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第8話:エピローグ
ユウが忽然と姿を消した後、仲間たちは深い喪失感に包まれた。
「まさか…こんな形で…」
ミルキーは震える声で呟く。
「でも、彼が残した商人放浪記がある。ユウの旅は、これで終わらない」
アスルファも静かに頷いた。
「彼の意思は、私たちの中で生き続けるわ」
時は流れ、数世紀後。ユウの名前は忘れられても、商人放浪記は語り継がれ、多くの人々に影響を与えていた。
「戦で若くして命を落とすのは、誉ではない。生き延びることが第一だ」
人々の間で、そんな言葉が日常の教えとして広がっていく。
村や町では、病気の予防や治療が進み、戦乱の被害も少しずつ減っていった。子どもたちは笑顔で走り回り、大人たちは安心して暮らすことができるようになった。
ある日、丘の上に立つ老人が若者たちに語りかける。
「ここに、かつて一人の男がいた。彼は命の大切さを教え、寿命で死ぬことの尊さを示したのだ」
若者たちは目を輝かせて聞く。
「生きるって、ただ生きるだけじゃなくて、大事なことなんですね」
老人は微笑む。
「そうだ、命を大切にし、明日を生き抜く。それこそが幸せなんだ」
風に揺れる草原を見下ろし、ユウの魂は静かに微笑む。
「僕の願いは、こうして少しずつ世界に広がっているんだな…」
遠くに見える丘の麓、二つの墓と錆びた剣。その姿は、過去の旅と未来への希望を静かに象徴していた。
生きることの意味を学んだ人々は、争いを避け、助け合い、笑顔を忘れない。ユウが残した小さな軌跡は、世界を少しずつ変えていく。
「明日も、僕らは生き延びる。ユウの意思を胸に――」
風に乗って聞こえる声は、遠い未来の子どもたちの笑い声。希望は、確かに芽吹いていた。