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#溺愛
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ガキィィィィィィィン!!
「……っ!?」
身を切るような衝撃を覚悟し、固く閉じていた瞼を開く。
視界に飛び込んできたのは――巨大な銀狼の幻影を背に立つ、白銀の剣を掲げたカイル殿下の姿だった。一瞬、閃光が走る。
魔物は両断され、黒い霧となり跡形もなく消え失せた。
「ギルバート! その女を逃がすな! 騎士団、周囲を索敵だ。魔物を一匹残らず掃討しろ!」
「御意!」
ギルバートが放った赤い魔力の鎖がシェリーを絡め取る。
「なっ、離してぇ! 殿下、これは何かの間違いですぅ!」
喚き散らすシェリーを一瞥で切り捨てると、殿下はすぐさま私の方へ駆け寄った。
強く抱き寄せられたその腕は、かすかに震えている。
「ソフィア、怪我はないか! ……くそ、間に合わなかったらどうするつもりだったのだ……っ!」
「殿下、どうしてここが……? それに、シェリーが黒魔法師だと……?」
私の問いに、殿下は私を抱きしめたまま、言葉を続けた。
「……贈った懐中時計に、万が一を考えて追跡魔法を仕込んでおいたのだ。お前の気配が皇宮から消えたと知った時は……心臓が、本当に止まるかと思ったぞ……っ!」
抱きしめる力が、さらに強まる。
「いいか、もう二度と、俺の前からいなくなるな! 許可なく離れることは、絶対に許さん……!」
彼の熱い体温が、服越しに伝わってくる。必死に命令口調で虚勢を張っているけれど、その声は今にも泣き出しそうなほど震えていた。不器用で、痛いほど真っ直ぐな、彼なりの想いが伝わってくる気がした。私は彼の背中に手を回し、その震えを鎮めるように強く抱き返した。