第29章:黒き英雄、ウカビルの目覚め
地球・南極圏――
氷の下に広がる古代遺跡の中心部。そこに、巨大な“黒い柱”が突き立っていた。
カティナが最後に放ったその柱こそが、彼女の奥の手。
カティナ「さあ……目を覚ましなさい、“星を救った英雄”――
その力を、今は私たちのために」
雷の嵐の中、柱から波動が溢れる。
空間が裂けるように割れ、一人の男の姿が現れた。
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【1. 伝説の英雄・ウカビル】
180cmを超える体格。
白銀の髪に、深紅のマント。
しかしその瞳は無感情に凍りついており、胸には黒い刻印が光る。
セレナ「まさか……! あれが、ウカビル……!?
昔、たったひとりでルシフェルの軍に挑んだ“英雄”……!」
ゲズ「……でも、何かが違う。あれは――もう“人”じゃない……」
カティナは嘲笑する。
カティナ「そうよ。彼は“もう戻れない”。
神の黒血に染まり、忠誠を上書きされた。
今の彼は、私たちの“最強の剣”!」
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【2. ゲズ VS ウカビル、開戦】
ゲズが構える間もなく、ウカビルが瞬間移動のように突進。
重力を歪める剣撃が、ゲズを地に伏せさせる。
ゲズ「……クソッ、速い……!」
彼の動きは、これまでのどの敵よりも“静か”で、そして“正確”だった。
一切の感情も叫びもない。あるのはただ、「破壊」という命令の実行のみ。
セレナも援護しようとするが、
カティナ「だめよ、サポート系が前に出るなんて――甘すぎ」
セレナに向けて魔弾を撃ち込み、動きを封じる。
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【3. “想い”の雷】
ウカビルの剣が、ゲズに迫る。
セレナ「逃げて……ゲズ!!」
だがゲズは動かない。
代わりに、胸に手を当て――小さく、つぶやく。
ゲズ「お前が……ウカビルか。
ルシフェルと戦って、すべてを賭けて、誰よりも人を守った男……」
その瞬間、雷が全身に集まり出す。
ゲズ「だったら……俺は、今“お前”を守るために、戦う――!」
雷が再び覚醒し、彼の体を包む。
その色は今までと違う、“黄金の雷”。
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【4. 対峙する、ふたつの英雄】
ゲズとウカビル、ふたりの英雄の剣が激突。
轟音とともに地が割れ、空が雷光に染まる。
ゲズはあえて殺さず、動きを封じる戦法に出る。
攻撃を避けるたび、心の中で呼びかける。
ゲズ「ウカビル……! お前の中に、まだ……“意志”は残ってるんだろ!」
ウカビルの剣が止まった、ほんの一瞬。
その目に、小さな揺らぎが見えた。
セレナ(……今、彼は迷ってる!)
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【5. 黒き支配の崩れ】
カティナは焦り、再び命令を下す。
カティナ「従え! ウカビル! お前はルシフェル様の剣!!」
しかし――
ウカビルの動きが止まる。
ウカビル「……ルシ……フェル……
……わたしは……誰だ……?」
その瞬間、胸の黒い刻印が砕けた。
ウカビルの体から黒い霧が抜け、彼はその場に倒れる。
ゲズが駆け寄り、抱きとめる。
ウカビル「……私は、何を……していた……?」
ゲズ「……何も悪くない。俺たちは、これから“共に”戦える」
しかし――
セレナ「ダメ、彼の意識が……!」
ウカビルは、そのまま深い眠りにつく。
息はある。だが意識は戻らず、まるで時間ごと封印されたかのように。
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【6. カティナ、撤退】
カティナは激怒するも、雷に圧され撤退。
カティナ「……ふふ、いいわ。もうすぐ、“あのお方”が直接動く。
遊びはここまで――次は、“世界の終わり”よ」
黒翼を広げ、空へ消えるカティナ。
地球の戦火はひとまず収束した。