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#歳の差
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「おはようございます」
「お、おはよう」
類と両想いとなり付き合うようになってから初めての出勤日。デスクに座っていた結衣に類が挨拶をすると、結衣は心臓が跳ね上がるような思いになりながらなんとか挨拶を返した。
(う、なんだか緊張する。本当に、類くんと付き合ってるんだよね?夢じゃないよね?)
あれだけ熱い夜を過ごしたのに、こうして会社に来てみると類はいつもと変わらずポーカーフェイスで淡々としている。なんてことない顔でいつものように結衣の隣のデスクに座り、業務を開始した。
(私だけ意識しちゃってるみたいでなんか嫌だな。って、そんなこと考えてる場合じゃない!今日も忙しんだから、切り替えて仕事仕事!)
よし、と鼻息を荒くして結衣がPCとにらめっこを始めると、類は横目でそれを見て、すぐにまた自分のPCを見つめた。
◇
(うっ、重い!なんでこんなに資料ためこんだのよ課長!)
結衣は両手にファイルを何個も重ね持ち、ふらふらと廊下を歩いていた。課長にファイルを片付けるように言われたが、かなりの量だ。
(横着しないで台車とかに積めばよかった。でもそこまでではないと思っちゃったんだよね)
「佐々木さん」
後ろから声をかけられるが、とても振り返られる状況ではない。声の主には声で誰かわかっているのでどうしようか迷っていると、結衣の横にきてファイルを何冊か持ってくれた。
「大丈夫ですか?一人で持つ量じゃないでしょ、それ」
「佐伯君、来てくれて助かったー!自分でも後悔してたとこ」
結衣がヘラッと微笑んで言うと、類は呆れた顔をしながらもフッとつられて笑う。
「資料室に持っていけばいいんですよね」
「うん、ごめんね、手伝わせちゃって」
「いや、ちょうど息抜きしようと思ってたんで」
「これが息抜きになるかなぁ」
うーんと困ったように結衣が言うと、類は結衣の耳元に顔を近づけてそっと囁く。
「結衣さんと二人きりになれるなら十分息抜きですよ」
「!」
類はそう言って結衣の前を歩き出す。結衣は顔を真っ赤にしながらきょろきょろと周囲を見渡して誰も見ていないことを確認すると、ホッとしながら類の後を慌てて追いかけた。
ドサッと机の上にファイルを置くと、類は資料室の棚を見渡した。資料室には誰もおらず、二人きりだ。
「さっさと棚に戻してしまいましょう」
「うん」
あれはここ、それはあっち、と手際よく進めていく。
(これは、あー、ちょっと高すぎて届かないかな?いや、でも頑張ればいけそう!もうちょっと)
結衣はファイルを片手に背伸びをして棚の上の段にファイルをなんとか戻そうとする。
「無理しないでくださいよ」
背後からひょいっと手からファイルが取られ、そのまま棚にファイルが戻される。
「あ、ありがとーー」
後ろを振り返ってお礼を言おうとする結衣のすぐ目の前に、類の胸元がある。見上げると、類が真顔で結衣を見下ろしていた。
(ち、近い!)
仕事モードで忘れていたが、類は結衣にとって推しであり彼氏でもある。大好きなその顔が目の前にあって自分を見下ろしているという事実に、結衣の心臓は一気に跳ね上がった。
「あ、ありがとね!いやー、助かったよ」
慌てて目をそらし結衣が横からすり抜けようとすると、ガシッと類の手が結衣の両肩を掴む。まるで逃がさないと言わんばかりだ。
「さ、佐伯君?」
「せっかく二人きりになれたんだから、そんなに急いで戻ることないでしょ」
「う、え?でも、人が来るかもしれないし」
「そうそう来ないでしょ。それに来てもここは死角になって見えないですよ」
確かに、結衣たちがいる場所は入口から一番遠く、奥まっている。結衣を見下ろす類の瞳は、なにか熱いものがユラユラと揺らめいていて結衣を離さない。
(そんな目で見つめられたら溶けちゃうよ!尊死しちゃう!)
「いや、でも、心臓が持たないので離してもらえませんか」
「嫌だ」
「なんで!?」
きっぱりという類に、結衣が思わず聞くと、類はムッとして結衣を見つめ返す。
「結衣さん、今日はいつもと変わらなくてなんかムカつく」
そう言って結衣の頬に手を添えると、親指でスリ、と頬を撫でる。
「んっ」
「そういう可愛い姿が本当はもっと見たいのに」
「なっ!だって、ここ会社だよ?それに、いつもと変わらないのは類君の方じゃない。ポーカーフェイスで淡々としてて、まるで何もなかったみたいな感じだから、あれって夢だったのかなって思っちゃったじゃん」
「それは、結衣さんが社内では付き合ってること秘密にしようねって言うから、ばれないようにって気をつけてるんですよ。……てゆーか、夢だったのかなって?そんなわけないでしょ。だったら、今ここで夢じゃないってわからせてあげる」
そう言って、類はすぐに結衣へキスをする。最初は何度も何度も優しくついばむようなキスだったが、次第に濃厚なキスへを変わっていく。
(な、会社でこんなこと、ダメなのに……)
抗いたいのに抗えない。結衣は類の胸元に手を置いたまま、類からのキスを受けるしかなかった。