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最終話です!!
それでは
どうぞっ。
ーーー
気づけば、私は彼女のことばかり考えるようになっていた。
綺羅は無邪気で、いつも笑っていた。でも、時々、ふとした瞬間に寂しそうな顔をすることがあった。
たった一つの願いを決められなくて、私がずっと此処にいさせてるのがいけないのかななんて考えてしまう。
ある日、私は思い切って聞いてみた。
🧡「ねえ、…綺羅はいつまで此処にいられるの?」
すると、綺羅は少し困ったような顔をして言った。
💛『…、あと、あと少しだけ。』
🧡「え、…?」
💛『私ね、千個の願いを叶えたら、消えちゃうの。』
その言葉を聞いた瞬間、心臓がぎゅっと縮まるような感覚に襲われた。
🧡「それって、どういう____。」
💛『あと、一つだけ。』
💛『美咲の願いを叶えたら…私の役目は終わりなんだ。』
違う。そんなの、嫌だ。
それでも綺羅は私の目をしっかり見たまま儚げに微笑む。
💛『ねえ、美咲…。』
💛『君の願いは?』
その問いに、私は言葉を詰まらせた。
私の願い?
そんなの、決まってる。
ただ綺羅の目をしっかり見て、離さないように、言った。
🧡「、綺羅が、消えないでほしい。」
そんな私の願いも虚しく、綺羅は首を横に振った。
なんでも叶えてくれるんじゃなかったの、?
💛『それは、……叶えられないよ。』
ーーー
夜が深くなるほど、星は美しく瞬く。
けれど、私にとってその光はどこか悲しかった。あの日、子供の頃に聞いた2つの言い伝え。
それが、まさかこんな形で現実になるなんて。
🧡「、綺羅、本当に消えちゃうの……?」
💛『うん、私の役目は…誰かの願いを叶えることだから。』
🧡「でも、!!」
どこを探しても『星を紡ぐ魔女』の伝説は変わらないままだった。
千の願いを叶えた時、魔女は光となって消える。
それが、決められた運命だった。
🧡「そんなの、嫌だよ……っ、」
💛『美咲。』
優しく私の名前を呼ぶ声。
綺羅はそっと私の手を握った。
💛『私はね、今までたくさんの願いを叶えてきたの。』
🧡「、……。」
💛『大切な人が幸せになりますように、とか病気が治りますように、とか…どれも、すごく温かい願いばかりだったよ。』
そう語る彼女の瞳には、どこか懐かしむような光が宿っていた。
💛『そうじゃない願いもあったけどね。それでも、私が選んだ人は皆優しくて暖かい人だったの。』
💛『……だからね、後悔はないんだ。寧ろ、幸せだよ。』
そんなの、信じられない。
どうして、綺羅はそんな風に笑えるんだろう。
どうして、こんなに優しいのだろう。
きっと、彼女が私たち人間とは違う何億年もの時を過ごしてきたから。本当に星を、人々の願いを紡いで繋いで来たのだろう。
🧡「でも、…綺羅がいなくなるなんて、私は嫌だよ…っ、」
言った瞬間、胸が苦しくなった。
認めたくなかった。でも、でも……っ。
💛『美咲…もしかして……、』
💛『私に恋したの……?』
__ああ。
そうだった。
ずっとずっと自分の気持ちに蓋をしていたけど。
私は綺羅に恋をしてしまったんだ。
🧡「うん。きっと、そう、なんだよ…。」
その言葉を口にした瞬間、綺羅の表情が一瞬だけ曇る。
_魔女に恋をしてしまった者は、永遠にその願いを叶えられず、想いを伝えられない。
そういう伝説があったことを思い出した。
💛『そっ、かあ……』
💛『美咲。君が選べる最後の願いは、2つだけだよ。』
🧡「2つ、?」
綺羅は小さく頷き、そっと少しだけ距離をとった。
💛『1つは、私を普通の人間にする願い。』
💛『それを願えば、私は消えない。でも、この魔女としての記憶を失ってただの女の子になっちゃう。』
💛『もちろん、美咲と話すことはできるよ。ただ、ここで話したことは忘れちゃう。』
それは、私の知ってる綺羅じゃなくなる、ということ?
🧡「もう、1つは?」
💛『私をそのままの存在として送り出すこと。』
それはつまり、綺羅が消えてしまうことだった。
最後まで綺羅らしく居てくれる綺羅とお別れしてしまうか、もう私のことなど覚えていない少女綺羅と出会うか。
絶望的な2択を迫られる。
💛『君は、どっちを選ぶ?』
ーーー
選べるわけがなかった。
綺羅が消えてしまうのも嫌だ。
でも、綺羅が綺羅でなくなってしまうのも、…嫌だった。
どうして、こんな運命なんだろう。
どうして、こんなにも切ない選択しかないんだろう。
そう考えると涙が溢れた。
💛『ねえ、美咲…?』
綺羅はふわりと私の横に座って、じ、と見つめてくる。
💛『私は君に出会ってよかったよ。』
💛『もし、また何処かで出会えたらその時は__。』
綺羅の唇が、私の額にそっと触れた。
💛「今度こそ、君に恋するね。」
その瞬間。
綺羅の体が、淡い光に包まれていく。
🧡「綺羅……っ!!」
私は必死に手を伸ばす。
光が舞う。
星のように、夜空へと還っていく。
最後に、綺羅は私に微笑んだ。
💛『私の知ってる人間で、1番暖かい人だったよ……美咲。』
💛『美咲と過ごせて幸せだった。』
そう言い残して、綺羅は、夜空へと消えた。
ーーー
それから、どれくらい経ったのか分からない。
私は空を見上げていた。
そこには綺羅がいた場所に、一際輝く星が光っていた。
🧡「ねえ、綺羅。」
🧡「今度こそ、君に恋してもらえるように、私も頑張るよ。」
夜風に乗せてそっと囁く。
_夜空にはたくさんの願いがある。
そのどれもが、誰かが強く願ったもの。
そして、私の願いは____、
🧡「また、君に会えますように。」
私は、ずっとずっと夜空を見上げ続けた。
end…