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ヘレンはノブレス・オブリージュ美術館のオーナー室で、心配でそわそわとモートの帰りを待っていた。そこで、オーナー室の暖炉の薪がないことに気付いた。それでも、どうにも落ち着かないので、寒いのをそのままにしていた。
部屋の寒さが限界まで来てしまってブルブルと震えていた時。オーナー室の電話が鳴った。ヘレンは受話器を取ると、相手は聖パッセンジャービジョン大学付属古代図書館の館長だった。ヘレンは古代図書館の館長とは懇意の仲だった。
「やあ、ヘレン。ちょっと聞きたいことがあるんだが……また奇妙な男がレファレンスルームから本を一冊借りていったんだよ」
ヘレンは耳を疑った。
レファレンスルームの本は貸し出し厳禁だったのだ。
「借りた男の名はジョン・ムーアだそうだ……」
ヘレンはそれを聞いて卒倒しそうになったが、詳しい事情を極力耳に集中して聞いた。
「それ、本当? アーネスト?」
アーネスト・グレグスン。それが聖パッセンジャービジョン大学付属古代図書館の館長の名前だった。
「ああ……これは言わないでおこうと思ったんだがね……ついでに紙切れを受付に置いていったんだよ。「その時がもうすぐ来るんだ」って書いてあったって受付の女性が言っていた……何のことかさっぱりわからないが。いやはや、なんだか不吉な男だねえ」