遠征から戻って数日。
仕事の合間、何気なくスマホを眺めていると、つい画面に映る岩本くんの写真に目を留めてしまう。
撮影のオフショット。いつものクールな表情も、笑った顔も、どれも見慣れたはずのものなのに。
「……はぁ」
気づけば深いため息が漏れていた。
もう、とっくに自覚してる。
俺は岩本くんが好きだ。
それを認めたところで、何かが変わるわけじゃないけど、心が楽になるわけでもない。
むしろ、日ごとに増していくこの気持ちを持て余してばかりいる。
「めめ、どうしたの?疲れてる?」
ふと、ラウールの声に顔を上げると、心配そうに覗き込まれていた。
「いや、大丈夫」
適当に笑って返す。
深く追及される前にスマホをポケットにしまい、雑誌のページをめくるフリをする。
誰にも気づかれてはいけない。
この想いは、俺の中だけで抱えていればいい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初は「ちょっと意識しすぎたかな」くらいに思ってたのに、気づけばそれどころじゃなくなっていた。
楽屋で、仕事の合間で、移動中で、気づけば岩本くんを目で追ってしまう。
「あ、また見てた……」
って、何度思ったかわからない。
楽屋でストレッチをする姿、台本をめくる指、笑った時に覗く犬歯、メンバーとふざけてる時の無邪気な表情。
どれを取っても、カッコよくて、優しくて、温かくて——そのすべてが、胸を苦しくさせる。
「目黒、今日の撮影、調子よかったな」
ふいに岩本くんが声をかけてくる。
「あ、うん……ありがとう」
「いい表情してたよ」
そんな何気ない一言に、心臓がうるさくなる。
「……目黒?」
「あ、いや……」
「疲れてる?」
「大丈夫、なんでもない」
なんでもなくなんかないのに。
こんな気持ち、誰にも言えないのに。
ただ、必死に誤魔化すしかなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!