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はわ……最高です!!文ストとはまた全然違った関係で面白いです!!! えぇ、まだ小説家じゃないんですよね?これだけ二次創作でこれだけ書けるのに………
「おい、津島、元気だったか?」
目の前に立つのは、眼鏡をつけただらしない友人の姿。
「坂口じゃないか。久しぶりだ。何年ぶりかな?」
「ふざけたことを。まだ半年も経っちゃいねぇ。」
「そうだったかな?」
坂口はふんと笑った。
「ふざけるのが生き甲斐みたいなやつだな。」
「今更気づくなんて遅いよ。友人なら、互いの裸も覚えちゃうくらいでいないと。」
おちょこに酒を注ぐ。
「はは! とんだ冗談を。」
「うん、冗談。……ところで、織田作は?」
「おいおい、まさか俺がいつも織田作といるとばかり思ってるのか? そりゃあ傑作。」
「ふうん。喧嘩でもした?」
「なんでそうなる。」
「んふふ、口から出ちゃっただけ。」
「津島は、つくづく変なやつだなあ。」
「君には言われたくないよ。君も変なやつだろうに。」
「はは。そりゃあ間違いねえ。」
坂口は津島の隣に座る。
そして酒を一杯あおって、天を仰いだ。
「……写真は好きかい、津島。」
坂口は落ち着いた声色で静かに言った。
「ああ、好きだよ。特に芥川先生の写真を真似て撮ると生きている心地がするんだ。」
「そりゃあ傑作だな、津島。なら、小説は好きかい?」
「バカにしているのかい? 好きでなきゃ、作家だなんて厄介なこと続けてないよ」
「そうだなあ。それもそうかぁ。」
「なんだい、坂口。今日はやけに狂ってるじゃないか」
「狂ってないと、やってらんないさ。特に、俺たちみたいな下衆な作家はな。」
坂口は津島の方をチラリと見て笑った。
「仕方ない。それが人間だ。」
津島も坂口をチラリと見て笑う。
「……愛されたくて必死になってる。それが人間さ。見返りがほしくてたまらない。それが人間さ。」
「どうしたんだい、今日はやけに饒舌だね。」
「酒さえあれば、饒舌にもなる」
大きな声で笑い合った。
楽しかった。
だけど、なぜだろう。
何気ない友人との会話のはずなのに、大切な友人なのに、顔がぼやけてくる。
悲しくなる。
なぜ?
ーそれは、お前が乾いているから、飢えているから。
「え?」
ー何一つ、満足に思えないんだろう。
「だ、誰……?」
そこに、坂口はいなかった。
その代わりに、薄汚れた骸骨のように細いみすぼらしい少年が目の前に座っていた。
ーかわいそうに。何をしても裏目に出る。努力をすればするほどむなしくなる。
「や、やめてくれよ……ほら、おもしろい話をしてやるからさ、えーっと、同級生の竹一のことなんだが……」
ー必死に、必死に取り繕って。必死に必死にいい自分を見せてる。
「あいつ、本当に何考えているのかわからなくて、いつもニヤニヤと笑っているばかりなんだ。そして……」
ー今のお前は実のお前ではない。本当のお前はもっと下衆で下品極まりない、ただぼんやりと生きているだけの価値のない男だ。
「僕のことを嘘っぱち呼ばわりするんだ。これが僕のいいところで、愉快なところだというのにね」
ー見破られた。見破られた。かわいそうにかわいそうに。自分のことを愛せない。かわいそうにかわいそうに。
「やめてくれ……」
ー人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。人間失格。……
「やめろよ……」
ー人間、失格。
「やめてくれって言ってるだろ!」
「つ、津島……?」
気がついたら、そこに骸骨の少年はいなかった。
坂口が心配そうに津島の顔を覗き込んでいたのだ。
「……すまない」
「疲れているじゃねえのか?」
「……そうかもしれない……」
何をやっても裏目に出る。
必死に必死にいい自分を見せてる。
下衆で下品極まりない、ただぼんやりと生きているだけの価値のない男だ。
自分のことを愛せない。
愛せない。
……そんなことはない。これはただの、幻聴だ。
「ところで、坂口。執筆の調子はどうだい?」
「津島がそんなことを聞くなんて。明日は槍でも降るんじゃないか?」
「降ったらどうする?」
「……津島はどうする?」
「……死んで、やろうかな」
「……誰のために?」