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暴君社長と私のほろ苦・蜜恋同棲

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暴君社長と私のほろ苦・蜜恋同棲

13 - 深夜の部屋に霊が出る? 三話

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2024年11月30日

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「そう? やっぱりそう見えるのね、樹生たつき様に相応しい女は私だと。今の言葉を聞きましたか、樹生様!」


 いや、全然そういう意味じゃないんです。ある意味二人はお似合いの変人ぶりだとは思いましたけどね。だけど嬉々とした女性とは逆に、白極はくごくさんはあからさまに渋面を作ってみせる。うっわ、せっかくの美形が台無しですよ白極さん。


「人類が滅びかけても遥香はるかとはごめんだな、だいたい永美ながみはどうした? どうせここに忍び込むのにアイツから鍵を奪い取って来たんだろうが」

遥翔はるとなんか役に立つわけないじゃないですか、あんな頼りない兄貴に預けてる樹生様も悪いんですよ?」


 いま、なんて……? この女性があの温厚そうな永美さんと血の繫がりがある? ちょっと信じられない気持ちになるけれど、確かに顔は永美さんに似てるかもしれない。


「……ったく、永美も最初から遥香はるかを止める気なんて無いんだろうな。本当に兄妹そろって俺の指示は無視しやがる」

「私たちの雇い主は、樹生様のお父様なので。どんな人間が貴方の傍にいるのかを確認する事もお仕事なんですよ」


 つまり……遥香さんというこの女性も永美さんと同じように、白極さんの実家のお父さんから指示されここにいるという事?

てっきりお手伝いのような存在かと思っていたが、この人達ってもしかして白極さんの監視役だったりするのかもしれない。


永美ながみはそうかもしれないが、遥香はるかの場合はほとんど趣味みたいなものだろう? ここに忍び込む度、俺の私物までコッソリ盗んでいきやがって」

「嫌だわ樹生たつき様。愛する人の持ち物を手に入れたい、そんな純粋な乙女心によるものですよ」


 いや、それは純粋と言っていいのでしょうかね? 乙女心で盗難を正当化する遥香さんにちょっとついて行けそうにない。

 あの温厚そうな永美さんとは正反対の自分勝手な思考の持ち主だという事は理解出来たけど。


「言動がストーカより酷い遥香を、どうしてあのクソ親父は俺の傍から離さないんだか……」


 頭が痛いと言わんばかりに白極はくごくさんは手のひらで顔の半分を覆ってみせる。私や永美さんには暴君な白極さんでも、この遥香さんだけは少し苦手のようで。

 もしかしたら遥香さんを味方に付ければ、楽しい事になるかも? なんて思ったけれど……


「私ってば、お父様から娘のように可愛がってもらってますから。未来の旦那様の両親に気に入られてるんです、樹生様も安心でしょ?」

「……うわあ」


 面倒だから静観しているつもりだったが、あまりにもぶっ飛んだ遥香さんの発言に白極さんが少しだけ気の毒になる。そんな気持ちのまま白極さんを見ると……


「そんな憐みの目を向けるな、凪弦なつる。奴隷のお前にそうされるといつもの倍以上ムカつく」


 ああ、十分余裕がありそうですね。奴隷の私なんかが要らぬ心配をしてすみませんでした。


「そう言うならばさっさと二人でこの部屋から出て行ってくださいよ? 深夜にこんな事に巻き込まれただけでも十分迷惑なのに、今度は二人の変な会話まで聞かされてるんです」

「変なのは遥香はるかの頭の中だけだ、俺をコイツと一緒にするんじゃねえよ」


 白極はくごくさんは思い切り嫌そうな顔で、嬉しそうに近付こうとする遥香さんを手で追い払いながらそう言う。いや、聞いてる私からすればどっちもどっちでしたし。

 いくら住むところが無くなりそうな危機的状況だったとはいえ、やはりこんな人との同居なんて間違った選択をしてしまった気がする。


「そんなどうでもいい事を気にしてないで、ここが深夜の女性の部屋だという事を気にしてください。それか私に別の部屋を与えてくれてもいいですよ?」


 この部屋に拘っているのは白極さんだけ。それも自分の部屋に近いというのが理由のようだし、私が我慢する必要は無さそう。

 毎晩、こんな二人のやり取りに巻き込まれるなんて冗談じゃないし。

 そんな私の言葉に瞳を光らせた遥香さんは、一気に私との距離を詰めるとガシッと私の両手を掴む。


「それなら私が部屋を代わってあげるわ! それが良いわよね、凪弦なつるちゃんも!」


 な、凪弦ちゃんって? さっきまで「この女」扱いだったのに、自分に都合よい話になると彼女は一気に態度を変えた。


「あ、あの……遥香はるかさん?」

「この部屋は嫌なんでしょう、凪弦なつるちゃんは。私の部屋は静かでいいわよ、隣の部屋に遥翔はるとがいるから好きに扱き使えるし?」


 NOと言わせないわ! と言わんばかりの遥香さんの迫力ある笑顔に、私は思わず「はい」と言いそうになる。さすが白極はくごくさんの傍にいるだけあって、その強引さはちょっと普通ではない。


「あの、でも私は……」


 と言いかけて、もう一度ゆっくりと考えてみる。ここの部屋を使っている間ずっと遥香さんにこんな目に合わされるのなら、さっさと彼女と部屋を代わった方がいいに決まってる。

 すぐに白極さんの所に来ればいいだけなのなら別に彼の隣である必要はないし、それにこの暴君から離れる時間も出来る。

 ……うん、良い事ばかりじゃない、迷う必要なんてない。ない……のだけど。


「そんな視線を向けないでください、白極さん。まるで今からの息の根を止めてやる、と言わんばかりの目をしてますよ」

「……ああ、その誰かの返答次第だがな」


 その誰かが自分だと分かってていても、知らないふりをしていたい。どうして白極さんはここまで私をこの部屋に置くことに拘るのだろうか?


「遥香さんがこの部屋で白極さんのために待機してくれますよ? それじゃ駄目なんですか」


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