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約束の日まで木星周辺でのんびりしていた私達。太陽系最大の木星や有名な衛星を間近で思う存分観賞した私のテンションが爆上がりして、フェルに優しい目で見られるって珍事も発生したけどね。

約束の期日になったから、私達は直ぐに移動することにした。

「アリア、進路を地球へ。目標地球衛星軌道」

『畏まりました。星間航行速度に設定、地球へ向かいます』

火星と木星の間には小惑星帯、所謂アステロイドベルトがあった。無数の小惑星は見ていて圧巻されたけど、やっぱり宇宙だね。間隔も広くてプラネット号が易々と通過できた。

まあ、当たり前か。地球からも探査機が木星なんかに向かってるし、通過はそこまで難しくない……のかな?分かんないや。取り敢えず学者さんはすごい、で解決。

途中火星を間近で見たくてちょっと寄り道をしたりしたけど、無事に約束の期日に地球近海へたどり着けた。

『ティナ、左舷方向に人工物を確認しました。大きさは本艦よりやや小さい』

「あれは、宇宙ステーションでしょうか?」

「ISSだーーっ!」

ISS、国際宇宙ステーション!いろんな国が関わって建設された宇宙ステーション!宇宙でしか出来ない様々な実験を行うための施設なんだけど、その存在そのものがロマンの塊だよ!

「ティナは物知りですね?」

「え?あー……まあね!前に調べた地球のデータを見たからさ!」

危なっ!?何とか誤魔化せたけど、流石に前世の話なんて、ねぇ?

「そうでしたか」

くっ!ニコニコしてるフェルを見ると罪悪感がっ!

「約束の日だし、このまま地球へ降りるよ。フェルは留守をお願い。アリア、プラネット号はこのまま待機で。ギャラクシー号で降りる!」

『畏まりました、ティナ。サポートはお任せを』

「ティナ、気を付けてくださいね?」

「ん、お土産期待してて」

私は格納庫で“ギャラクシー号”に乗り込み、フェルの見送りを受けて発進。地球へと降下した。

ちなみに宇宙服は着ていない。ドレスチェンジは出来るけど、驚かせたくは無いからいつもの天使衣装。

それも生地に環境適応魔法を施した特別製。お父さんが知り合いの仕立て屋に相談して仕立ててくれたんだ。

幸い地球とアードでは極端な環境差が無いから細菌等を防御することに重点が置かれてる。

お父さんが一週間はチャージしなくても持つと太鼓判を押してくれた。

「アリア、一応地球側に連絡しておいて」

『既に連絡しておりますよ』

「流石アリア、頼りになる!」

大気圏を抜けると、視界一杯に青い海が広がる。視線を横に向けたら、海鳥が飛んでいるのが見えた。

『大気圏内速度に移行。現在地は現地呼称で大西洋と呼ばれる海です……ティナ?』

「ふふっ……ごめん、何でもないよ」

気づけば私はまた涙を流していた。前回はメッセージのやり取りだけだったけど、今度は地球に降り立つことが出来る!ようやく帰って来られたんだ。そう思うと涙が止まらない。

『現在ステルスモードのままですが、このままで?』

「うん、出来るだけ驚かせたくないからね」

“ギャラクシー号”はステルスモードに設定してる。隠蔽魔法の理論を応用したもので視覚的にもレーダー何かからも姿を消せる……らしい。詳しくは分からない。

何でこんなことをしてるのかと言えば、“ギャラクシー号”は地球から見れば未確認飛行物体だよ。スクランブルを掛けられたら堪らないし、そんな迷惑も掛けたくない。だから指定された場所、ワシントンD.C.まではステルスモードで行くつもり。もちろん解除するのは連絡して許可を貰ってから。

『間も無く現在呼称北米大陸が視界に入ります。アードに比べて大きな大陸ですね』

「うん、それだけたくさんの人が住める場所だよ。私達からしたら羨ましいかな」

人口は地球人の方が多い。大陸面積を考えたら仕方無いことだけどね。人工の空島にだって限界があるんだし。

しばらく飛ぶと陸地が見えてきた。それにたくさんのビルが見える……ん、ニューヨークみたいだね。ちょっと位置がずれたかな?

『修正の必要を感じませんでしたので、そのままにしました。大きな建物が乱立していますね』

「ニューヨークだからねぇ」

地球最大級の大都市を前にして、私は圧倒されちゃった。前世だって日本、それも田舎育ちの私からすればニューヨークの摩天楼なんて異世界みたいなものだよ。転生したアードにも高層ビルなんて無かったし。いや、あるにはあるけど数が少ない。

『前方に巨大な石像を確認』

「おー、自由の女神だ!」

いやぁ、こんな形で見ることが出来るなんてねぇ!あっ。

「アリア、もう少し速度を落として。被害が出ちゃうから」

『ご安心を、被害が出ないようにしております』

「あはは、流石はアリア」

言うまでもなかったかな。このままのんびりとニューヨーク上空を通過……んぇっ!?ビルが燃えてる!?

「アリア!」

『ビル火災が発生しています。一階付近に大型のビーグルが衝突。積載されていた可燃性の液体に引火したことが原因と考えられます』

タンクローリーが突っ込んだ!?何でこんな場所を!?いや!それよりも!

「アリア!状況は!?」

『現地の消防らしき組織が鎮火作業に当たっていますが、勢いからして全焼は避けられないかと』

たくさんの消防車や救急車、パトカーなんかが集まって懸命に頑張ってるけど、ビルにはまだ人が取り残されてる!あれじゃ間に合わないかも!

「アリア!ギャラクシー号はここで待機!」

『まさか、ティナ!?』

「そのまさかだよ!」

余計なことを、何て言われるかもしれない!でも、私にだって出来ることがある筈!

『危険です!現地住民に混乱が発生する可能性があります!』

「だからって見過ごせないよ!ごめん!前もそうだったけど、きっとアリアは正しい!」

私が行くことでパニックが起きるかもしれない。でも、だからって命を見捨てるような真似は出来ない!

「お願い!アリア!」

『……貴女の無茶には慣れています。現地政府には連絡しておきますので、くれぐれもご注意を』

「ありがとう!」

私は直ぐにコクピットから飛び出して翼を大きく広げた。うん、アードより気持ち身体が軽い。重力の違いかな?

私の視線の先には、炎に追われて窓から助けを求める人……飛び降りた!?

「間に合えーーっっ!!!」

私の脳裏に浮かんだのは、前世で見たビルから焼け出されて飛び降りる人達が写されたニュース。私は一人だけど!

思いっきり翼を羽ばたかせて、一気に加速。今まさにビルの上層から飛び降りた女の人を……っ!

「まっ、間に合ったっ!」

なんとか間に合って抱き抱えた!

私が助けたブロンド髪の私と同じくらいの女の子は。

「……天使?」

ビックリしながらも、私を見てそう呟いた。

……まあ見た目天使だしね。輪っかは無いけど。アリアのサポートで言語も問題なさそう。

そのまま地面に降りると、周りの人は唖然と私を見つめていた。いや、分かるけどさ!

「救護の方は居ませんか!?彼女を早く!」

私が叫ぶと自動的に英語に翻訳されて、私の言葉を聞いた皆さんが我に返ったように動き始めた。

「此方だ!」

「お願いします!頑張ってね」

私は救急隊員の人が用意したストレッチャーに女の子を横たわらせて、声をかけた。

「君は……!」

「他に取り残された人は!?」

ジブい顔の消防士さんが私に話し掛けてきたけど、今は優先するものがある!

「あっ、ああ!まだ大勢取り残されている!君は飛べるんだろう!?手を貸してくれるか!?」

「喜んで!」

「よし!救助活動を再開だ!言いたいことは山ほどあるだろうが、先ずは任務を果たそう!」

隊長さんだったのかな?彼の号令でみんなが作業に戻る。

優先順位を間違えない、立派な人でよかった。さあ、頑張って助けないと!

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