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🍅😻
🍅さんが😻さんをくすぐる話です。
楽屋のソファで無防備にスマホを見ながら寝転がっている勇馬を見ると、どうしても構いたくなる。
「親友」という特権を使えば、こうして当たり前のように隣に座って、その体に触れることができるから。
「ねー、勇馬。何見てんのー」
「……は? やめろよ……うわっ!?」
拒絶する声すら心地よくて、つい指先に力がこもる。
身をよじる勇馬の体温が指先に伝わるたび、胸の奥がチリチリと焼けるような感覚。
俺は、あいつの笑い声を聞きながら、必死に「これはただのじゃれ合いだ」と自分に言い聞かせていた。
「ははっ! まじ、やめ……っ、愁斗、しつこい!!」
逃げようとして跳ねた勇馬の腰を、逃がさないように右手で強く抑え込んだ。
その指先が、あいつの脇腹の少し下、柔らかい場所に食い込んだ、その瞬間。
「……あ、……んぅ……っ」
鼓膜を揺らしたのは、さっきまでの笑い声とは全く違う、ひどく甘くて、生々しい音。
熱を含んで掠れた、切ない吐息のような声。
ドクン、と心臓が跳ね上がった。
……今の、何?
脳内が真っ白になり、思考が完全に停止する。
掴んでいた腰の感触が、急に熱を帯びて、俺の指をじりじりと焼いていく。
指先が固まって動かない俺を見て、勇馬がケラケラと笑いながら顔を上げた。
「あー、今の変な声出たわ! はずっ。まじでお前のくすぐり方エグいわ」
そう言って笑う勇馬は俺に擽られて疲れたのか、少し息があがっている。
あいつは、自分が今どんな声を出したのか、それが俺の理性をどれだけ無残に破壊したのか、一ミリも気づいていない。
「ん? 愁斗、どした? 」
勇馬の呑気な声が聞こえる。
直視できない。無理。
あんな可愛い声聞かされた直後に、こんな無防備な顔で見つめられたら、俺の理性が蒸発してしまう。
俺たちは親友だ。メンバーだ。
そんなこと百も承知だけど、今この瞬間だけは、勇馬のことが「ただの友達」の枠に収まりきらないくらい、愛おしくてたまらなくなってしまった。
「……っ、あー……、いや、……」
言葉が出ない。視線が泳ぐ。
完全に、勇馬の可愛さに完敗した。
「……愁斗? なんだよ、急に黙り込んで。俺の声、そんなに変だったか?」
勇馬が少し不安そうに、首を傾げて俺の顔を覗き込んでくる。
そんな無防備な顔、今は一番見ちゃいけないのに。
「……変っていうか、……その、……」
喉の奥がカラカラに乾いて、うまく声が出ない。
いつもなら「変な声ー!」「今の録音したかったわー」なんて軽口を叩いて笑い飛ばせるはずなのに、今はその選択肢が脳内のどこを探しても見当たらない。
「……可愛かった」
「…………は?」
気づいた時には、口が勝手に動いていた。
勇馬の動きが、ピタリと止まる。
勇馬は唖然とした表情のまま、数秒固まっていた。
……やばい。今の、絶対に言っちゃいけないやつだった。
俺は自分の失言の重さに気づいて、心臓が胃のあたりまで落ちていくような感覚に陥る。
(頼むからキモいって言って笑ってくれ!!そしたら冗談に変えられるから、、!!)
俺の願いも虚しく、あいつは俺の顔を見ようとせず、視線を斜め下の床に向けたまま、じっとしている。
あいつの耳たぶが、目に見えてじわじわと真っ赤に染まっていくのが分かった。
顔を上げないから表情は見えないけれど、握りしめられた膝の上の拳が、小さく震えている。
「……勇馬?」
恐る恐る声をかけると、勇馬はビクリと肩を跳ねさせた。
でも、怒鳴るわけでも、茶化すわけでもない。
あいつは蚊の鳴くような、掠れた声でボソッと呟いた。
「…………、お前……、何言ってんの」
「え、……いや、……」
「……何言ってんのか、……わかんねぇんだけど」
勇馬はそのまま、自分の顔を両手で覆ってしまった。
指の隙間から見える頬が、リンゴみたいに赤くなっている。
あいつが静かになればなるほど、俺の言った「可愛い」という言葉の熱が、この狭い空間にどんどん充満していく。
「……勇馬。……今の、ごめん。ちょっと、口が滑ったっていうか、……」
「……黙れよ」
勇馬の声が、熱っぽく震えている。
あいつは顔を覆ったまま、震える声で続けた。
「……黙れ、バカ。……お前のせいで、……っ……変な感じになんだろ……」
あいつの「変な感じ」という言葉に、俺の理性も限界を迎えた。
静かに、でも確実に、二人の間の空気が書き換えられていく。
いつも通りの「親友」の会話に戻ろうとしても、もう言葉が出てこない。
勇馬はそのまま、顔を上げたと思ったら、一度も俺と目を合わせることなく、俯いたまま無言で楽屋を飛び出していった。
バタン、と静かに閉まったドアの音。
残された俺は、自分の顔を両手で覆って、ソファに崩れ落ちた。
「……っ、……笑ってくれよ、まじで……。あんなの、……余計忘れらんなくなるじゃん……」
静かすぎる楽屋で、俺の制御不能になった心臓の音だけがうるさいほど響き続けていた。