集がかかっていた。
「話っていうのは世間話だったんですか?そろそろ仕事に戻らないと。」
「あ、違うごめん、ちょっと待って本題入る……あのさ、ぐち逸ってさ、その……す、好きな人とか…いる?」
「へ?」
唐突な問いに思わず間抜けな声が出た。急に何を言い出すんだこの人は…と驚き半分呆れ半分、返事に困る。
「えー…それはその、恋愛感情的な意味で言ってます?」
「……うん、そう…」
「急になんですか?伊藤刑事に教える義理は無いですが。」
「…そう言うって事はいるって事?」
「は!?違います、いませんけど。」
「いないんだ…」
「これもしかして恋愛相談しようとしてます?私に?」
「いや相談ってか、うーん…その、ね……」
「いや何故私に?かなり人選間違えてますよ……好きな人からの恋愛相談とか勘弁してくれよ…」
「ぇ、今なんて…」
無意識に口から零れてしまった言葉にヤバい、とハッとした瞬間全身から嫌な汗が吹き出た。もうどうにも誤魔化せない。
「…なんでもないですっ忘れてください!!」
「あっ待って!」
立ち上がって逃げようとしたぐち逸の腕を掴んで引き止める。時が止まったような感覚の中、共に自身の心臓の音だけが大きく鳴り響いていた。
「…………お、俺も……えっと、好き、です…」
「………ぇ…」
「ちゃんと言いたい、座って。すぅぅぅぅ…はぁぁぁ……伊藤ぺいんは空架ぐち逸のことが好きです。付き合ってください。」
仮面を取って真っ直ぐにぐち逸の目を見て言った。ぐち逸のほうは瞬きも忘れて目を見開き硬まっている。
「………………うそ、うそだ…」
「ううん、嘘なんかじゃない。ぐち逸のことが好きです……返事、聞かせてくれる?」
「………伊藤刑事、貴方のことが好き、です…ずっと、好きでした…」
ぺいんとは裏腹に目を泳がせて小さな声で答えた。これは本当に現実なのか、信じられなかった。
「嬉しい、ありがとう。俺達両想いだね!///」
「本当に…本当ですか?///」
2人して顔を真っ赤にさせてぐち逸は俯き、ぺいんは空を仰いで恥ずかしいような、少し気まずいような空気が流れる。沈黙を破ったのはぺいんだ。
「ぐち逸あのさ…手握っても良い?///」
「ご自由にどうぞ…///」
ベンチに置いてあるぐち逸の手をじっと見つめる。悩んだ末に出した結論は小指だけを優しくきゅ、と握ってぐち逸に優しい眼差しを向ける事だった。
「///…あの、伊藤刑事。」
「ん?なぁに?」
「俺その、記憶にある限りはこういうの、初めてで…」
「俺もそうだよ、初めて。おんなじだね。」
「同じ……///」
俯いたままぽそっと呟く。ぺいんがこちらを向いているのに気付いているが恥ずかしくて目を合わせられない。しかしその代わりにほんの少しだけ、口角が上がっているのをぺいんは見逃さなかった。
コメント
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うわぁぁぁぁぁぁ!!!! 遂に!!!遂に結ばれたぁぁぁ!!!!!!! 全人類が祝うべきだろぉぉぉぉ!!!!!!!