性行為なんてものは、単なる感情の誤魔化しに過ぎない。
体を重ね、茹だるような暑さに溺れ、ねっとりと感じる人の体温を感じて、ただ獣のように本能のままに快楽を感じる。
ただそれだけの行為に過ぎない。
「男は篠田が初めてだけど、めっちゃ気持ちよかった」
「……それはよかった」
「また誘ったらやってくれるか?」
「……いいよ」
ドサ、と荒々しく呼吸をする男が彼に覆い被さる。
「……ねえ、もう一回しない? 興奮してきた」
「……ん、いいよ」
なんの慣らしもなしに、ぐぐぐと異物が混入する。
先程まで行為に及んでいたとしても、やはり痛かった。
「キツイね、あんだけしたのに」
「……うん」
入れて出してを繰り返されて、ついつい頭がポーッとしてくる。
心地良いところに当たって、気分がふわふわしてくる。
その分だけ罪悪感が生じるとわかっていながら、その男の背中に手を回すのだ。
行為をしている時は楽でいられる。
快楽にさえ溺れていればいいだけだから、あの人のことを忘れられる。
あの人の顔が熱でぼやけて見えなくなるから、心地良い。
だから、相性が良いと腰を振ってくる男、女が大嫌いだ。
好きでもない、興味もない。 そんな関係のくせに。
ただ、体の関係を持っているだけで、心まで繋がってるなんて、勘違いにも甚だしい。
互いに互いの溜まった欲を吐き出しているだけ。
そう思っているくせに、一人の人をそういう目で見ている自分が、一番嫌い。