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「……っ!」
視界を覆う土煙の先へ目を凝らす。 そこにいたのは、地面をどろりと這い回る異形の魔物。
そして――。 そのおぞましい怪物の傍らで、純白の法衣をなびかせ、冷酷な笑みを浮かべて佇む女。
「……シェリー?」
あんなに慈愛に満ちていたはずの「聖女」の顔が、今は見たこともないほど醜悪に歪んでいる。
その姿を目にしたとたん、私の脳内にゲームの「裏設定」が蘇った。
『生贄を捧げ、魔物を操る禁忌の血族。その名は、黒魔法師。 帝国の進軍により滅ぼされたはずの一族の末裔は、闇に潜み、復讐を誓う――』
「あなた……聖女のふりをして、その正体は黒魔法師の末裔だったのね」
私の言葉に、シェリーは可愛らしく小首を傾げ、クスクスと笑った。
「えへへっ、大正解ですぅ! そう、私が呪いを『えいっ!』て振りまいてぇ、貧民病院で『救いの天使』を演じてあげてるのぉ。ちょっぴり魔法をかけて『痛いの痛いの、飛んでいけー!』ってしてあげればぁ、バカな民衆は私を神様みたいに拝んで、カイル殿下だって私の慈悲深さにメロメロになっちゃうでしょぉ?」
シェリーは頬を膨らませ、私を睨みつける。
「……それなのにぃ! 最近の殿下、ちっとも私と遊んでくれないんですぅ! あんた、殿下に何をしたのよぉ!? 政略結婚の仮面夫婦だったはずでしょぉ!?」
彼女がどす黒い杖を振り上げると、背後の魔物が耳を裂くような咆哮を上げた。
「公爵が言っていた通りの『役立たず』のくせに……私のキラキラ計画を邪魔する悪い子には、お仕置きですよぉ。あんたなんか魔物のエサになっちゃえ!」
飢えた魔物が、鋭い爪を剥き出しにして私に躍りかかる。 絶体絶命の、その時――。
#溺愛
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