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コンコンコン、、、
病室の扉をそっとノックする。返事は、ない。分かっているけど、やっぱり胸がギュッとなる。
静かに扉を開けると、ベットに横たわる愛しい彼女が見えた。窓からは晴れた空と街並みが見える。
病気の治療薬の副作用で、意識が薄れ視界もはっきりしないらん。俺が来たことにも気づいてない。
「らん、今日も来たよ。元貴だよ」
そう言いながら、らんの肩を優しく叩く。まつ毛が少しピクッとして、ゆっくりとらんが目を俺に向ける。でも、視点が合ってない。というか多分どこにいるか分かってない。しばらく、声をかけながら頭を撫でてやると、らんがうっすらと笑みを浮かべた。
「見つけたね。おはよう、らん」
医師の方が言うには、どうやら今のらんは、はっきりと物体を認識することはできてないらしい。
だから俺だって分かりやすいように、たくさん声をかけて、名前を呼んで、そっと触れるようにしている。
「今日はオフの日だから、たくさん一緒にいれるよ」
「、、、、、、ぁ」
ほとんど息だけの声で、らんが何か言った。悔しいけど、聞き取ることはできない。でも、顔が嬉しいって言ってる。
「嬉しい?」
頭を撫でながらそう聞くと、小さくらんが頷いた。やっぱり。
大好きな彼女の考えてることなら、分かっちゃうんだから。
今日は一日、らんのこと撫でていよう。どんなに目で認識できなくなったとしても、意識が薄れていったとしても、俺だって分かってもらえるために、今のうちに俺の手の感覚を覚えさせたいから。