俺がレインディナーズで大勝ちした翌日、市場で買い物をしていると、突然海賊たちが暴れているという話を聞いた。海賊ってホント野蛮だよな。俺は巻き込まれたくないのでさっさとその場を離れる。さっさと離れずに面倒になった前科があるからな。
「おいテメェ!!」
はい絶対俺~~なぜなら周りに人がいないから~~!!!!! 振り返るとガラの悪い男たちがたくさんいた。めんどくせぇ~~!!!
男の一人が殴りかかってくる。しかし、俺はそれをかわして相手の顎を蹴り上げた。男は倒れ込む。残りの男たちは武器を手にして襲ってきたが、俺は刀を抜いて全員を斬り伏せる。安心しろ、峰打ちだ…ってやつだ。流石にこんなところで命の取り合いはしない。倒れた男の懐を探ると、金貨の入った袋が出てきたので、中身を少しだけ頂戴しておく。外道だって?あれだよ、迷惑料的なやつだよ。
なんてことをしていると奥からわらわらと恐らく今倒した男たちの仲間がやってきた。俺は逃げようとするも、囲まれてしまう。
「も~…………」
俺はため息を吐いて刀を構えたのだが、突如ざらりとした砂嵐のようなものが現れたかと思うと、次の瞬間には俺を取り囲んでいた海賊たちは吹き飛ばされていた。
そして現れたのはクロコダイルだった。
「オヒョァ…」
変な声出た。
俺は慌ててクロコダイルに頭を下げる。するとクロコダイルはあのフックで俺の顎をくいっと持ち上げてきた。
「やはりその刀は飾りじゃなかったか」
そう言ってニヤリと笑う。強いこと、伏せてた方が良かったのかなぁ……。
そんなことを思ったところで後の祭り。クロコダイルはそのまま歩き出す。ただそのまま去っていくだけかと思ったのだが、数歩歩いてから彼は振り向き、顎をクイっと動かしながら言った。
――ついてこい。
俺って定期的に拒否権無くなるよなぁ。今回も素直についていくことにしよう。
連れて行かれたのは昨日と同じ個室だった。クロコダイルは相変わらず葉巻を吸いながらソファに座る。俺が対面に座ろうとすると、またフックで俺をすくうようにして引き寄せた。
これ慣れねぇ~……! なんかぞわぞわするんだよな……! だってこれめっちゃ鋭利なやつじゃん、一歩間違えれば引き裂かれるじゃん!? 俺は大人しくクロコダイルの隣に腰掛ける。
「ジェイデン、俺と組まねェか?」
突然クロコダイルから告げられた言葉に、俺は首を傾げる。
「えっと、それはどういう意味で……」
俺の言葉にクロコダイルは小さく笑みを浮かべると、葉巻の煙を吐き出しながら答える。
「言葉通りの意味だ。俺の部下になれと言っている」
……マジで言ってる?
マ ジ で 言 っ て る !!??
俺は思わず目を見開く。なぜ……勧誘をした……?まだ会って2日ですよね…?????
「あの…拒否権とかって……」
言葉を絞り出すと、ざら…と、砂の感触が俺の頬を撫でた。ないんですねわかります。
だが勧誘が急すぎるぞ……。俺はクロコダイルの意図が読めず、困惑する。
俺が返答できずにいると、クロコダイルは俺の顔に手を近づけてくる。俺は反射的にビクッとして身構えてしまった。しかし、彼の手は優しく俺の前髪を掻き上げる。
「……?」
俺はキョトンとする。クロコダイルの行動の真意が全く分からん。俺の反応を見たクロコダイルは小さく笑みを浮かべると、俺にこう続けた。
「クハハ、お前本当に面白い奴だな。普通なら怯えるところだろう」
「…案外あなたの手が優しいので、そんなに怖くないです」
俺の言葉に、今度は愉快そうな表情を見せる。
愉快そうなのはいいが……だがずっとバロックワークスにいるわけにもいくまい。俺は海賊とか犯罪者にはなりたくないと何度言ったら……。
イチかバチかで言ってみるか。
「……3年間だけ、なら」
指を3本立て、そう答えた。原作が始まるまで、ルフィが海に出るまではあと3年。その3年間だけ、俺はこの人の傍にいようかな。
「それと、3年後に俺をローグタウンに連れて行くって約束してください」
「……クハハハ! 随分注文が多いな。だが、良いぜ。約束しよう」
クロコダイルは俺の頭を撫でながら言う。
この日から俺は期限付きのバロックワークス社員となったのだ。