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扉が開く。



隙間からキンと冷たい空気がイギリスの頬を撫でる。



倒れたままのイギリスの目が黒い革靴を捉えた。



(っ誰だ……!!)



そのまま、一歩、部屋へ入り込んでくる。



見るからに男であろう、その人影は、作業着を身に纏っていた。



こちらからはよく顔は見えないものの、ランプに照らされて不気味な影を作っている。



男はイギリスに一瞥もくれずにズンズンと部屋の片隅へと向かった。



無造作に木製の桶に手を伸ばす。次の瞬間、



バシャッッ



「は……」



突然の暴力的な水の冷たさに身が怯んだ。



髪からポタポタと垂れた水が床にシミを広げていく。



ガコンと男が桶を投げ捨て、溢れた残りの水が床を染める。



濡れて肌に張り付いた衣類が、体に重くのしかかった。



いきなり、男はしゃがみ込み、イギリスの胸元に掴みかかった。



ぐいと床から上半身だけ持ち上がる。



(うっっっ、苦しい)



そんなイギリスに構わず、男は目線を合わせる。



その時初めてイギリスは男の顔を捉えることができた。



(若い…!)



イギリスが想像していたよりも遥かに若かった。



骨格は大人びているが、顔立ちの節々に幼さを残している。

ただ、対照的に目はギョロつき、どこか虚である。



千ヤードの凝視。

イギリスはそう直感した。



戦場の恐怖によってPTSDとなり、感情が麻痺した兵士が持つ特有の、うつろで焦点の定まらない眼差しだ。



(まだ若い青年が。かわいそうに)



この状況を、どこか他人事のように捉えている自分に気づく。



男は青白く、まるで死人のように生気がない。



口が開き、やや訛りのある英語でイギリスに言い放った。





「お前をこれから地獄の底に連れて行ってやる」


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