テラーノベル
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数日が経ち、みことの体調はすっかり回復していた。
まだほんのりと寝起きの柔らかさを残した表情で、ふわふわと笑うみこと。
「……やっと元気になったね」
すちはその笑顔を目にした瞬間、胸の奥がじんと温かくなり、同時に堪えきれない愛おしさが込み上げる。
「うん、もう大丈夫。すちがずっとそばにいてくれたから」
みことは照れくさそうに、しかし真っ直ぐにそう言った。
その言葉に、すちは思わずみことを強く抱きしめる。
「……俺、ほんとにお前のこと愛しすぎてどうしようもない」
声が低く震えて、熱がこもる。
「え……すち?」
驚いたように目を瞬くみことに、すちは迷いなく唇を重ねた。
何度も、何度も。
離れてもすぐ求めるように、みことの柔らかな唇を奪い、甘やかす。
「すち、ん……っ」
息が乱れて頬を赤らめるみことの姿がまた愛おしくて、すちはさらに抱き寄せた。
「可愛い……。笑ってる顔も、照れてる顔も、甘えてくる顔も、全部好き。可愛すぎ…」
抑えきれずに吐き出すように告げる。
みことは真っ赤になりながらも、すちの胸に顔を埋め、小さな声で囁いた。
「……俺も。すちがそばにいてくれると、嬉しくて、安心する」
その言葉に、すちはみことを抱きしめる腕にさらに力を込めた。
手放せない、何があっても守りたい――そう強く心に刻みながら。
部屋には二人だけの穏やかなぬくもりと、抑えきれないほどの愛情が満ちていた。
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「じゃあ今日は……外、行こうか。元気になったお祝い」
「え、いいの?」
嬉しそうに目を輝かせるみことに、すちは小さく頷く。
「もちろん。食べたいものとか、行きたいとことかある?」
みことは少し考えて、にこりと笑った。
「すちと一緒なら、どこでもいい」
その無邪気な言葉に、すちは一瞬言葉を失い、みことを抱き寄せて頬に軽くキスを落とした。
「……ほんと可愛いな」
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ふたりが向かったのは、街の小さなカフェだった。
白を基調にした店内は、窓からやわらかな光が差し込み、落ち着いた雰囲気が漂っている。
「わぁ……おしゃれだね」
目をきらきらさせながら席につくみことに、すちは微笑んだ。
「食べやすいものがいいと思って。ここのスフレパンケーキ、すごく軽くて美味しいんだって」
注文を待つ間も、みことは隣に座るすちに自然と寄りかかる。
「ちょっとだけ…」
「……隣にいてくれると、落ち着く」
すちは穏やか声で答え、みことの指をそっと握った。
やがて運ばれてきたスフレパンケーキに、みことは目を丸くする。
「すごい!ふわふわ……!」
フォークで切るとしゅわりと溶け、口に入れた瞬間、思わず頬を緩ませた。
「おいしい……!」
無邪気に笑うみことを見つめながら、すちは胸がいっぱいになっていた。
「ねぇ、みこちゃん」
「ん?」
「ずっと元気でいてね。俺、ずっとみこちゃんの笑ってる顔を見てたい」
みことは一瞬驚いたように瞬きをしたあと、ふわっと笑って小さく頷いた。
「……俺も、すちと一緒に、ずっと笑ってたい」
テーブルの下で繋いだ手が、そっと強く握り返された。
___
カフェで甘い時間を過ごしたあと、ふたりはショッピングモールへ向かった。
「久しぶりにちゃんと買い物するなぁ……」
みことは並んだ洋服を手に取る。
「みこと、何か欲しいの?」
隣を歩くすちが問いかけると、みことはハンガーを二つ手に取り、首を傾げた。
「うーん……このニットと、このシャツ。どっちがいいかなぁ」
白のゆるめニットと、淡いブルーのシャツ。
どちらもみことの柔らかな雰囲気に似合っている。
「……いや、待てよ」
すちは腕を組み、じっとみことを見つめた。
「……両方似合う。どっちも着せたい」
「えっ、選んでくれないの?」
困ったように笑うみこと。
「無理。だって、白ニット着たら絶対可愛いし、シャツ着ても爽やかで可愛い。……どっちも欲しい」
みことは少し頬を赤らめ、肩をすくめた。
「そんなの、困る…」
「俺は困らない。……全部買うから」
真顔で言い切るすちに、みことは慌てて手を振った。
「ま、待って待って!そんな贅沢できないよ!」
「贅沢じゃない。みことが可愛いから欲しいだけ」
「……っ、そういうこと言うから……」
みことは耳まで赤くなり、恥ずかしそうに下を向いた。
すちはその様子に耐えられなくなり、自然とみことの頭をぽんぽんと撫でる。
「せめて今日は元気になった記念なんだから。俺に選ばせて?」
「……じゃあ、どっちかだけ」
しぶしぶ折れるみこと。
「うん。じゃあ……両方」
すちはすかさず笑顔で答えた。
「ちょっと!全然選んでないじゃん!」
みことの抗議もむなしく、すちはさっさとレジへ持っていってしまう。
その後もみことが靴やマフラーで悩むたび、すちは「どっちも可愛い」「むしろ全部似合う」と言い張り、みことは呆れ半分、照れ半分でついていくしかなかった。
買い物を終え、両手いっぱいに紙袋を抱えたすちが先を歩く。
袋の中には、みことが選んだはずの服や小物がぎっしり詰まっていた。
「……ねぇ、すち。やっぱり買いすぎだって」
みことが隣で苦笑する。
「買いすぎじゃない。全部必要だから」
すちはきっぱりとした声で返す。
「必要って……こんなに服あっても着きれないよ」
「いいんだよ。どれ着ても可愛いから」
さらりと言われて、みことは思わず足を止めそうになる。
「……ほんと、そういうの恥ずかしいんだけど」
口を尖らせつつも、頬はほんのり赤い。
その照れ隠しに、みことはそっとすちの腕にくっつく。
大きな荷物を抱えているから、自然と肩と肩が触れ合った。
「……みこと?」
横からのぬくもりに気づいたすちが目を細める。
「重いでしょ。俺も持つよ」
「いらない。俺はこれくらい平気だから」
すちは片腕を空けると、逆にみことの肩を抱き寄せた。
「え……」
「みこちゃんがこうやって寄ってきてくれるほうが、よっぽど力が出るね」
低く、真剣な声。
みことは胸の奥がじんわり熱くなるのを感じながら、言葉を失った。
そのまま数歩歩き、駐車場のエレベーター前で立ち止まる。
「……ほんと、溺愛だね」
小さく呟いたみことに、すちは迷わず笑みを浮かべた。
「当たり前。……俺はみことのこと、愛してるから」
言葉と同時に、みことの額に短くキスが落ちる。
駐車場の人通りも気にせず、すちは堂々とみことを抱き寄せていた。
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コメント
7件
続きが早く見たくなっていっぱい♡を押してしまいました✨️ yaeさんの、情景が浮かんでくる書き方が本当に大好きです🥰
初コメ失礼します‼️大学生編から一気見させていただきました!甘々な2人の関係がすごく刺さりました💭💞心情の表現の仕方がとても細かくて、語彙力があって羨ましいです✨️🫶Rの部分も音ではなくて、言葉で表現するのもいいなと思いました!!小説のテラーの作品は初めてなんですが、出会えて本当に良かったです❣これからの展開も楽しみにしています!! 長文失礼しました🙌🙏