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ぽっぴあ
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気がつくと、またあの闇の中にいた。
光はない。
輪郭もない。
ただ、底の見えない黒が、どこまでも広がっている。
立っているはずなのに、地面の感覚が曖昧だ。
足元があるのかどうかすら、はっきりしない。
それでも、ここにいる。
―――また、ここか。
そう思った瞬間、耳の奥で何かが鳴った。
耳鳴りのようで、それとも少し違う。
意識を向けると、逃げるように遠ざかる。
けれど、無視しようとすると、今度は内側から滲み出てくる。
形を持たない音。
音になりきれない何かが、ゆっくりと繋がっていく。
⋯これは。
思い出したくないのに、思い出してしまう。
死者のメロディー。
名前をつけた瞬間、それは音楽として輪郭を持った。
歪で、不揃いで、どこにも辿り着かない旋律。
それなのに、どこか懐かしい。
耳ではなく、意識に直接触れてくるような音。
その中心に、光が落ちた。
細く、まっすぐに垂れてくる一筋の光。
闇を裂くでもなく、ただそこに”ある”だけの光。
自然と、そちらに目が向く。
その下に、影があった。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
数えきれないほどの人影が、円を描くように立っている。
黒いローブ。
袖のない奇妙な形。
布の質感は重く、光を吸い込むように鈍い。
人影はフードを深く被っていて、顔は見えない。
体格も高さもばらばらなのに、なぜか全体として均一に見える。
全員が、光を見ている。
一点の狂いもなく。
やがて、ローブの群れが動いた。
音に合わせて、右へ、左へ、わずかに揺れる。
ゆっくりと、同時に。
波のように、遅れもズレもなく。
その動きは単純なのに、どこか歪だ。
人の関節の動きにしては、滑らかすぎる。
ぎこちなさがない分、余計に不自然だった。
やがて一斉にしゃがみ込み、次の瞬間には立ち上がり、回る。
手だけが遅れて動き、首だけが不規則に傾く。
それでも全体は、完全に一致している。
怖い。
そう思うのに、目が離せない。
メロディーが、少しずつ強くなる。
音なのに、重さがある。
空気が押しつぶされていくような感覚。
輪が、ゆっくりと狭まっていく。
一歩ずつ。
確実に、こっちに近づいてくる。
距離が縮まるほど、音が濃くなる。
視界がわずかに歪む。
その瞬間。
ひとりが、止まった。
全体の流れから、ほんの少しだけ外れる。
他は動き続けているのに、そいつだけが静止している。
ゆっくりと、本当にゆっくりと。
そいつが、こっちを向いた。
フードの奥は見えないはずなのに、視線だけがはっきりと伝わってくる。
見られている。
心臓の音が、遅れて強くなる。
メロディーは止まらない。
そいつだけが、完全にこちらを見ている。
やがて、手が上がる。
黒い布に触れる。
布が、ゆっくりと持ち上がる。
ほんの少しずつ。
時間が引き延ばされたみたいに、遅い。
顎の輪郭、口元、鼻筋。
見覚えがある。
ありすぎるほど、ある。
――なんで。
思考が追いつかない。
フードが外れる。
顔が、露わになる。
「……っ」
息が詰まる。
理解した瞬間。
目が覚めた。
天井が、やけに白い。
息が荒い。
心臓の音が、まだ速い。
喉がひりつく。
「……は、」
手を握ると、少し震えていた。
夢だと分かっているのに、さっきの感覚だけが残っている。
「⋯今のは、」
隣では、まだらっだぁが寝息を立てている。
あのメロディーが、頭の奥でかすかに鳴った。
NEXT=♡1000
GWとか宿題しかないです。
塾しんどい。
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