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いじめてた子に依存することになる話 2
食材の入ったエコバッグを片手に持ちながら、今度こそ自宅へ帰宅する。
既に身体はズタボロで、玄関に倒れ込んでしまう。
さっきまで行われていた一方的な暴力。あの時の光景がずっと頭に残り、思い出すだけで苦しくツラくなってしまうのだった。
(怖い、怖い。怖い怖い怖い怖い。死にそうになった。もう死んだと思った。あの時の苦しさが、わたしを包んで離してくれない。)
全ての痛みを身に感じながら、わたしはその場にうずくまって朝がやってくるのを待った。
──────────────────
玄関でそのまま眠ってしまっていた私は、差し込む日差しで目を覚ました。お腹や首はもちろん、身体の至る所が痛く、起き上がるのも一苦労だった。
「学校の準備しないと…」
本棚から今日必要な教科書を手に取りリュックサックに入れる。そして冷蔵庫の中から食材を拝借してはキッチンに立って朝食を作り始める。
今日の朝食はシンプルに目玉焼きとウインナー、ツナサラダ。
「いただきます」
その時のご飯は、砂でも食べているんじゃないかと錯覚するほど味がしなかった。
✻
8時32分。いつもより遅く学校に着いて早々、違和感を覚えた。いつも騒がしい教室が変な雰囲気に包まれていた。教室の生徒はわたしが最後だったみたいで、全員揃っている。
一体何があったのだろうと、どうしてか自分でも分からないが日ヶ谷さんに目を向けていた。こういう時明るく振舞って場の空気をよくしてくれる彼女が動くんじゃないかと無意識に期待していたのかもしれない。
でも、その期待は間違いだったようで。
「え…?」
「………」
わたしが目にした日ヶ谷陽乃は、何故かクラスメイトから距離を置かれていた。
「あ、宵宮さん!昨日は大丈夫だった?」
「えっと、なにが?」
呆然としているところにクラスメイトの1人がわたしを心配する。どうして日ヶ谷さんが距離を置かれているのかもわたしが心配されているのかもわからず、頭が混乱していた。
「宵宮さん、昨日日ヶ谷さんに虐められたんでしょ?」
頭にガツンと重い衝撃を受けたような気がした。目の前のクラスメイトが言うように、確かに虐められた。でも、それはわたしと日ヶ谷さんしか知らないことのはずで、クラスメイトが知っているはずなんてなかった。
「……いじめなんて受けてないよ。だってあの日ヶ谷さんだよ?そんなことするわけな──」
「よーし、お前ら!朝のホームルームするぞ〜!」
疑問が解消されることなく、朝のホームルームが始まった。
先生の様子を見ている限り、『日ヶ谷陽乃がいじめをしていた』という話題は生徒間で広まっている噂で収まっているのだと理解した。しかし、仮にそうだとして何故噂程度で日ヶ谷陽乃はクラスメイトから距離を置かれているのか。謎はどんどん増えていった。
───────────────────
いつもと変わらず50分の授業を4回こなし、訪れた昼休憩。食欲が湧かず昼食の弁当を作ってこなかったわたしは、机に突っ伏して午後の授業の開始を待った。
(どうしていじめがみんなに広まっているんだろう……。わたしに相談できるような友達はいないからわたし達以外の誰かが目撃していたとしか考えられない…。でも仮にそうだとして、日ヶ谷さんがいじめをしていたなんてみんなが信じるとは思えないし……)
「はぁ〜〜…なんでこんなこと考えてるんだろ」
早朝抱いた疑問を一個一個整理しながら、考えていく。1つの結論に至ってはでもそれなら…とその結論を否定することを繰り返してしまって一向に疑問の解消へと向かうことが出来なくて。
ガタッ
賑わっていた教室が、誰かの席を立つ音たった1つで静まり返った。それほど彼女を見る目は180°逆転してしまったのだろうと察してしまう。
「宵宮さん、今時間いい?」
「う──」
日ヶ谷さんに声をかけられたわたしは、身体を起こしてその問いに応答しようとした。
どうしてこんな状況になっているのか彼女に直接聞いて確認したかったから。
「あ、あの!宵宮さんに近寄らないでくれませんか!」
が、朝わたしを心配してくれたクラスメイト──古峰 旭が遮った。
古峰さんはいわゆる文学系女子。地味でも派手でもない中間に位置する子。物腰が柔らかく、とても頼りがいがあって日ヶ谷さんとはまた別の方向で人気な女子だと思っている。
そんな古峰さんとは授業でたまに話す程度の関係値。古峰さんがここまでわたしを守るようなことをする必要はないはずだった。
「…っ。わ、かった…。」
古峰さんにNOを突きつけられた日ヶ谷さんは苦しそうな顔で自分の席へと戻っていく。バレた経緯はどうであれ、いじめをしていたのは事実でありこのような扱いを受けるのは自業自得としか言えなかった。
なのに”かわいそう”と思ってしまうわたしは、お人好しもいいところだった。
「宵宮さんのことは私が守るからね!だからいつでも言って!」
「う、うん」
(古峰さんって確かお昼は違う教室で食べてたはずなんだけど、どうしていいタイミングで教室に戻ってきたんだろ……。いや、これ以上変なことを考えるのはやめよう)
──────────────────
そんなこんなで始まった午後の授業。昼食の後だからだろうか、眠たい目を擦りながら頑張って授業を受けようとする人、昼食後など関係なく元気そうに隣の席の友達と授業とは関係ない話をして注意を受ける人、先生が話す内容を黙々とメモしてまともに授業を受ける人。
多種多様な授業の受け方をする人がいる中で、わたしはと言うと特別なことをするでもなく普通に授業を受けていた。
「ね、ねぇ宵宮さん、ここの問題どうやって解けばいいの?」
「えっと、そこの問題は……すればいいよ。」
「なるほど。ありがとう宵宮さん」
5限は数学。数学が苦手だという古峰さんは、このようにわたしに教えを乞うことがよくあった。数学だけ見れば、自分は比較的できるほうなので、淡々と苦戦することなく問題を解き進められた。
「宵宮さんってどうして数学できるの?」
「毎日予習・復習してるから。それが出来れば古峰さんも出来るようになるよ。」
「毎日!?毎日はさすがに無理だよ…」
「それなら初めは2日に1回するようにすればいいと思うよ。わたしも最初は毎日なんてできなかったし」
「それなら私でもできそうかも。今日からやってみようかな…」
数学を担当する先生は突拍子もなく演習問題を出してくるタイプだったため、いつ指名されても答えられるようにと予習・復習をするようになった。そのおかげでこうして誰かに教えることが出来ているのだから続けていてよかったと思えた。
「コホンッ!宵宮!この問題を解いてみろ!」
「√3+nです。」
喋り声が聞こえていたようで、案の定指名されて演習問題を解くように言われてしまって。こういうことが以前あった時は不甲斐ない思いをしたため、今回すぐに答えられて気持ちが良かった。
「せ、正解だ。だが、あまり喋りすぎるなよ」
「すみません」
席に座り、もう一度ペンを持ち授業を聞いた。
──────────────────
「さっきはごめんね!私のせいで怒られちゃって…」
「ううん。別に大丈夫。むしろ演習問題解けて気持ちいい思いできたしよかったよ」
5限の終了を知らせるチャイムが鳴って授業が終わって早々、古峰さんが私に謝罪してきた。あれくらい気にしないのに律儀だな…と思いながら話して。
「それなら良かったけど…。あ、そうだ。宵宮さん今日放課後一緒に帰らない?」
「えっ、わたしと?どうして?」
「宵宮さんと帰ってみたいな〜…って思ったから…。じゃ、ダメかな」
わたしと古峰さんとの関わりはせいぜい数学の授業のみ。それ以外の時間で彼女と会話をしたことはない。そんな関係性のわたしと帰りたいなんて理解できなくて
「わたしと帰ってもなにも楽しくないと思うけど…」
「よ、宵宮さんと少しでも長く一緒にいられるだけいいのッ!だ、だから……」
「わかった。じゃあ放課後一緒に帰ろう」
わたしと一緒にいたいなんて思うなんて珍しいな…と、顔を赤らめている古峰さんを見て思った。
「ほ、ほんと!?ややった!それじゃあまた後でね!」
6限は選択授業。わたしは音楽を選択し、古峰さんは美術を選択していた。教室から美術室まで距離があることもあり、古峰さんは授業開始5分前に教室を出て行った。
そろそろわたしも音楽室に向かおうかと席を立つと、わたしの真横に日ヶ谷さんがいて。
「っ!!!?!?日ヶ谷さん?わ、わたしになにか用?」
「今日の放課後、少し残ってもらえないかな…って…。」
これまでの彼女からは考えられないほど弱々しい声と態度で話しかけてきた日ヶ谷さんに驚いた。
放課後といえば、昨日遭ったことを思い出してしまって正直断りたかったが───
「うん。わかった。」
わたしはそのお願いを了承した。なぜ了承したのかと問われれば、わたしは間違いなく”お人好しだから”と答える。
「…!ありがとう」
「えーっと……音楽室、一緒に行く?」
……。わたしは何を口走っているのだろうか。今日のみんなの日ヶ谷さんへの扱いがあまりにも可哀想だからといって、自分から柄でもないことをするのは違うんじゃないかと反省する。
「………。大丈夫。誘ってくれたのにごめんね」
表情をまた暗くして音楽室へ向かった日ヶ谷さん。そんなにわたしと一緒に動くのは嫌だったのだろうか。
「わたしも行かなきゃ……」
日ヶ谷さんの後を追うように、同じくわたしも音楽室へと向かった。
────────────
「宵宮さん帰ろう!」
一日の授業を全て終え、帰りのホームルームも終わったところで、古峰さんは早速わたしに声をかけてきた。
「あっ、その事なんだけどごめん古峰さん。わたしこの後用事が出来ちゃって…」
「用事?………………そっか、それじゃあ仕方ないね。それじゃあまた明日ね!」
「うん、また明日」
古峰さんは手を小さく振りながら教室を出ていった。
せっかく一緒に帰ろうと誘ってくれたのにこうして断ることになったことに後ろめたさを感じながら、目的の相手の元のところへ近づいて。
「それで、どうしてわたしを残らせたの?」
「……。宵宮さんはどうして私がいじめをしていたことがバレたと思う?」
「誰かに見られてて、それをみんなに言いふらされたから?」
今に至るまでずっと考えていた疑問の結論は以上のことだった。正直そうだとしてもそれは日ヶ谷さん以上に影響力を持つ人じゃないと成り立たないことであって、この結論は間違いであると思ってしまって。
「ん〜、半分正解。正解はね、私がほんとの事打ち明けちゃったの。」
これは宵宮さんが登校してくる前の朝の出来事だ。
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✻
side陽乃
「ん〜!今日もいい天気…」
朝6時。アラームの音と共に身体を起こしてはぐーーっと身体を伸ばし目を覚ます。
昨日のこともあって、私の気分は絶好調!いつもより楽しく学校生活を送れる気がして今から楽しみだった。
「おは……。今日の朝ご飯は何にしようかな〜」
自室で髪の毛のセットやメイク、着替えを済ませてからリビングへ降りれば、もうこの時間にはいない存在への挨拶をしかけながら、朝食の準備に取り掛かる。
「いただきます」
今日の朝食は鮭の塩焼きに卵焼き、野菜満点栄養満点のお味噌汁にご飯。我ながら美味しそうな朝食だった。
17分後、食事を終えた私は、歯磨きも済ませて家を出た。
───────────
「みんな〜おはよー」
教室のドアを開け、いつものように挨拶をする。クラスには既に半分以上の生徒が居て、今日も一番乗り出来なかったな…と残念に感じてしまう。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「みんな?おはよう…」
たくさんのクラスメイトが居るのにも関わらず、誰一人として挨拶を返そうとしない。いつもだったらうるさいくらいにみんなから挨拶が返ってくるのに。
私はまるで幽霊にでもなったかのような感覚になった。
「えっと…みんな今日は元気ないみたいだけどなにかあった?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
無反応で教室が静まり返っているそんな時だった
「日ヶ谷さん、昨日宵宮さんになにしたの?」
赤縁の眼鏡から藤色の瞳を覗かせ、穏やかな雰囲気を纏う学校一の文学少女・古峰 旭さん。そんな彼女がこのシーンとした教室を動かした。
「あっ、古峰さん。おはよう。どうしてみんなこんなに静かなの?」
「とぼけないで?私の質問に答えて欲しいの」
「宵宮さんになにしたのか…だよね?私なにもしてないんだけど…どうして?」
あの場にいたのは私と宵宮さんだけ。周りに学校の子は居なかったし誰も私と宵宮さんが何をしていたのかなんて知らないはずなのに、何故か目の前の彼女は知っているかのような口振りだった。
「昨日宵宮さんと日ヶ谷さん、日ヶ谷さんの家に行ったよね。家から出てきた後の宵宮さんがどうもやつれた様子だったから気になっちゃって」
これその時の宵宮さんの写真ね、とスマホで私の家から帰宅する宵宮さんの写真を私に見せてきて。
瞬間、心臓が大きく跳ねた。もし昨日のことがバレたらどうしよう…と焦る私とそんな危険な状態に置かれているにも関わらず、宵宮さんの苦しそうでツラそうな表情を見て興奮してしまっている私が存在していた。
「………確かに私は宵宮さんと私の家に行ったよ。けど宵宮さんに何もしてないよ」
私の視線は宵宮さんの写真にしか向いていなかった。あぁ……宵宮さん宵宮さん宵宮さん♡どうしてそんな可愛い顔をするの?私のことめちゃくちゃにしないでよ。またいじめたくなっちゃうじゃない。
「そう言うと思ったから、ちゃんと証拠持ってきたよ」
古峰さんはスマホを操作し始めた。証拠というが、あの場に居たのは私達二人だけ。盗撮していたのは帰宅中の宵宮さんだけ。あの瞬間を撮ってもいないのに証拠だなんて何を言っているのか。
『はっ…くるっ……しい……っ!』
「!???!」
スマホから流れてきたのは昨日のあのシーンの音声だった。
『苦しい?苦しいねぇ?でもでも続けるよ〜』
『んんっ!』
『ぁ…くっ……はっ、…ャ…だっ………死ん……じゃ、うっ!……ッかっ』
『はーい!一旦ストーップ』
ピッ
「どう?十分な証拠じゃないかな?」
「ぁ…違う…違う。これは古峰さんが作った音声でしょ。私がこんなことするわけないんだから。ね?みんな?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
無言。日ヶ谷陽乃を擁護しようとする者は誰一人として存在しなかった。
「な、なんで誰も何も言ってくれないの。みんなは古峰さんのことを信じるの?いつも私私だったのに?そんなの都合が良すぎるんじゃない……?」
あぁ……。ホントに大っ嫌い。いつもいつもいつも鬱陶しいくらいに私に群がってきてたのに。いつもいつもいつも騒がしいくらいに私のこと持ち上げてたくせに。こういう時だけ離れていくんだ。都合のいい人たちだなぁ。ホント。
「……。じゃあもういいよ。みんなそうやって私から離れていくならもう変に着飾ってる必要もないよね。」
「そうだよ。私は宵宮さんのこといじめて楽しんでた。」
これまで私はみんなの模範になろうと頑張ってきた。勉強もスポーツも一番になれるように努力してきたし、誰にでも分け隔てなく接するようにした。それにあまり気乗りしないことだって我慢して付き合った。
常に完璧でいるよう育てられてきた私だったから、学校生活も完璧にこなせるように頑張ってきたけど、もう限界だった。
みんなが私を突き放そうとするのなら、やっと肩の荷が降りる。
「宵宮さんってね、普段あまり表情を変えないけど、流石にお腹を殴ったり蹴ったりすると顔を歪めるの。もっと言ったら首を絞めたらほんとうに本当にホントウに苦しそうにするの。首から手を離したとき凄い咳き込んで必死に呼吸してて、流石の私も事態の深刻さに気付かされたけど今思うとやっぱりもう少しいじめてみたかったなって!!♡」
みんなが私を見放すのなら、これ以上仮面を被っている必要もない。そう判断してわざと誇張した発言にして積み上げてきたものを全部壊して。
「…いかれてるね」
「それ古峰さんが言えるんだ。宵宮さんのこと盗撮なんてしちゃって。あと多分盗聴器とか宵宮さんに付けてるよね。そっちも中々だと思うけどなぁ…」
イカれてる、なんて言われて思わず言い返してしまって。
宵宮さんに対する盗撮と盗聴。私のしたことがおかしなことであることはわかっているが、それを追及してくる彼女は自身がしたことが悪いことであると理解しているのだろうか
「そうだね…。確かに私もイカれてるかも。でもそれを先生に伝える?警察に突き出す?してもいいけど、私と日ヶ谷さん、どっちが悪者になるかは考えなくてもわかるよね」
なるほど。今彼女は私より上の立場にあることを誇示したいのだろう。そんなことをして何になるのかわからないが、とりあえず話を聞くことにした。
「そうだね。それで、古峰さんはどうしたいの?私を貶めたいの?」
「ううん。そんなことするつもりはないよ。ただ私は日ヶ谷さんに宵宮さんに近付くのをやめてほしいだけ」
「宵宮さん?」
私の印象通り、古峰さんが根っからの聖人で、クラスメイト思いな人だったならこの気遣いも素直に受け止められたと思う。
けど生憎彼女もそうじゃない。裏があるようにしか思えなかった。
「私ね、宵宮さんのことが大好きなんだ。クラスメイトとしてじゃなく、恋愛的な意味で。」
「…」
「だから宵宮さんには誰も近付いてほしくないと思ってるし、ましてや傷つけるような人にはもっと近付いて欲しくないの。だから…ね?お願い聞いてほしいの」
「……もし無理って言ったら?」
「うーーん…いじめのことを先生に伝えようかな」
「そんなことだったら別にいいよ。先生にどう思われるかなんてどうでも───」
『──────。』
「え…?」
古峰さんからのお願いを断った場合のペナルティが弱く、身構えていた自分をバカバカしく思っていたところで、彼女は私に耳打ちする。
「それが嫌だったらお願い聞いてほしいな??」
「………卑怯者。」
私は目の前のクラスメイトを睨みつけた。
どこで手に入れたのかわからない私の弱みを使って私を脅してきた彼女を私は許せなかった。
「うんうん。確かに私は卑怯者だね」
「でもいいの、宵宮さんのためだったら卑怯者になったっていいんだから」
「そんなことはどうでもいいんだけどね、私のお願い聞いてくれる?」
「………っ、わかった」
──────────────────
✻
「ってことがあってね。おかげで私は着飾らなくてもよくなったの」
「はぁ…」
放課後になるまでの彼女に比べて少し元気になっているように見えてホッとする。
いじめが発覚した経緯を聞いている中で気になる内容もチラホラ出てきたが、一旦なかったことにしよう。
「えっと、まず確認したいんだけど、これからは日ヶ谷さんがストレスを感じることが無くなったんだよね?」
「そういうことになるかな!いやぁやっと解放される〜!」
すごい清々しそうな笑顔を浮かべる日ヶ谷さん。でも、その笑顔の裏でなにかを抱えているような気がした。
「よかったね。あっ、でも古峰さんにわたしに近付いたらダメだって……」
「うん。でも大丈夫。私が宵宮さんと話すのはこれが最後だから」
「え?」
「元々私と宵宮さんって絡んでなかったし、ストレスを感じにくくなった今ならストレス発散する必要も無いしね。だから───────」
「昨日はほんとにごめんなさい。」
日ヶ谷さんはミルクティー色の髪を垂らしながら、深々と頭を下げた。
「私の身勝手で宵宮さんのこと痛みつけて。こんなの謝って許されることじゃないってわかってるの。でもちゃんと謝らせてほしいの。宵宮さんが許そうか許さないかは宵宮さんの自由だし、今度は私をいじめてくれたっていい」
「………。う、ん」
もう痛い目を見ることにならなくて済む。そんなの願ったり叶ったりであるはずだった。なのに、どこか素直に飲み込めない自分が居て、わけがわからなかった。
「それじゃあまた明日ね。」
話したいことを話し終えたのだろう日ヶ谷さんは、スクールバッグを肩に提げて教室を出ていった。
わたしは教室に一人、自分が抱いたこの理解不能な気持ちを噛み砕いていた。
「はぁぁぁぁあ。宵宮さん酷いなぁ。私と帰る約束を破ったと思ったらあんな人と密談だなんて。ふふっ、許せないなぁ……。」
百済るくあ【colorful】
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#神様×人間
虚喰
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54
四葉🏐🍀
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コメント
1件
第3話、読ませていただきました。 一転して立場が逆転した日ヶ谷さんと、守ろうとしてくれる古峰さん。でも古峰さんの行動、優しさだけじゃない何かを感じさせるのが不気味で……「宵宮さんのためなら卑怯者になってもいい」って台詞、背筋がひやりとしました。 日ヶ谷さんが最後に頭を下げて謝ったところ、彼女なりの歪んだ誠実さみたいなものが垣間見えた気がします。そして宵宮さんが素直に喜べないもどかしさ、すごくわかりました。 次のお話も気になります。