「あああもう!すいません!俺が妹を見失ったせいで!」
「いや、俺が指導係としてちゃんとしてなかったのが悪い。とにかく、牢獄に入って探そう………あれは……?」
牢獄の一つの扉、オレンジ色の牢獄の道に座っていたのは、妖ではなかった。人間だ。
「おい、あんたプレーヤーか!」
「……、人間だがプレーヤーではない、亡霊だ」
「亡霊?」
「俺は元中国の匪賊のフー。死刑囚としてここに収監されたが、妖を喰い不老不死となったもの。なにか音がすると思えばくだらんゲームとはな…しかし丁度よい。俺が相手してやろう」
驚くほど白銀の髪に見える浅葱色の瞳に生気はない。しかし底しれぬ強さは感じる。
「安林くん、気をつけてよ…」
「はい!」
真白と澤地はメッシュの青年に苦戦していた。受験生の中でも秀才、螺名秀一。真白がガチャで引き当てたA・K47というモデルガンで応戦し、澤地が近距離を詰めて死神の鎌で撃ち合っているが、それでも螺名の異能力、マリオパペットが回避する。いやー回避させている。異能力を発動した瞬間、彼に糸があらわれ、後ろにその糸を掴み、操り始めた。つまり、彼の戦闘は全自動で行われる。まさに全自動殺戮機の二つ名が似合う男と言ってよいのだろう。
「俺がパペット…俺は殺戮に徹するのみ!」
螺名は自身の草履に仕込んでいた隠し刃で、澤地の左目を切り裂いた。
「ぐあっ…!」
「澤地さん!」
「あー、雑魚!」
すぐに澤地の下へ駆け寄ろうしとしたその瞬間ー螺名が重圧を出す。ここでいう重圧とは、緊張などの生ぬるいものではない。もっとー背筋の底の底。体の奥の奥から憎悪と恐怖が噴き出るようなー強者が出す重圧。
「俺…雑魚って……嫌いなんだよねぇ!」
パペットが輝き始めさらに螺名を操る糸が増える。異能力を二段階目へと覚醒させたのだ。この年齢でそれができるというのは、さすがの実力だろう。さらに螺名の動きが素早くなり、左足が人智を超えた速度で放たれる。しかし、真白も相応の実力は持っている。それをジャンプ一番で回避する。しかし、それでも螺名は右足を蹴り上げ、真白に激突する。
「かハッ!!」
絶体絶命、真白、澤地、両名共に戦闘不能となり、リタイア寸前。最後の一撃を螺名が食らわせようとした、その時。
カチャン。
はるか上空の檻の鍵が開き、人形が浮かび上がる。
「あーれ、まだ殺しきれてなかったか?おーい、そこのやつ!殺すから降りてこい!!」
すると、黒い影が消えた。
「あ?逃げたのかー」
ドオン!!
その瞬間、黒い影が螺名を背中から吹き飛ばし、隣の牢まで飛ばす。何と言う破壊力なのだろうか。真白が立ち上がる。
「あ、ありがとうございます…!」
「……勘違いするな、私はお前らの味方ではない。」
その男には、顔面に傷が入っており、赤いローブのような物を1枚纏っているだけだ。しかし、ただならぬ気配を纏っている。すると、大きな声をあげ、まだ煙の上がっている牢の方へと声を荒げる。
「我は元匪賊七大将 兼猛!!弱者をいたぶるその行為、悪と判断し、我が裁きを下してやる!」
匪賊七大将。昔、中国に名を轟かせた匪賊生まれの七人の将軍。(匪賊とは、中国の盗賊である)。
亡霊将軍 フー
裁きの将軍 兼猛
戦火の将軍 界雷
水略の将軍 萩
知略将軍 リーチェン
電将軍 鬼門
死の将軍 ウルキ
である。この七人の将軍は、匪賊をまとめており、これが匪賊時代である。そして、全員この島の何処かに不死の薬を飲まされ不死の終身刑で囚えられているー
島の南側、ジャングルの奥地。
そこにいたのは、黒色の鎧に目元にクマ、黒い長髪を持った匪賊七大将が一人。その時、プレーヤーらがジャングルの奥地に到達した。
「!おい、プレーヤーだ!」
「狩るか!」
「……、」
ザシュウウッ!!という音と共に2人の首が舞った。
「相手を…侮り、すぐに勝鬨を上げようとするその姿勢…実に愚か。」
「我が名死の将軍ウルキ!!我を倒したければ、必死の戦略を持つものよ!この辺境へと参れ!」
死の咆哮がジャングルへと響いた。








