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#いじめ
るあ🩵🦊🌙(病み期)
213
#近未来
鳳蓮荘
1,017
80
玖(キュウ)
343
石段を駆け上がる足音が、静かな山中に響いていた。
タッ、タッ、タッ――!
荒い息が白く空へ溶けていく。
「はぁ……はぁ……」
慈鬼が息を切らしながら、石段を見上げる。
「やっぱ若ぇのは早いなぁ……。年寄りにはキツいぞ……」
すると、公太が振り返った。
「大丈夫か?」
「……まぁ、なんとか」
公太は小さくため息をつく。
「仕方ねぇな。乗りな」
そう言って、その場にしゃがみ込む。
「ほれ」
「おぉ……すまんな」
慈鬼は公太の背中に乗る。
「よし!」
公太はそのまま再び石段を駆け上がっていく。
「ちょ、公太さん! 無理しないでくださいよ!」
一祟が後ろから声をかける。
「これくらい余裕だ!」
公太は笑いながら答えた。
やがて――。
三人は長い石段を登り切った。
そして。
「……!」
目の前に広がった光景に、三人は足を止める。
そこにあったのは――。
想像を遥かに超える巨大な山寺だった。
古びた瓦。
黒ずんだ柱。
苔に覆われた石壁。
長い年月を耐え抜いてきたことが、一目で分かる。
「……でかっ」
公太が思わず呟いた。
しかし――。
妙に静かだった。
風の音すらない。
鳥の声も聞こえない。
まるで、この場所だけ時間が止まっているかのようだった。
一祟が小さな声で呟く。
「……本当に、ここにあるんですかね」
「あぁ」
唯我は寺を見据えたまま答える。
「情報は確かだ」
公太は拳を握る。
「なら、探すしか――」
ヒュンッ!
突然、空気を裂く音が響いた。
「伏せろ!!」
唯我の叫び。
次の瞬間――。
キンッ!!
短刀が石畳に突き刺さった。
「……!」
さらに。
ヒュンッ!
キンッ!!
ヒュンッ!
キンッ!!
二本。
三本。
次々と刃が地面へ突き刺さる。
「上だ!!」
唯我が叫ぶ。
三人が一斉に屋根を見上げる。
屋根の影が――揺れた。
次の瞬間。
ヒュッ!
何かが空中へ飛び出す。
軽やかに宙を舞い、
くるりと一回転。
そして――。
トンッ。
音もなく地面へ着地した。
現れたのは、一人の細身の男。
ボサボサの髪。
ニヤついた口元。
そして――。
まるで遊びを楽しんでいるかのような目。
「へへ……」
男は楽しそうに笑った。
「よく避けたなァ」
公太が一歩前へ出る。
「なんだ、テメェは!」
男は自分の胸をトン、と叩いた。
「オイラか?」
「オイラは――カイタ」
「武器集めが趣味でなァ」
そう言うと、カイタは上着を脱ぎ捨てた。
ガチャ……。
ジャラ……。
ジャラジャラ……。
金属音が響く。
その瞬間。
三人の表情が変わった。
服の裏側には――。
ナイフ。
鎖。
クナイ。
手斧。
針。
ワイヤー。
様々な武器がびっしりと仕込まれていた。
まるで――。
人間武器庫。
「……うわ」
公太が思わず一歩引く。
カイタは楽しそうに笑った。
「武器は使ってナンボだろ?」
「眺めてるだけじゃ、つまんねぇんだよ」
一祟がすぐに慈鬼の前へ移動する。
「慈鬼さんは、後ろへ」
「あぁ」
慈鬼は頷き、ゆっくりと後退する。
一方、唯我はカイタを冷静に観察していた。
「……お前」
カイタが首を傾げる。
「何だ?」
「先ほど、この山へ来る途中に和装の男を見なかったか?」
「和装の男?」
カイタは少し考える。
「何の話だ?」
「……そうか」
唯我はそれ以上聞かなかった。
「説明する義理はない」
「へへ……」
カイタの口角が上がる。
「ま、いいや」
そして――。
「鬼哭丸は、オイラがもらう」
三人の間に緊張が走る。
「邪魔するなら――」
カイタが指を鳴らした。
パチンッ。
すると。
ガチャ……。
ジャラ……。
全身に仕込まれた武器が、一斉に震え始める。
「少し痛い目、見てもらうぜ?」
公太が拳を握る。
「断るって言ったら?」
一瞬。
沈黙が訪れた。
そして――。
カイタの目が細くなる。
「そりゃあ……」
ニヤッ。
「全力で遊ぶしかねぇなァ」
ガチャッ!
次の瞬間――。
ドドドドドドドドッ!!
無数の武器が、一斉に放たれた。
「散れ!!」
唯我の叫びと同時に、三人が左右へ飛び退く。
ヒュンッ!
ヒュンッ!
ヒュンッ!
無数の刃が空を駆け抜ける。
ガキンッ!
石畳に突き刺さる。
バチィッ!
刃と刃がぶつかり、火花が散る。
「なんだコイツ……!」
公太が驚く。
「武器の嵐……!」
一祟も飛んできた刃を避けながら叫ぶ。
唯我は龍焉刀の柄へ手を添えた。
「……かなりの手練れだ」
カイタは楽しそうに笑っている。
「いいねぇ……!」
「その動き……最高だ!」
三人は自然と互いの背中を合わせる。
誰も指示を出していない。
それでも――。
完璧な陣形が完成した。
公太が拳を鳴らす。
「面白ぇ……」
一祟は静かに拳を握る。
「……本気で行きます」
唯我は龍焉刀をゆっくりと抜く。
ギィン――。
刀身が光を反射する。
「……速攻で終わらせる」
カイタは三人を見つめる。
そして――。
嬉しそうに笑った。
「いい目だ」
「最高だよ、お前ら」
カイタの周囲で、紫色の気配がわずかに揺らめく。
「さぁ――」
カイタは腰を低く落とした。
「狩りの時間だ」
その瞬間――。
山寺の静寂が、完全に消えた。
公太たちと謎の刺客・カイタ。
鬼哭丸を巡る戦いの火蓋が――。
今、切って落とされた。
コメント
1件
第98話、読み終えました。新たに現れたカイタ、全身武器庫みたいなスタイルがもうインパクト大でしたね…! 公太さんが慈鬼さんをおんぶして石段を駆け上がるシーン、仲間想いな一面がじんわり来ました。それでいて、ラストの「狩りの時間だ」というカイタの台詞で一気に空気が変わるところ、ゾクッとしました。三人の無言の連携も自然で、たけっちさんのバトル描写の上手さが光ってます。次が気になります!