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リイは学園の女子寮に住むことになっていた。リイの部屋は二人部屋なのだが同室の子がいないので、実質一人部屋である。なので、隠れてこそこそするのにはちょうどよかった。
「リイ様!学園内にいる怪しい人物をあつめてきました!」
マージュが現れ、調べたことを書いた資料をリイに渡す。
「ありがとうだぞ!」
「ふむ、ふむ。」とリイは資料に目を通す。書かれていた人物は……。
「わかったぞ!この者たちに会ったら、慎重に接するようにするぞ。」
「い、いえ!普通に接してくださいっっ!!」
マージュは慌てて説得する。リイは隠し事が苦手で演技も絶望的だった。なので、相手を探ることなどできるわけがないのだ。だが、かんは鋭いので普通に接していれば何か気づくことがあるかもしれない。そうマージュは考えていたのだ。
「そ、そうか。ならそうするぞ。」
マージュはホッと胸を撫で下ろす。そして、もう一つリイに伝えることを思い出した。
「あ、リイ様、聖魔神全員学園にいたんですけど…。」
「みんな、潜入してるらしいぞ。」
「あれが…潜入?…バレバレでしたけど(ボソッ)」
マージュはリイに気づかれないように小言を漏らす。
「我、みんな見つけ出すぞ!」
「すぐに見つかると思います。(真顔)」
そのときのマージュの顔は見たこともないような真顔だった。
「え-、今日はきみたちがどれくらい実技ができるかテストする。」
試験監督は、スズエン・カイノという初老の教師だ。彼の行う試験はいたってシンプルだった。それは彼が召喚する魔物を倒すという内容だ。
「じゃあ、始める。」
スズエンの足元に魔法陣が浮かび上がる。すると、魔狼が現れた。
「こいつを倒せばいい。以上。」
この試験はシンプルだが、難しいものだった。魔狼は魔獣の中でも攻撃力が高く、中級冒険者でやっと倒せるレベルなのだ。だから、スズエンもクラスの全員が協力して魔狼に傷をつけることができれば上等だと考えていた。だが、無謀にも一人で魔狼に挑んだ者がいた。それは、リイではなく悪ガキのルウゼス・ダリンだった。
ルウゼスは剣を出し、それに魔力を付与して魔法剣にする。それを魔狼の腹部に向けてふる。直撃し、魔狼の腹部が僅かに切れた。
「しゃあっっ!」
スズエンは信じられないものを見るように彼を見た。ただの学園の生徒が魔狼に傷をつけることなど普通は不可能なのだ。(確かこいつ、入試首席だったな……)
だがそれでも、ルウゼスの実力は異常だった。
魔狼の爪の攻撃を避けるとルウゼスは魔狼をまた切った。だが、魔狼もすぐに傷を回復させ、ルウゼスに向けて攻撃する。魔狼の一番厄介なものはピンピンに尖った爪での攻撃だった。あれをまともに喰らったらヤバイとルウゼスもわかっていたので、爪を避けることを最優先にした。そして、爪をどうにかして切断できないか考えていた。(……!これなら。)
ルウゼスは、魔力・〈身体強化〉を発動させる。〈身体強化〉は一時的に身体能力を著しく上げることができる魔力だ。
ルウゼスが思いっきり魔法剣を振るうと「バリンッ」と魔狼の爪が飛んでいった。そして、一瞬魔狼が意識をそらしたのをルウゼスは見逃さなかった。その瞬間に魔法剣を腹部に突き刺した。見事、攻撃が直撃した魔狼は倒れたのであった。
「よっしゃぁぁ!!」
ルウゼスは腕を上げて喜んでいた。だから気づくことができなかったのだ。
ほんの少し、本当に少しだけ魔狼の体が動いたことに___。
「後ろだぞ!!」
「えっ?」
リイが言ったときにはもう遅かった。魔狼の爪がルウゼスの胸を突き抜けていたのだ。
ルウゼスが意識が途切れる前に見えたのは自分を助けようとするリボンを着けた銀髪の少女だった。