テラーノベル
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魔法の言葉。
仁人とエレベーターで2人きり。
インカメで盗撮しようとしたのにばっちりカメラ目線。俺が嫌いなあの口で。
「撮るなら撮るって言いなさいな」
「ん。仁人、この写真投稿してもい?」
「ん?別にいいけど?どこに?」
「キラリ」
「そ」
気にもとめてない返事。写真すらも確認しない。
信用されてんのか…興味が無いだけか…
複雑な気持ちでキラリを開く。
写真を貼り付け、何か言葉を添えようと文字を、打っては消して…打っては消して…
結局、写真に添えられたのはたった二文字。
俺にとっての魔法の言葉。
それ以上言葉を紡げば、自分の気持ちが溢れてしまいそうで。
佐野さんから1枚の写真が送られてきた。
『これ、Xにあげていい?』
勇斗から送られてきたのは、新学期アラカルトの衣装を着た17歳の俺の写真で。
なんでこんな古い写真をまたと思いながらも駄目なんて言う理由もなく。
『お好きにしてください』
と返す。
過去の自分を振り返ることもあまり好きではないし、過去の自分のこともあまり好きになれない。
でも、やっと、最近過去の自分も悪くないじゃんって思えるようになってきた。
『お好きにしてください』
仁人から返ってきた返事にま、お前ならそう言うよなと思いながらXを開く。
新学期アラカルトの衣装に身を包んだ17歳の吉田仁人。
もう、8年も前かなんて思い返しながら文字を打つ。
テンプレになった文言。 佐野勇斗、名前、特技。
自分の名前の後ろに俺は魔法の言葉を入れる。
それはもはや、自分に宛て言い聞かせるように。
隠したいのに出したい。矛盾した自分の独占欲の全てをこの言葉に。
END
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