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「お前、さっき緊張してた? 狙ってる奴いなかったの?大丈夫?」
「え!? ね、狙って……とか、そうだね。うん、緊張してたから狙うどころじゃなくて」
「あはは、ならよかった」
よかった。と、笑顔を見せる坪井に何がよかったのかと聞く前に。
店員の男性――先程坪井がマスターと呼んだ男性が静かにカクテルを差し出した。
「あ、やっぱマティーニきた」
「そ、それは美味しいの?」
「お前カクテルあんまり飲まない? ジンベースだから甘くはないけど」
坪井はすでに口につけた小さなグラスを真衣香に差し出す。
(こ、断ると、子供っぽいのかな)
悩んだ挙句に、顔を寄せ差し出されたグラスに少し口をつけた。
「あ、ほんと。少し苦いというか辛い?」
「あはは、苦手っていう女の子多いよな。お前のは甘いだろ?そっち飲みな」
「う、うん……」
(結局笑われたや)
心の中で愚痴て、それを飲み込むようにカシスオレンジを口に含む。
ビールよりも格段に飲みやすい。