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ボクの一生

5 - 『ぼくは、ぼくだ』

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2025年04月22日

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それから、ぼくはリハビリという名の試練に立ち向かうことになった。まだ小学3年生のぼくには、それはまるで終わらない坂道みたいに思えた。

右手も、右足も、動かすたびにうまくいかなくて、すぐに泣きたくなった。


いや、ほんとうに泣いていた。

泣き虫だったから。

「できない」「無理だ」「もうやりたくない」って、何度も心の中で叫んでいた。


だけど、不思議なことが起きた。

何十回、何百回と繰り返すうちに、少しずつ体が変わってきた。

足に、手に、力が入る感覚が戻ってきたのだ。


ある日、リハビリの先生が言った。


「今日は一人で立ってみようか」


こわかった。でも、立った。ほんの数秒。

けれどその時、ぼくの中で何かがパチンと音を立てて弾けた。

「動く」って、こんなにすごいことなんだ。

それまでは、歩くことも、物をつかむことも、当たり前だった。

でも今は違う。一歩が奇跡だ。指一本が希望だ。


涙が出た。

今度は悔しさじゃなくて、うれしさの涙だった。


そのとき、ぼくは思った。


「僕も、誰かのためになる仕事がしたい」


先生のように、誰かの背中を押せる人になりたい。

「できるよ」って言ってあげられる人に、ぼくもなりたい。


半年間、病院にいた。

その間、学校にも行けず、友達にも会えなかったけど、

ぼくは「歩く」という目標に向かって、毎日がんばった。


そしてついに、病院を出る日。

ぎこちないけれど、自分の足で歩いた。

エレベーターまでの廊下が、いつもよりまぶしく感じた。


学校に戻ると、みんなが笑って迎えてくれた。

「おかえり!」って。

それだけで、心の中がぽかぽかになった。


たしかに、ぼくは前みたいには動けない。

走るのも遅いし、右手で鉛筆を持つこともできない。

でも――


「ぼくは、ぼくでいい」


右半身が動かなくても、ぼくは生きてる。

笑うことも、話すことも、誰かを元気にすることもできる。


不自由はあるけれど、不幸じゃない。

ぼくはぼくらしく、この体と一緒に、生きていく。


そしていつか、あの日のぼくみたいに泣いている誰かに、そっと言ってあげたい。


**「大丈夫、君にもできるよ」**って。


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