テラーノベル
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夜風が気持ちいいな。
人がゴミのように思えてくる。
全ての構造物に邪魔されずに見る星空は綺麗だ。
こんな場所で死ねるなんて、俺は幸せだなぁ。
俺の人生は、幸せじゃなかったかもしれないけど。
最期にこんな綺麗な景色が見れたら、心残りなんて本当にない。
下にいる人達は、驚くかなぁ。
ま、死んでるから関係ないよね。
じゃあ早速、死ぬか。
俺は柵から手を離し、空中へ飛び出した。
重力へ従い、スピードを速めながら、どんどん下へ落ちる。
目を瞑り、ひろくんの姿を思い浮かべる。
…思えば、俺に優しくしてくれたのって、ひろくんだけだったな。
一緒に死んでくれる位愛してくれたのも、きっとひろくんだけ。
優しくて、自分を愛してくれて、かっこよくて。
そんな人、好きにならない訳ないでしょ?
「…ひろくん」
「愛してたよ」
「…うりさん」
「なんで、俺を置いて死んでるの?」
ピーッ、ピーッ
規則正しい電子音。
消毒の香りが充満する部屋。
痛む全身。
この全てが、俺の今を表している。
あぁ、このまま目を開けなければ、死んだことになるのかな。
「植物状態」ってことで、ずっと眠っていられるのかな。
誰にも、縛られないのかなぁ。
「…うりさん」
「起きてるんでしょ?」
「目、開けなよ」
ひろくんだ。
紛れもない、ひろくんの声。
なんだか飛び降りたときにもひろくんの声が聞こえた気がするけど…。
じゃあ、これも幻聴?
いや、幻聴にしてはリアルすぎるか…。
「…うりさーん?何考えてんの?」
「さっさと起きなって…」
多分、ひろくんは俺が起きてることを知っている。
一瞬でも動いたりしたっけ…?
まぁ…ひろくんからは逃げられそうにない。
動くかぁ…。
「…おはよう、うりさん!」
「…おはよ、ひろくん」
ひろくんは妙に元気だった。
いつもと変わらない笑顔に見えたけど、なんだか今日はその笑顔にぞくっとした。
「まぁ、まず…うりさんが無事で良かったよ」
近くにあった林檎を剥きながら、ひろくんは俺に話しかける。
「…でもさぁ」
ざくっ、と。
林檎にナイフを突き刺し、こちらへ微笑みかけた。
「俺、1人で死んでいいなんて言ってないよね?」
ひろくんは怒っていた。
笑っていたけれど、それは失笑だった。
仕方ないとはいえ、俺はひろくんと交わした約束を破ったのだから。
「…ご、めん…」
何故か、喉からは掠れた声しか出なかった。
そんな俺の声を聞いて、ひろくんは剥きかけの林檎を置き、俺のほうへ足を向ける。
俺の頬に手を当て、少し上へ向かせて視線を合わせる。
「…いいんだよ、うりさんは死んでないんだから」
「でも俺、1人で死ぬなんて許さない」
「何度でも助けて、蘇らせて…」
「……絶対、死ぬときは俺と一緒に殺してやる」
口から言葉が出なかった。
多分、今回俺を助けたのはひろくんだ。
ひろくんがすぐ救急車を呼んだから…。
………いや、
もしかして、俺と別れた時点で。
これから俺が死ぬと分かって、救急車を呼んでいたのかな。
だって、あのひろくんが。
今にも死にそうな俺を、1人にさせる訳ないじゃん。
それに気づいた瞬間。
俺の足が鉛のように重くなった。
俺はひろくんから離れられない。
ひろくんに、俺の全てが握られていて。
ひろくん次第で、俺は死ぬことも生きるこどできるのだと。
悟ってしまった。
「…うりさん?」
「…ひろくん、」
「分かってたの?……全部」
ひろくんは少し考えた後、
「…うりさんのこと、知らない訳ないでしょう?」
そう言った。
あぁ…やっぱ、全部握られてんだなぁ。
「これで分かったでしょ」
「うりさんは俺から逃げれないって」
「うりさんが林檎を食べたいって言ったら喜んで食べさせてあげるし」
「何か欲しいって言ったら喜んで買ってあげるし」
そこで言葉を区切って、ひろくんはさらに俺にぐっと近づいた。
「…死にたいって言ったら、喜んで一緒に死ぬよ」
「…じゃあ、」
喉から絞り出すように声を出し、
自分の頬に添えられている手を下に滑らせ、首を掴ませる。
「……殺してよ、?」
もう、どうしよもないじゃん。
ひろくんが生きて、俺が死ぬルートなんて、この世に存在しない…。
それだったら、
俺はその手で、ひろくんに殺してほしい。
最期のときまで…ひろくんという人間を味わいたい。
「…わかった」
首にかけられた手に、力が加わる。
どんどん力は強くなり、視界が狭まり、息が浅くなってきた。
「…俺もすぐ逝くから、ちゃんと待っててね?」
もう力も入らない身体で、俺は必死に笑顔を作った。
数分後。
病室に残ったのは、甲高い連続した電子音だけだった。
塩 🚰
6
しの
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コメント
4件
え、ヒロくんだけが…死ん…??わぁ……本当にchroさんの作風大好きです
いや…これ完全に共依存の領域じゃん。ひろくんの「一緒に死のう」の執念が、救急車呼んだ時点で計画済みだったってとこがゾッとするし、うりさんが首掴ませて「♡♡♡てよ」って懇願するシーン、めちゃくちゃ胸に来たわ。最後の電子音だけの静けさが、二人の結末を物語ってて余韻半端ない。完結お疲れ様、濃密だった🔥