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第7話:結末
戦乱が終わり、王国からの褒賞を受け取る日が近づいていた。ユウは仲間たちと思い出の酒場で最後の夜を過ごす。
「今日は、思い切り楽しもう」
ミルキーが笑顔で言うと、ダディも頷いた。
「命を守り抜いた者だけの特権だな」
アスルファは少し照れくさそうに、杯を差し出す。
「乾杯、これまでの旅に――そして、明日へ」
ユウも杯を手に取り、静かに微笑んだ。
「ありがとう、みんな。君たちがいてくれたから、生き延びられた」
夜が深まり、仲間たちはそれぞれの思い出を語り合う。
「覚えてるか、初めて取引したあの村のこと」
「うん、あの時は本当に焦った」
笑い声が酒場に響く。過去の困難も、今では温かい思い出になっていた。
ユウは心の奥で、静かに自分に問いかけた。
「これで…僕の願いは叶うのだろうか。寿命で死ぬために、僕は十分生きたのか」
夜も更け、仲間たちと別れを告げる時が来た。
「この商人放浪記、旅の途中で書いたものだけど、君たちに託すよ」
「えっ、私たちに?」
「そう。これを読んで、僕たちの旅を忘れないでほしい」
仲間たちは頷き、ユウを抱きしめた。笑顔の奥に、わずかな寂しさが漂う。
その晩、ユウは王城の宿に泊まった。
「…よし、明日は褒賞を受け取るだけだ」
だが、深夜、胸に鋭い痛みが走る。視界が霞み、意識が遠のいていく。
「…これは…」
その瞬間、ユウは静かに目を閉じた。呼吸が止まり、体から力が抜けていく。
翌朝、王城の門前で人々は驚いた。
「褒賞を受け取るはずのユウ様が…消えた?」
どんなに探しても、彼の姿は見つからなかった。
しかし、丘の麓の墓のそばで、錆びた剣がわずかに光を帯びた。
――ここで、チート能力「異世界転生」が静かに発動する。
ユウは旅を通じて得た知恵、仲間との絆、命の尊さを胸に、新しい世界へと魂を移していった。
生き延びることの意味を知った男は、次の人生でも同じ願いを抱き続けるだろう。