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「俺は…ルカだった……」
「え…?」
“ルカ”
聞いた事のあるような、ないような名前
蓮は俺の顔をジッと見つめた
「レオン!!」
そう叫び、俺に抱きついた
「お、俺は…亮平だよ…?」
「あ…」
蓮は離れ、俯く
「…俺は、”目黒蓮”であり、”ルカ”でもあったんだ」
「ちょ、ちょっと待って。よくわかんないんだけど」
「もう…覚えてないんだね」
悲しそうに笑う蓮
「っあ……」
思い出した
そうだ。俺は、ルカと一緒に妖狐と戦っている時にここへ……
「レオンって……」
「亮平の名前だよ」
そう言われた途端、記憶が、雪崩のように蘇った
両親や、ルカが俺を呼ぶ声
思い出そうとしても思い出せなかった声
「あら、やっと思い出した?」
声がして、振り向くと蓮のお母さんが立っていた
「母さん…どういうこと?」
「ん〜…いざ説明するとなると難しいわね……」
「私は、蓮の母親。それはいいわよね?」
「うん」
「でも、私という存在が産まれる前、私は亮平くん…正確にはレオンの母親なのよ」
それってつまり……
「前世…?」
「ん〜、まぁ、そんな感じかな」
「普通の人って前世の記憶ってあんまないじゃない?」
「でも、私は何故か子供の頃からこうなる未来が見えていたのよね」
「私に子供ができて、子供が大人になった頃、レオンがこの世界にやってくる」
「時空をも操る妖狐の力で」
そんなことって…
「有り得るの…?」
「さぁね。でも、実際にこうなったじゃない」
「でも、蓮もルカも死んでないのに、なんで…」
俺の母さんの生まれ変わりが蓮のお母さんだってことは分かった
でも、蓮は…?
「ん〜、これまた難しい」
蓮のお母さんは考えるような素振りを見せる
「蓮とルカは魂を同じくする者」
「え、なに急に」
「普通、違う世界の人が魂を同じくするなんてこと有り得ないんだけどね」
「なんか、目黒家って特殊な家庭みたいなのよね〜」
蓮のお母さんはあははと笑う
「だから、正確に言うと私は、生まれ変わりって言うより魂が同じだったって感じ」
「難しい…」
「そりゃそうよ。私だってよく分かってないし」
胸を張ってそう言えるのが羨ましい
「レオンはね、このことが分かったらきっと、元の世界に戻れる」
優しく、柔らかく言う
「なんで母さんは今までそれを言わなかったの?言えば亮平…レオンは元の世界に帰れるんでしょ?」
「やっぱり、生きている世界は違うけれども、わが子だもの」
「少しでも長く、一緒にいたいのよ」
「レオンには、寂しい思い、たくさんさせちゃったからね 」
悲しい笑顔で俺に笑顔を向ける
その笑顔は、まるで母さんが生き返ったような笑顔で、
俺も、泣きそうになった
不意に、ふわりと優しく抱きしめられる
まるで割れ物を扱うかのような優しさだった
「1週間だけだったけど、また会えて良かったわ」
その声は、少し涙声だった
ダメだ…
「俺の方こそ…会えて良かった…」
母さんの涙が俺の肩を濡らす
「それじゃあ、元気でね、レオン」
きっと、これが最後だ
最後なら、これだけは伝えたい
不安そうな顔をしている君へ…
「蓮、少しの間だったけど、楽しかったよ」
「こんなこと言っても、もっと蓮を困らせるだけだろうけど、」
「なら、俺から言わせて」
「俺の方が、レオンを困らせると思うから」
悪戯っぽく笑う蓮をみたら、自分のこの気持ちがハッキリした
「「好き」」
俺ら2人の声が重なる
蓮は嬉しそうに笑い、俺を抱きしめる
「ずっと、こうしていたいな…」
「俺も」
それぞれの涙がそれぞれの肩を濡らす
すると、目の前が白い光に包まれた
「もう、お別れみたいだ」
俺が言うと、蓮は俺の事をさっきよりも強く抱きしめる
俺も強く強く抱きしめる
きっと、足は消えているだろう
無数の光が俺を包み込み、少しづつ、俺の体をこの世界から消していく
「亮平っ……亮平……!!」
「まだ、帰りたくないなぁ」
「もっと、ずっと、ここにいたいなぁ」
「亮平…」
涙に濡れた君の顔
「綺麗な顔が、台無しだよ?」
蓮の顔を両手で包み込むように蓮の涙を拭う
俺は元々この世界に存在してはいけなかった
だから、早く戻らなければならない
でも、
「戻りたくない…」
「もっと、蓮と一緒にいたいよ…」
そんなことを言っても、神様は叶えてなんかくれない
俺の体はどんどん消えていく
最後に、1つだけ
「蓮、大好きだよ」
そっと、蓮の唇と俺の唇を合わせた
涙の味がしてしょっぱい
けれど、初めて感じた温もりに、また新たな涙が流れた
もう1回
そう思って顔を近づけると、目の前が明るく光り、宙に浮いた感覚がした
これで、お別れだ
「っ亮平!!!」
“亮平”としていれたのは1週間だけど、でも、その1週間は大切にしたい
いつまでも忘れないように大切に、とっておかないと……
蓮、本当なら愛し合えなかった俺たちだけど
少しの間、愛し合えて、良かった
愛してるよ、蓮
『はいおっけー!!』
『お疲れ様でした〜』
みんなが明るく拍手してくれる
そして、セットの裏、黒い幕から、メンバーが現れる
その内数人は泣いている
「めめぇ〜阿部ちゃん大事にしろよぉ!?」
ラウがめめの背中を叩きながら言う
「あ〜、明日絶対目腫れてるな…」
そんな明日の心配をしていると、康二が近づいてくる
「阿部ちゃん」
「ん?なに?」
「蓮呼び、良かったで」
「蓮呼びで何回かNG出してたもんな〜笑」
佐久間も来た
蓮呼びでNGとは、俺がNGではなく、めめがNGを出したのだ
なんか阿部ちゃんの蓮呼びはやばいとか言って
別にそんなやばくないだろ