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鷹槻れん

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篠原愛紀
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臣桜
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「ブリジットも、ナディエルも……セイレン医師から許可が出るまでは他言せぬように」
言って、ランディリックはリリアンナの肩へそっと手を置く。
「だが、このことを知る数少ない者として、リリーが辛そうにしていたら支えてやってほしい」
「かしこまりました」
ブリジットが静かに一礼する。
「命に代えましても、お守りいたします」
ナディエルも胸へ手を当て、力強く頷いた。
「……ランディ」
リリアンナが小さく名を呼ぶ。
ランディリックは優しく微笑み返した。
「僕も、キミの身体を第一に考える」
皆から柔らかな視線を向けられて、リリアンナはまだ現実味のないまま、自分の腹部へ触れ続ける。
そこに、本当に小さな命が宿っているのだろうか。
胸の奥がじんわりと熱くなり、自然と瞳が潤んでいく。
「ランディ……」
再度名を呼ぶと、ランディリックがリリアンナの前へもう一度ひざまずいた。
「リリー」
大きな手が、まだ何の膨らみもない腹部へ触れようとして、ほんの一瞬だけためらう。
壊れ物を扱うように、おそるおそる伸ばされたその手を、リリアンナがそっと両手で導いた。
重なった掌の温もりが、腹の上で熱を持つ。
「まだ、こんなに何も変わっていないのに……」
「そうだな」
ランディリックは目を細めた。
「それでも、ここに僕たちの子がいる」
その声は、誰よりも幸せそうだった。
セイレンはそんな二人を静かに見守ると、一歩下がって咳払いをひとつ。
「旦那様」
ランディリックは顔を上げる。
「申し上げました通り、まだごく初期にございます。どうか安静を第一になさってください」
「ああ」
部屋へ再び静けさが戻る。
リリアンナはなおも腹部へ手を添えたまま、小さく微笑んだ。
(この中に……)
ランディリックとの子が宿っている――。
その事実だけで、胸がいっぱいになる。
けれど、その喜びの中へ、不意に小さな影が差した。
(でも……)
ウールウォード家は?
自分は、まだ伯爵家当主のままだ。
この子が生まれたら、自分たちはどうなるのだろう……?
胸の奥をよぎった不安を、リリアンナは口に出来なかった。
隣にいるランディリックを困らせたくなかったからだ。
けれど――。
その一瞬だけ曇った表情を、ランディリックは見逃さなかった。
(……これは、もっと急がねばならんな)
胸の内で静かに呟く。
最近頻繁に届く書簡。
ここニンルシーラと、国境を隔てた隣国マーロケリー。そして、もう間もなく王となるアレクトが待つ王都エスパハレ。
雪鷹は、その三点を結んで絶えず空を行き来している。
すべては動き始めている。
あとは、自分が間に合わせるだけだった。
コメント
2件
ランディリックがリリーの不安を見逃すはずないよね(o´_`o)
**寺島あおい:** 読ませていただきました。リリアンナの妊娠——この温かくて、けれど少しだけ切ない空気感、すごく好きです。 特に、ランディリックが腹部に触れる前で一瞬ためらうその仕草に、彼の優しさと緊張が全部詰まっていて、思わず「ああ」と声が出ました。 そして「まだ何も変わっていないのに」というリリアンナの台詞——その現実感と、それでも確かな温もりを感じている描写が胸に響きます。 ランディリックがリリーの曇った表情を見逃さず「急がねば」と動き始めるラスト、次が気になります…! 素敵なエピソードをありがとうございます🌷