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収録の合間の楽屋。拓也は鏡の前で衣装をチェックし、他のメンバーもスマホをいじったり仮眠したりと、それぞれ自由に過ごしていた。
俺は喉の渇きに耐えきれず、自分のパイプ椅子の足元に置いてあったコーヒーに手を伸ばす。
「……あー、生き返る」
蓋を開けて、一気に一口。
ガツンとした苦味が喉を通り抜ける。
(……拓也のやつ、今日は随分濃いな)
隣の席の拓也が飲んでいるものだと疑わず、俺はそのままもう一口、喉を鳴らして飲んだ。
「あ、勇馬。そのコーヒー、誰の?」
戻ってきた拓也が、俺の手元を指さして不思議そうな顔をした。
「は? お前のじゃねーの? そこに置いてあったから、俺様が飲んであげた」
「え、俺のじゃないよ? 俺、今日はカフェラテだし、ほら、あっちに置いてある」
拓也が指さした先には、確かに別のカップが。
じゃあ、今、俺が口をつけたこれは……?
「……あ、勇馬。それ、俺のだ」
ソファで台本を読んでいた愁斗が、不意にこちらを振り返った。
その瞬間、俺の脳内はパニックで真っ白になる。
「……っ、……愁斗の……?」
「うん。ごめんそこ置いちゃって。俺、それさっきまで飲んでたやつだけど、大丈夫?」
大丈夫なわけがない。
あいつが、さっきまで口をつけていた場所に、今、俺が。
しかも一口どころか、二口もしっかり飲んでしまった。
楽屋の騒がしい声が急に遠のいて、自分の心臓の音だけが、耳の奥でドクドクと暴れ出す。
「っ、……ごめん!! まじで拓也のだと思ってて……!! 」
慌てて謝る俺をよそに、愁斗は「いいよ」と笑って、俺の手からカップを回収した。
そのまま、俺が口をつけた場所も気にせず喉を鳴らす愁斗を見て、俺は思わず息を呑む。
(……待て、落ち着け。何をそんなに動揺してんだ、俺は)
本来、うちのグループで飲み物の回し飲みなんて珍しくもなんともない。
ダンスレッスンの合間に誰かの水を奪い合うこともあるし、拓也の食べかけのパンを「一口くれ」と奪うことだって日常茶飯事だ。
メンバー同士、家族みたいなもんだ。間接キスなんて言葉を意識する奴なんて、この楽屋には一人もいないはずなのに。
「ん? 何? ……間接キス、気にしてる?」
愁斗が、俺にしか聞こえないような小さな声で囁きながら、少しだけ目を細めて笑った。
「……っ、気にしてねーよ!! 早く飲めよ、それ!!」
俺はたまらず、乱暴に椅子を引いて座り直した。
他のメンバーにはバレないように、でも、自分の中で暴走するこの「特別」な感情を必死に抑え込む。
ただの飲み回しだ。ただのコーヒーだ。
そう自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、口の中に残った苦みが、甘く切ない熱に変わっていくのを感じていた。