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一週間掛けて出来たのはたった十六文字の文書だった。これ程の情けなさは感じた事が無かった。私は何をしていたのだろうか。私は何が出来るのだろうか。そんな事を考えても意味が無い。今日は寝よう。そう呟きながら睡眠薬に手を伸ばす。目覚める事がないように。
「君は何故小説を書くんだ?」「趣味だよ」「じゃあ君は人殺しだね」「何故そう思う?」「君は言葉と言う凶器を使って人を殺しているのだよ」「違う。これはただの趣味だ。私は決して人殺しではない。」「君は人殺しだよ。卑怯な」「違う」男は図星をつかれ、声を荒らげた。「じゃあ、もう1回聞こう。君は何故小説を書くんだ?」沈黙が続いた。しばらくして、男が口を開く。「贖罪だよ」「そうかい。」男は満足気にし、微笑んだ。
目が覚めたら、体が重かった。食事をするにも味を感じない。青年特有の憂鬱期だろう。時計の方を見ると時刻は十八時を過ぎていた。私は十六時間以上寝ていたのである。睡眠薬を飲み過ぎたのかもしれない。私は久しぶりに家から出る事にした。季節は夏だった。空を見上げて見ると、入道雲が橙色に染まっていた。睡眠薬が切れていたが、今日は薬局に行かない事にした。
目の前には川があった。その川を渡ると初老の男がベンチに座って居た。男は此方に気付いたようで、私に向かって微笑んだ。そして。否、唯其れだけである。