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「ご機嫌麗しゅう、聖女様。会えて光栄でございます」
【お高くとまって、気に食わないわ】
私の目の前でシンクレア婦人がお辞儀する。
彼女の背後で、シンクレア婦人と全く同じドレスを着た、黒い影がお辞儀する。
私は生まれつき、目を凝らすと、その人の背後に黒い影が見ることができた。耳を澄ますと、影が話す声も聞こえる。
影は顔も手足も真っ黒で、顔のパーツを判別できないが、不思議と舌と口の中のピンク色だけははっきり見える。
「そのネックレス、とてもお似合いですよ。皆さんが愛用してるブランドですわ」
【二年前の流行品じゃない。型落ち品しか買ってもらえないのね。いい気味!】
「皇子殿下もお喜びになるでしょう」
【殿下はあなたの妹と浮気してるわ。ざまあみなさい】
黒い影もシンクレア婦人もまったく同じ所作で頬に手を当てた。 影はいつも、その人の動きを完全にトレースする。
人と影で差が出るのは、言葉だけだ。
経験則で知っている。
影が話す内容は、その人の本心。
「おや、連れがきてしまったみたい、失礼するわ」
【冷たい目をした生意気な女。私を見下してるに違いないわ】
ある意味、シンクレア婦人は間違ってないと思う。
敬意をもって彼女に接してあげられたかと言えば、私も少し自信がない。