「ただいま! 善悪! オルクス君も、弟ゲットしてきたよん!」
出迎えた善悪とオルクスと一緒に居間に移動して、積もる話しはさておき、まずはお土産の披露である。
三重名物の、アカ○クをはじめ、へんば○ち、やすなが○ち、小倉う○ろ、いといんせんべ○、山村プ○ン等々。
通過してきた愛知県からは、青柳(あおやぎ)うい○う(小倉とは又違った旨さ)、あ○まき、揚げあん○まき、ささら○た、生しるこサ○ド等々。
「……コユキ殿、また、そんな甘いものばっかり」
「えぇ? な~にぃ~? 善悪まで妹達みたいなこと言っちゃうとか~?」
慌てながらも真剣な表情で否定を口にする善悪。
「ちがうでござるよ~、あぶら物もとらなきゃ、痩せちゃうではござらぬか~、ブーでござるよ」
と言う事らしい。
「あれ? コーチンは? メモに書いて有ったでござろ? 名古屋コーチン!」
言われたコユキはキョトンとした顔で、包装紙に包まれた菓子箱を指差した。
そこには『銘菓名古屋○ーチン』と書いてあった。
「う、うん、わかったでござる、取り合えず夕ご飯の支度をしてくるでござるから、ゆっくり休んでいるでござるよ」
そう言ってやや肩を|窄《すぼ》めながらも、いそいそと席を立ち、買い置きの鶏肉がナントカカントカ呟きつつも、から揚げの準備に台所へ向かっていった。
善悪が台所に向かってから、コユキはなにやらソワソワしているオルクスに向かって、
「お待たせしちゃったわね、はい、モラクス君だよ!」
そう言いながら、オルクスの前にモラクスの赤い石を置いて微笑むのだった。
オルクスが白く輝くと、答えるように弱々しく黒いオーラを明滅させるモラクスの石。
その姿を目にしてホッと安堵の息を吐いたコユキは、いつのまにかウトウトとうたた寝をはじめるのだった。
どれくらいそうしていたのであろう? 座卓に突っ伏しているところを善悪につつかれて眼が覚めた。
「コユキ殿、お待たせしたのでござる、ご飯でござるよ」
ぼ――――っとした頭で、善悪の顔を見る。
なんで善悪はいつも笑ってるんだろ、なんでこんなに優しいんだろ、坊さんだから? と。
ぐるぐる考えていたが、漂って来たから揚げのいい香りで考えは吹き飛んだ。
そういえばお腹が空いていたのだった。
コユキの目の前にどんっと置かれる大皿に山盛りのから揚げと、大盛りごはんとわかめのお味噌汁、色々な野菜のお漬物に箸休めの煮豆。
ぱんっ! いただきますっ!
善悪と向かい合って食べ始めると、さっき考えていたことを思い出した。
なんでこんなおいしい料理できるんだろ、今日の昼間だってめちゃくちゃ忙しかっただろうに、煮豆なんていつ作ってるんだろ?
そういえば裏で畑もやってたな?
お寺の仕事もちゃんとやってるみたいだし?
朝何時位に起きてるんだろ、ってかちゃんと寝てるんだよね?
「善悪…… なんか…… いつも、ありがとね」
「!? ……どうしたでござるか? コユキ殿? 大丈夫でござるか?」
と、お腹でも痛いのか、牛のことがショックだったのかと心配になってしまった善悪であった。
コユキは努めて明るく、頑張って笑顔満面(例によって表情は変わらなかったが)にして言った。
「大丈夫! から揚げおいしいよぉー! ねぇ、善悪、デザートはアカフ○とあん○きどっちにしよっか?」
「むむむ、某はア○フクにしようと思っていたのでござるが…… 両方でも良いでござるな? 流石にお互い疲れたのでござるし」
「そうだね、じゃ、両方食べちゃおっか?」
「でござる!」
楽しそうに微笑むコユキと、安心した表情の善悪。
日帰りの、たった一日だけ離れていた間の話を、止め処なく語り合って時には驚き、時には声を揃えて笑い会う二人。
居間の入り口から、オルクスと野菜の国の王子様のソフビに納まったモラクスが優しい表情で二人を見つめるのであった。